トランプ流「国家資本主義」
 米政府が中国を「為替操作国」に認定するというトランプ大統領の公約を棚上げしたのは、大統領が想定していた意図的な人民安誘導どころか、中国は資本流出を食い止めるため人民元を買い支えざるをえなくなっているから
である。それに北朝鮮問題の打開で中国の北朝鮮への圧力がカギを握っているだけに、
対中関係全体をにらんで配慮した面もあるようだ。「為替操作国」の認定に
政治的恣意が働いているのはたしかである。
 中国は人民元の国際通貨化をめざしているが、変動相場制の導入にはなお慎重だ。
人民元は国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨にはなったが、
本物の国際通貨にはなお遠い。それだけに、日米欧先進国が国際通貨の安定のために
中国の通貨改革に口出しするのは当然である。
 しかし、「とてつもない特権」(米カリフォルニア大学バークレー校の
バリー・アイケングリーン教授)をもつ基軸通貨国が自国優先で外為市場に
口先介入するのは、危険極まりない。それも「通貨マフィア」のささやきの
範囲にはとどまらず、世界で最大の権限をもつ米国大統領の口先介入となれば、
影響は計り知れない。
 「ドルは強くなりすぎている」というトランプ大統領の発言を中和するかのように、ムニューシン財務長官は「長期的には強いドルが重要だ」と述べているが、トランプ政権の本音がどこにあるかは、だれの目にも明らかだ。