以下、邦訳スティーブ・キーン『次なる金融危機』訳者解説133頁より

《 市場の自由の擁護では主流派の結束は固い。新古典派が市場の自由をひたすら主張し、
問題が生ずれば、ニュー・ケインズ派が出てきて取りなす。主流派は、硬軟どちらでも
対応可能になっている。
 とくにアメリカの経済学の勢力分布において著しいが、事実上ポスト・ケインズ派は、
大学などの研究と教育のポストから、また有力な学会誌から閉め出されたのに等しい
状態だ。ミズーリ大学(カンザス・シティ)など、五つないし六つの大学以外に、
ポスト・ケインズ派の拠点は存在しない。世界を見渡しても、カナダのオタワ大学、
オーストラリアのニュー・カッスル大学、ドイツのベルリン・スクール・オブ・エコノミックス
・アンド・ローなどに限られる。日本にも研究者がいるが、それぞれ孤軍奮闘中だ。
 このように学界を一強寡占の状態にし、政界をロビー活動によって支配し、金融規制の
法律を議会が通しても(2010年ドッド・フランク法)、金融界は力づくで実施させない。
そんな状態だから、「次なる金融危機は回避不能」と予想せざるを得ないのだ。》

ビル・ミッチェルはニューキャッスル大学教授
レイはミズーリ大学教授