21世紀に入って放送音源のオリジナルテープが公開され
ユニコーン音源とは全く別物の鮮明な音で、評価がひっくり返った。
AM放送なみでSP録音より悪い音質が、一気にFM実況に押し上げられた。
つまりライヴ=スタジオ録音の補欠という、レコード会社内での序列が覆り
フルヴェンの実像に迫れるアイテムへと変貌した。

それまで放送音源には2重の意味での封印があって
ひとつはフルトヴェングラーとEMIとのアーティスト契約があり
逆に放送局のほうもおいそれとオリジナルテープを手放さなかった。
その半世紀の年月の長さと、歴史に対する責任の重さを痛感する。

尤もこうした放送アーカイヴの整理は
旧ソ連が接収した戦中録音の返還がまず最初にあり
戦争前後で分裂していたフルヴェンの芸風が徐々に変化する過程も
良好な音質で観賞できるようになった。
これは録音方式の差が大きいスタジオ録音で時系列に並べるよりも
ずっと親近感のある演奏スタイルの変化であることも判る。