スマホ決済の肝は「営業力」。もうひとつ、鍵となるのが、
スマホ決済サービスが使える店舗を増やすという加盟店開拓だ。
LINEやメルカリなどはネット企業であり、こうした加盟店開拓がとても苦手だ。
リアルな世界で汗をかく営業活動が、からきし下手だったりする。
一方、ソフトバンクとヤフーが手掛ける「PayPay」は、全国に20箇所の営業拠点を設置し、
数千人規模のローラー作戦で加盟店開拓を続けている。
実際、地方でもPayPayが使える小さなお店を発見することもある。
いまでは全国で185万以上の場所で利用可能だ。
また、NTTドコモは、全国のドコモショップを手掛ける販売代理店に
「d払い」の加盟店開拓を委託している。もともとドコモショップで
法人営業として携帯電話の回線を販売していることもあり、
その延長線上で「d払い」を売り込むというわけだ。

「LINE Pay」や「メルペイ」などは、営業を業者に委託するケースが多い。
結果として、加盟店開拓のコストがかさみ、赤字体質から脱却できないでいるのだ。

決済サービスで儲ける気がない、携帯電話事業者がスマホ決済サービスで
強いもう一つの理由が、「スマホ決済サービスで儲ける気がない」という点に尽きる。
「Origami」はスマホ決済サービスが本業であったが、ビジネスモデルが描けずに破綻した。
携帯電話事業者にとってみれば、ポイントを付与し、スマホ決済サービスを使ってくれれば、
ユーザーの満足度が上がり、結果として解約しにくくなる。

KDDIのパーソナル事業本部長は「スマホ決済を使ってもらうと、
NPS(ネットプロモータースコア。企業などへの愛着を示す指標)が高まり、
ユーザーとの関係性が高まる」と語る。
ポイントサービスは携帯電話事業者にとってみれば「解約を抑止するための道具」に過ぎないのだ。

「Tポイント」と「dポイント」を導入するレストランに話を聞いたことがあるのだが、
「Tポイントは『プロモーションのためにチラシを作るから』などという理由で
経費負担を求められることもあるが、その割にお客さんは来ない。
一方、dポイントは無料でガイドブックに掲載してくれるし、お客さんの反応もいい」という。
結果、その店はTポイントから離脱し、dポイントに一本化した。