反ユダヤ主義はニーチェもそうだったように、高度化する資本主義社会への警鐘でもあった。

ドイツではユダヤ人が都市を中心とした資本主義で成功し、中流以上の家庭を築いていた。
一方でドイツ人は労働者が多く、ユダヤ人に雇われることも多かった。
しかし、当時ドイツのユダヤ人は社会主義思想に目覚め、ワイマール政権が生まれていたのだが、ナチスはそれらを否定した。

経済的にドイツ人が主導できるように、ドイツ人による国家的な社会主義を目指したのだ。

ナチスとは、熱狂だ。
ヒトラーもハイデガーも、おそらくユダヤ陰謀論に深く傾倒していた。
世界的なユダヤ組織が、世界征服を目論んでいるというものだが、ドイツ国内のユダヤ人はすでにドイツ国民であるという意識が強く、第一次世界大戦にも兵士や将校として参加していた。
彼らからすると、迷惑な噂だ。

しかし、ユダヤ陰謀論は人を「知らない世界を知っている」という気分にさせ、高揚させる。
まるで現代のNASA陰謀論のようにヒトラーとハイデガーを熱狂させた。
同じように熱狂があったロシアでは、ユダヤ人の村ごと迫害するポグロムが起き、多くの敬虔なユダヤ人がドイツに難民として登場した。
神秘的な彼らの姿。それが陰謀論に火を注いだのだ。