山田が貴族と話をしている時、「女王」は目の前で自分の死について語っている
デリカシーの無い男達に対して、何の怒りも悲しみも示していなかった。
何かを悟ったかのように、ただおだやかな表情だった。

その目は、ここではないどこか遠くを見つめていた。
山田には、その目が二度とは戻れぬ生まれ故郷の森を思い出しているかのように思えた

その表情が、山田がフセイランを見た最後の記憶となった。

「女王」は与えられた人間用の食事を口にしようとはせず、体力回復用に与えられた
霊薬エリクサーも効果がなく、その後ほどなくしてこの世を去った、という話を
山田は聞かされた。

なお、彼女の死体は剥製にはされず、王立科学博物館に標本として寄贈されたという。

次回「その23」