中国中央テレビは、高台に取り残され孤立状態にある住民に取材し、
「事前に通知を受け物資を準備したので、食べ物や飲み物には困っていない」
「放流は生活に一定の影響は与えるが、みんなの心理状態は良い方だ」などと、
住民らが放流について理解を示しているような声を伝えている。
さらに中央テレビは、避難を余儀なくされた遊水地の住民について、
「大局を念頭に置き、みんなのために家を捨てた」などと英雄視するようなトーンで報道している

また、孤立状態の高台住民についても「彼らは決して孤独ではありません。なぜなら、
彼らの背後には、国家があるからです」などと、“愛国モード”で関連のニュースを伝えている。
放流によって家や生活の糧を失った人たちの不満を抑えようという狙いがあるとみられる。

放流によって、王家ダムの水位は徐々に下がり始め、地元当局は丸3日以上経った
7月23日午後1時に放流を停止する命令を出した。23日正午現在、水位は依然警戒水位を
0.79メートル上回っていたものの、放流開始前に比べ、水位は1メートル以上下がった。
遊水地に放流した分、王家ダムより上流の洪水リスクが減少したことになる。

安徽省では、別の河川でも水位を下げるための苦肉の策として19日、堤防が爆破された。
長江の支流・滁河(じょが)でも水位が急上昇し、下流の大都市の被害を防ぐため、
堤防2か所を、爆破し、大半が農耕地で住民がほとんどいないエリアに水を流し込むことで
水位を下げたのだ。各地で相次ぐ洪水にこうした非常手段をとらざるを得ないケースも出てきている

世界最大級の三峡ダムは、6月末から断続的に放水が続けられているが、大雨は続き、
依然最高水位に近い状態が続いている。ネットには心配する声もみられるが、
中国共産党系の環球時報は、「権威人士(権威ある人)」として、ダムを管理する
三峡集団の責任者のインタビューを掲載し、「現在、三峡ダムは安全かつ良好な状態で
運用されている。いわゆる「変形」やその他リスクは発生していない」
「1.2万あまりの計測器が設置されており、安全モニタリングを行っている」などとして
「崩壊の危険」などの噂については「デマ」だと切り捨てた。