園芸民が異世界転生したらどうするよ?
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園芸民の得意分野で中世ヨーロッパ風の異世界をどう生き抜くか?
どう内政チートするか議論しあうスレです
ただしチートとジャガイモは禁止な 「残念だな、エルフも返してはもらえないのか?」
「あの子は、お前の所有物じゃない!」
「あの子ぉ??何を言って…いやまて、もしかしてあんた、ああいうのが趣味なのか?
だったら、夜はあんたが好きにしてもいいぞ。普通なら物欲しげな目で見ただけで
通報されてしまうエルフ様に、思うがままあんな事やこんな事を」
「人の性癖を勝手に決めるなあぁぁぁ!!!!」
あまり強く否定すると図星だったと思われるぞ山田。 「あんた、もっと好き勝手に生きないと死ぬ時に後悔するぜ。
まあ…あんたはここで…死ぬんだがなぁっ!!」
男はいきなり剣を抜いて切りかかり、それを山田は避ける間もなかった。
ぱっきょきょきょーん!
男の剣は山田の鎧に命中し、魔法防護と干渉しあって見事にへし折れた。
「おぅわっ!ダンジョン産の貴重な魔剣『リストカッター』があぁっっ!!」
「おぅすまん!って俺が謝る理由無いよね!?というか魔剣なのに強度が農具以下なの?」
まああれだ、カミソリはよく切れるけど脆い、みたいなものだ山田。
「ゆ…ゆるさん…絶対に許さんぞ!!!」
逆恨みである。 「オレは学んだ…人間は策を弄すれば弄するほど予期せぬ事態で策が崩れ去る…
目的を果たすために、オレは人間を超えるものにならねばな…」
「何のことだ?何を言っている?」
「もう迷いはない!オレは人間をやめるぞ!」
男は懐(ふところ)の中からルビーのように紅く光る魔石のついた、石造りの眼鏡を
取り出すと、自分の目に当てた。
「デュワッ!!」
ズキュウウウゥンメメタアァゲッパホン!!という音と共に、男の体は輝く光に
包まれた。 「うおぉぉぉぉ…力が…力がみなぎる!!!全身の細胞が!内臓が!
脳までもが力に変わっていくようだ! オレは新しい存在に生まれ変わる!
祝え! 新しい王の誕生を!」
男の全身がメキメキと盛り上がり、背が伸び骨が作られ筋肉増量1500%の
異様な身体バランスの筋肉怪人、いやビッグでナイスなマッチョガイと化した。
「すごいちからだ! すごくすごい!すごくすごくすごい!あひゃひゃひゃひゃ」
「…もしかしてそれ、使ったら人として駄目になるやつ?」
山田は引いている。 領館で監視魔鏡を見ていた者達も引いていた。
「むぅ…あれは『力のダンジョン』のダンジョンボスが低確率でドロップするという
レアアイテム『進化の秘具』」
「し、知っておられるのですか召喚士様」
「噂を聞いて、わしも100回ぐらいボスを倒してみたが一度も出たことが無い」
「うわ…驚きました、いろいろな意味で。そんなものをどうして持っているのでしょうか?」
「う〜〜む…課金かのう?」
課金とはオークションで購入するという意味である。
ちなみに課金ではなく盗品である。 「それと召喚士様、アイテム名がおかしいと思います」
「おかしいのか?」
「『進化』というのは一つの種族が別の種族に変化していく現象です。
あれは個体が別の形態に変化するだけですから『変態』が正しい用語です」
「なるほど、ではあれは『変態の秘具』か」
「『変態の秘具』ですね」
この世界に一つ、新しい名詞が生まれた。 変態の秘具によって新しい世界に目覚めた男のパワーはすさまじかった。
男が腕を振ると、魔力のこもった拳圧だけで山田はふきとんだ。
「うわ!?」
転倒した山田にマッチョガイが駆け寄り、連続パンチを繰り出す。
姿に反して目にもとまらぬ反応速度である。
「おらおらおらおらおらおらおらおららああぁぁぁぁぁ!!!!!」
山田の鎧に傷はつかないが、慣性制御が追いつかず中の山田はパンチの振動で
グダグダである。乗り物酔い状態になってリバースすれば窒息する危険がある。
山田ピーンチ!!!
強いぞマッチョガイ。力をあげて物理で殴る。原始的だが効果的。
パワーは力、力こそパワーである。 一瞬の隙を見て、山田は地面にころがって連続攻撃から逃れた。
起き上がると同時に地面を蹴り、全力でパンチをマッチョガイの腹に叩き込んだ。
ドズン、という鈍い音がして、マッチョガイの動きが止まる。
マッチョガイは山田に顔を向け、にこっと怪しい笑みを浮かべた。
「あは。ぜ〜〜んぜんきかないねぇ〜〜」
そして目にもとまらぬ速さで手を伸ばし、逃げようとする山田の腕をむんずと掴む。
次の瞬間、山田の体もろとも空中に振り上げ、すさまじい速度で地面に叩きつけた。
激しい打撃音の中にブキャバキ!と嫌な音色が混じる。 そしてまた持ち上げ、さらに力を込めて叩きつけた。3回。4回。土砂が舞う。
衝撃で銀色の鎧がゆがんだ。山田の腕が捻じれて関節でない部分から折れ曲がり、
あらぬ方向に向いている。
マッチョガイは山田の体を両手で持ち上げ、力一杯地面に叩きつけた。さらに倒れている
山田の顔を足でドス!バス!ゲス!と踏みはじめる。頭部の強度が高く、踏まれても
形を保っているが後頭部がだんだん地面にめり込んでいく。 「駄目ダ!領主、死ンデシマウ!!!」
「さすがに拙いかの。助けに行くか」
「…待ってください」
錬金術師が思いつめたような表情で止めた。
「…魔法鎧の目が光を失っていません。まだヤマダは戦えます」
「無理ダ!魔法陣、モウ使エナイ。勝テナイ。領主、殺サレル!」
「ヤマダはエルフ様を助ける約束をしたと言ってました。彼は一度約束した事は
死んでも守る男です」 「本当ニ死ヌゾ!」
「…私が責任を持って蘇生します。それに彼は自分でやりたいのだと、私のことを信じていると
言いました。私はその思いと信頼を裏切ることはできません。だから…」
錬金術師がそう言いかけた時、魔鏡に映る山田の魔法鎧に変化がおきた。
目に灯っていた白い光が…フッと消えて暗くなった。
山田はもうピクリとも動かない。激しく息をしながら、満面の笑みをたたえてそれを見つめる
マッチョガイ。しばらく山田の様子を見ていたが、とどめをさそうと思ったか、ゆっくりと
大きく片足を上げた。
ああどうしたんだ山田!立て、立つんだ山田! 「領主ガ!!!!」
「おう、とうとう力尽きたか!?」
「いいえ…違います。今、覚醒が始まります」
その言葉と同時に、動きを止めていた魔法鎧の目が闇の中で赤く点灯した。
次の瞬間。
今までとは明らかに違う動物的な動きで、踏みつける足から鎧が飛び退いた。
おや、という表情でマッチョガイの顔から笑いが消える。
魔法鎧は、捉えようとするマッチョガイの手を四足歩行で素早くかいくぐり、少し離れた場所へ
しゅるしゅると移動した。折れていた腕がメキメキと正しい形に修復されていく。
「むう…何がおきているのか」
「魔法の鎧の自動防衛機構です。装着者の意識が失われた場合、鎧のほうが装着者を動かし、
状況を自動解析しつつ戦いを継続します」 「折れた腕が戻っているな」
「鎧の内側から棘が突き出て正しい位置に戻し、肉を貫いてむりやり骨を固定します。
痛覚麻痺の術式が付与されるので、痛みも感じなくなります」
「ちょっと待て。それは」
「あー判ってます。すみません、とある有名な魔法甲冑の構成術式をそのまま…えーと、
参考にしております」そう、あくまで参考である。
言うまでもない事だがこれは異世界の物語であり、地球によく似た設定の宇宙の警官とか、
降臨した者の遺産だとか、狂った戦士の装備とかが存在したとしても偶然の一致である。
ちなみに書籍化を目標とする投稿サイトの場合、盗用・歌詞引用・過剰なパロディがあった
作品は商品にできないため即刻抹消、作者はガチで容赦なく無慈悲に永久追放である。
「…知っておろう、あの甲冑を使った者がどうなるかを。装着者はどれほど傷ついても苦痛を
感じず、死ぬまで戦い続けてしまう。そういう部分を改作もせず採用したのは何故じゃ。
そもそも捻りの無い劣化模倣などただの盗作、創作者にとって恥だと判っておるのか」
「う…その通りで…返す言葉もございません」 「激痛にもだえ苦しみながら、死なぬ程度に治癒をうけつつ耐えて戦うのが萌えと
いうものではないか。山田殿の容姿では役不足だが、良い男が血と汗にまみれて、
苦痛に顔をゆがめつつ、声をあげぬよう必死で歯をくいしばっている姿こそが尊いのだ」
「えええ、改作って、そういう方向ですか?」
それはそれで山口貴ゆk…げふんげふん。
山田、いや山田を内部に入れた魔法鎧は素早くマッチョガイに走り寄り、右足を蹴って
バランスを崩させた。同時に体重のかかっている左足に自分の足をからめて転倒させる。
小内刈りである。体格差があるがスピードを乗せて見事に決まった。
魔法鎧はすかさずマッチョガイの背中に乗ってバックマウントポジションを取り、
光の剣の魔力回路から高圧魔力を流し込んだ。体内魔力を一時的に混乱させる
魔力版スタンガンである。マッチョガイの体がうわらばっ! と痙攣硬直する。 おもむろに光の剣を延髄に当て、ジュウジュウと焼きながら切断していく。
マッチョガイが悲鳴を上げるが容赦しない。すると動けないはずのマッチョガイが
大きく手を振って、その反動で一気に起きあがった。振り落とされた魔法鎧が
体勢を立て直して身構える。
マッチョガイの体には不規則な痙攣が続き、手足が統一感無く動いている。
見れば頚椎が完全に切り離され、ちぎれかかった首がぶらぶらと胸元で動いている。
傷口が焦げていて出血は無いが、どう見ても致命傷、というか動けるのがおかしい。
いやニワトリなら動くか。偉いぞ脊髄反射。 マッチョガイはブンブンと手を振り回しながら歩きはじめ、触れたものを攻撃して壊していく。
脳から指令が届いていなくても活動する肉体。さすが人間をやめた者は一味違う。
いや感心している場合ではない。
魔法鎧はマッチョガイに走り寄り、大きくジャンプして背中に飛び乗った。魔法鎧の重みが
加わってもマッチョガイは止まらない。魔法鎧は大きく揺り動かされるが、首の傷口に
両手を突っ込み、両足をマッチョガイの腰に回して振り落とされぬように体を固定する。
隙を見て片手でちぎれかけた首をたぐり寄せ、力まかせにひきちぎって遠くに投げ捨てた。
だが首が無くなってもマッチョガイの体は歩くことをやめない。それどころか魔法鎧を背負ったまま
走りはじめた。無目的に藪の中に突っ込んで触った低木を引き抜いて投げ、足に触れたものを
反射的に蹴りとばす。 魔法鎧はマッチョガイの首から焦げた肉をむしりとった。動脈からプシッビジュルルプッシャー!と
血液が噴出し、白銀の鎧が赤く染まっていく。
マッチョガイの体はそれでもなお走り回り、ひきつった動きで暴れ続けた。しかし出血多量で
しだいに動きが鈍りはじめ、足がよろけて倒れた。地面にころがってもまだ手足を乱雑に振り回して
いたが、、しばらくすると激しい痙攣がおきた。ブシュ、と首の断面から空気と共に霧状の血液を吹き、
傷口にブクブクと赤い泡が盛り上がったあと手足から力が抜け、とうとう動かなくなった。
すると魔法鎧の頭部が狼の頭を思わせる形状にぐねぐねと変形し、目を赤く光らせながら
遠吠えのような声をあげた。鎧の口が牙の生えた獣のような形に変わり、四つん這いになると
マッチョガイの傷口に噛みついてジュルジュルと吸いはじめた。魔力を吸収している
らしいが、まるで生き血を吸っているかのようである。 「おおお、いかん、いかんぞ。これは許される一線を超えておる」召喚士は焦っていた。
何ということだろう、魔法鎧の行動は元ネタを愛する識者が激怒して、パクリ作品許すまじと
立ち上がる領域に達していた。駄目だこの作者、早く何とかしないと。
横にいたエルフは一連の猟奇シーンを魔鏡で見てしまい、耐えきれずにリバースしていた。
一部リョナニスト御用達の炉リバース。いや何でもない忘れて。
「錬金術師殿、原典の甲冑と同…参考にした術式ならば、山田殿は『戻れなくなっている』のでは?」
「戻します。私が」錬金術師は青ざめた顔で、しかし落ち着いた声で言った。
「できるのだな?」
「私があそこに行けば」
「そうか、ならばあの場に転送してやろう。一刻も早く山田殿を回収し、今回の話は無かったことにするのだ」
「ええっ!それは…いえそれよりも召喚士様、転移呪文ですか?」 「陸海賊ごときにも使える呪文、わしが使えぬとでも思っていたか?
使えることを知られると強制的に軍属に登録されるゆえ、秘密にしているだけじゃ。
私有地内の移動であれば国の使用許可証は必要ない。
もはや猶予はならん。人目に触れぬうちに急いで終わらせよう」
もし通報されればこのスレは消滅する。はたして最後まで書ききれるのだろうか。
っておいこらまて。
召喚士が呪文を詠唱すると、錬金術師の周りに魔法陣が現れ、白い霧のようなものが
錬金術師の周囲に渦を巻きはじめた。錬金術師が会釈的な礼をした時、その姿は
渦の中で掻き消すように消えた。 >>383
まさか山田の肉体が消失しているとかないよな? 山田は暗い闇の中を歩いていた。どこに居るのかよく判らない。
周囲には誰もいない。
いくら歩いても、何も見えてこない。何も聞こえない。
何か大切な事があったような気がするが、思い出せない。
忘れるぐらいだから、最初から大切な事ではなかったのかもしれない。
助けてほしかった。…何を?
助けてあげたかった。…誰を?…判らない。思い出せない。
助けてもらえなかった。助けてあげられなかった。それだけは覚えている。
何もかも駄目だった。
何もしない奴らが駄目だった。何もできない自分も駄目だった。 諦めて目を塞いだ。耳を塞いだ。何かできると思ったのが間違いだった。
必要だったのは納得でなく服従。大事だったのは向上でなく同調。
善悪はどうでも良かった。空気を読むべきだった。損得だけを考えれば良かった。
理想など捨てて現実を見るべきだった。
世の中は自分以外のすべてが餌。思い入れは害悪。
理解しようと思ったら負け。判ってもらおうとするのは無駄。
誰も本気で考えてなどいない…いや違う。貴女(あなた)だけは本気だった。
本気で助けようとした。だから俺はそういう貴女を守ろうと。それなのに。
苦しい。もう何もできない。苦しいくるしいクルシイ
「ヤマダ!」
…や?…ま…だ? 「ヤマダ!」
山田?…誰?
「ヤマダ!戻ってきて!」
あの声は…ああ、そうか…俺は…戻っていいんだな…お前のところに。
好きに生きられる二度目の人生。それは俺にとって救いなのか、呪いなのか。
あの日。俺は諦(あきら)めてしまった。
救うことも、救われることも。
もしあの時に、今の俺だったなら。今の仲間がいたなら。
…俺は…貴女を泣かせなくて済んだのだろうか。 血にまみれた魔法鎧の手が錬金術師の首を締めようとした時、魔法鎧の起動が解除された。
生身の体に戻った山田がぐらり、と倒れかかる。
あわてて錬金術師が抱き取るように体をささえ、山田の体に重力制御の術式を付与した。
空中に浮かぶ山田の周囲に光魔法を展開し、山田の状態を確認する。
山田の顔は血と汗と涙と鼻水とリバースでドロドロである。
錬金術師は手に汚れがつくことも意に介さず、彼の顔をぬぐい、清浄化と治癒の
術式を付与した。
それからグシャグシャになった山田の髪の毛をなでつけて、泣きそうにも半笑いにも
見える表情になり、意識の無い彼の顔を見つめて言った。 「…心配させないでよ、ヤマダ…こんなになるまで無茶するなんて。本当に…
あなたって、ほんっとに馬鹿なんだから…」
錬金術師はもう一度山田の顔をよく見て、まだ意識が戻っていないことを確かめた。
そして少しためらったあと、おずおずと山田に身を寄せ、彼の胸にそっと顔をうずめた。
光魔法が静かに消えて、二人を夜が包みゆく。
空には星がまたたいて、ふわりと優しく夜風が流れ、遠くかすかにかまいたちが鳴く。
魔鏡で様子を見ながら、家令のエンガワに現場照明をフェードアウトするよう指示して
いた演出係、もとい召喚士はほっとした顔になって、安楽椅子に体を投げ出した。
「今回は色々と危ない部分がありすぎた。…だがその苦難を救うもの、それが愛じゃ」
「愛ナノカ」
「愛じゃ」
なお今回、自分から志願した山田は馬鹿であるが、無茶をさせていたのは錬金術師だと思われる。 その後すぐに家令のエンガワが山田達の迎えを手配し、家臣団に現場の後始末を指示した。
メイドのミヤゲは急いで着替えを用意しに行った。
翌朝。
「ううう、体が痛ぇ!治癒してくれ治癒!」
「それはレベルが上がった時の成長痛ですので、治癒呪文は効きません。
体の傷はもう全快しているはずです」
「山田殿、今回のような危ない事は二度とやってはならぬぞ。それにしても、あのまま
戻ってこられなかったら大変だったのう」
「戻せると確信していましたから」
「錬金術師殿の愛で、かの?」
「いえ、『戻ってきて』を起動解除の音声符丁に設定していましたので。
私の声紋を登録して、私の声でいつでも解除できるように」 「愛、違ッタ」
「…少々予想と違っておったが、それなら魔道具で声を伝えるだけでも解除
できたような気がするがの」
「え?いやまあその、それは肉声で直接に解除したほうが確実ですし。
錬金術師としては、現場での実証見聞が必要であると」
「…顔が赤いぞ」
「あーこの部屋、空調魔法が効きすぎてませんー?あー暑いなー」
「暑いか?俺はむしろ寒く…」
「おぬしもなあ…それだからいつまでも魔法使いを卒業できんのだこのヘタレが」 藪の中にころがっていたマッチョガイの首は、山田領防衛隊(農民有志。幼児含む)によって
回収された。連絡をうけて来領した王都騎士団に引き渡され、首実検のため首桶に収められて
王都に回送されていった。首は恨めしそうな表情でこちらを睨み、何か言いたそうに口をパクパク
動かしていたが、声を出せないので何を言おうとしているのかは判らなかった。
桶に入れられて符術封印される時に、悲しそうな表情をしたのが山田が最後に見た姿だった。
「賞金首在中」の荷札を貼られて運ばれていったあと、首塚に埋められて祀られたとも、
海底深く沈められたとも噂されたが実情は確認できていない。第三部で誰かの体を
乗っ取って復活してきたりしない事を祈るのみである。
なお、マッチョな体のほうはアンデッド化しないように退魔結界内に収容された。刻んで穀物滓や
竜糞、枯れ草などと混ぜて発酵菌を振りかけ、雨を当てないようにして熟成が進められている。
後日、畑葬に付される予定である。 エルフはしばらく山田領に滞在し、体調が回復してから里に帰ることになった。
山田とも徐々に打ち解け、山田はエルフの里の植物の話を聞けてとても喜んだ。
そしてエルフが里に帰る日がやってきた。
エルフの里から迎えの竜車が来て、見送りの者が集まっていた。
「錬金術師殿、ヘタレの姿が見当たらぬの」
「イリスの世話をしてから来る、と伺っております」
「イリス?」
「ご領主様が倒した飛龍です。使役していた頭目もご領主様が倒したので、山田領の
使役獣になったとか。イリスというのはご領主様の故郷で愛玩獣につける名前だそうです。
飛龍とどういう関係があるのかは判りませんが」
「はあ?あの生きた暴風雨を飼う?飛龍は餌がアレじゃし、代謝が高くて脱皮殻の粉が
大量に舞うし排泄は所かまわぬし不消化物は吐き散らすし、通常空間で飼うと何気に地獄じゃぞ?
…まあ、あやつなら飼いきるだろうがなあ。なぜにそういう事だけマメなのだマニアという人種は」 「あーすまん、ちょっと遅くなった」
山田がようやく現れた。
その姿を見たエルフが、恥ずかしそうな顔をしながら山田に近づいた。
山田に対する態度が、最初の頃とだいぶ違っている。
「領主様、今マデ、アリガトウ。…コレ、感謝ノ品」
美しい織物に包まれた瓶が、山田にそっと差し出された。
山田が受け取ると、ちゃぽん、と音がする。
「ん?もしかして酒かな?」
「魔たたび酒。飲ム、病気、カカリニククナル」
「おー、そんな効果があるのか。素晴らしい。しかし魔タタビにはまだ俺の知らない事が
色々あるなあ…交配して結実しない理由もいまだに判らない」
「…知リタイ?」
「え!?教えてくれるの?」
「誰ニモ話サナイ?」
「約束する」 「領主様、約束、死ンデモ守ル人。ダカラ教エル」
エルフは山田を少し離れた場所に連れていき、小声で説明をした。
要約する。
魔タタビの木は雌雄異株である。王国で栽培されている複数系統にはどれも雄蕊と雌蕊が
あるため両性花だと思われているが、実際は雌株である。花粉に見えるのは訪花昆虫を
惹きつけるための疑花粉と呼ばれる粒子で、稔性は無い。結実させるには雄蕊だけを持つ
雄花から真正の花粉を採取し、それを雌蕊につけてやらねばならない。雄木はエルフの
里の立入禁止区域に1本あるだけで、花守りはそこから採取した花粉を乾燥休眠させ、
収納できる状態にして持ち歩いている。 「雌蕊ダケノ、雌花ガ咲ク木モアル。ソノ事、人間、知ラナイ。人間ノ国、『両性花』ダケ」
「うーむ、判ってしまえば単純だなあ…それで結実しなかったのか…」
「デモ、花粉、アゲラレナイ。ソレハ花守リノ掟」
「ああ、それは当然だよ。魔タタビ酒は大丈夫なのか?」
「えるふ同士デモ、普通渡サナイ。渡ス、特別ナ…大切ナ人ダケ」
「へええ、それは嬉しいなあ。俺が受け取っていいのか?」
「領主様、特別。私ノ…」
「すみませんエルフ様、召喚士様が贈り物をくださるそうです。どうぞこちらへ」
「ソ、ソウカ。判ッタ錬金術師殿。領主様、マタ後デ」 エルフは移動中に、錬金術師にこっそり話しかけた。
「領主様ニ、魔タタビ酒、渡シタ。アレ、特別ナ酒」
「特別?」
「飲ム、酔ッテイル時、惚レ易クナル」
「え、それは」
「ソノ時、口説ク、簡単、落チル」
「えええ、どうしてそれを私に」
「頑張ッテ」
「いやそのですね、何を頑張れと。意味が判らないです」
「私、伴侶、ソレデ落トシタ」
「はああ?エルフ様、既婚者だったのですか!?」
「子供モ、二人」
「…ご領主様には黙っていてくださいね。あの人、衝撃うけそうだから」 こうして魔タタビ事件は終わりを迎えた。
誘拐されていた地球歴換算で今年56歳になる花守りのおっさんは、山田と再開を約束した後、
無事に妻子の元へと戻っていった。女の子?誰がそんな事言った?
なおその後、山田は猫娘が食べ残した魔タタビの実の種子を実生してみたのだが
その中から花粉のできる雄木も育ってしまった。それによってふたたび大騒動が勃発
するのだが、それはのちの話になる。 なお、前世のトラウマで恋愛恐怖症気味のヘタレ男と、研究一筋に生きてきた
素直でない理系女子の間に、恋愛関係というものがはたして成立しうるのか?
というテーマに関しては、園芸とは無関係であるためこのスレで語られる予定はない。
(劇場版・剣と魔法の怪しい園芸「エルフの秘木と魔獣大戦争」
エンディングテーマ「異世界の花々」 (C)中二病ラノベ制作委員会)
*この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・作品等とは関係ないことになーれ
(記憶消去の呪文)
(了) ということで終了です。ネットではある程度広まっている言い回しでも一般的には
知られていませんし、原典が特定困難な知名度の低い文章・設定も大量に流用して
おります。よって本作を、元ネタが周知であることを前提とした「パロディ」であると
主張するのは無理があり、盗作パッチワークと呼ぶのが妥当かと思われます。
当然ながら投稿者の著作権などは主張できませんし、園芸板に埋めておくことすら
危険な放射性廃棄物となっております。削除カモン。
言い回し、設定、ストーリー展開などどこから盗用してきたか、引用文献一覧とかつけないと
マイナーな元ネタは大部分の方が判らないかと。まあつけてもアウトなんですが。
もはや荒らし行為と化しているので、これで連作の投稿は終わりにします。
皆様に良き園芸ライフがありますように。 家庭菜園程度のゴミスキルでも異世界行けば嫁くらいできる ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています