園芸民が異世界転生したらどうするよ?
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園芸民の得意分野で中世ヨーロッパ風の異世界をどう生き抜くか?
どう内政チートするか議論しあうスレです
ただしチートとジャガイモは禁止な この法律が施行され、フセイランが販売禁止になったという情報が、例のフセイラン狩りの
領主にもたらされた。その時には、領主は「ああ、もう見つけても売れないのか・・」
とたいへん落胆した。しかしそのあと、憑き物が落ちたような明るい表情になった。
自分はハンターではなく領主である。領主の本分とは、領内の開拓を進めて最新の産業を
誘致し、関係者からリベートを受け取って私腹を肥やすことである。そう思い至ったのだ。
その後、領主は熱心に本分に励み、のちに最新事業に関係した巨大汚職と脱税が発覚して
領主の座を追われたという。
次回「その27」 山田の人生の流れにおいては、ここでフセイランとの関わりが一旦中断する。
そして新たなお題への挑戦が始まっていく。
しかし時系列を入れ替えて、そのあとフセイランがどうなったのかを語っておこう。
ーーーーーーーーーー
それから数年ののち、数々の事件が一段落した山田は、ふとフセイランのことを思い出した。
もしあの赤ん坊が順調に育っていたならば、今頃は全裸の美幼女に生長して森の中を
走り回っているはずである。母親は救うことができなかったが、あの子にはその分、
罪滅ぼしに手助けをしてやりたい。今、何か困っていることはないだろうか。
そう思った山田は、ふたたびフセイランの森を訪ねることにした。
今回は迷子にならぬようにと、レンタル騎乗獣(騎乗用具標準装備、隠れ外套オプション)
を利用した。行き先や道順を騎乗獣が覚えてくれるので、いわばカーナビ付きである。
♪そなたは森で わたしは里で 共に生きよう暮らしていこう 会いに行こうよ
騎乗獣に乗って♪
鼻歌を歌いつつ、のどかにポクポクと進んでいった。
空は青く晴れ、吹き渡る風はさわやか。まさに観光気分である。
次回「その28」 ところが、途中でどうも様子がおかしいことに気がついた。
周辺の木が切り払われて草原になっており、森へと向かう細い道が幅の広い
石畳の街道になっている。
これは!・・
胸騒ぎがした山田は、騎乗獣を急がせた。
進むにつれて嫌な予感はますます高まっていった。
そして行き着いた先に・・
森は無かった。
整地された平原に、領内の人々を幸せにするための最新の事業設備ーー
太陽光から光の精霊の魔力を抽出するための黒いパネルが、一面に並んでいた。
そこには木も草も無くーー
ーー 生き物の姿は、もうどこにも見当たらなかった。
次回「後日談その1」
あと数回でラスト。 そして、それからさらに数年後。
元・宮廷錬金術師(その頃には王宮を退職)は、山田に頼まれた買い物のため、隣国の
盆栽市を訪れていた。その時、露店で植物を物色している一人の男を見かけた。
見た瞬間、彼女は全身が総毛立つような戦慄を覚えた。魔道士のローブを着たその男は、
見た目にはただのさえない中年男にすぎなかった。しかし彼女の魔力知覚は、その男ーー
否、その「何か」は、この世ならざる場所に実体をもつ、名状しがたい怪しさの宝石箱
であることを告げていた。その身に纏う病的かつ冒涜的な禍々しい混沌とした変態の
オーラは、明らかに人間のものではありえなかった。
しかし、恐怖に駆られ、その場を逃げ出そうとした彼女の足が止まった。
その「何か」ーー便宜上「その男」と呼ぶがーーの隣にいた二人の女性を見た時、
錬金術師としての好奇心が恐怖を上回ったのである。
女性のうち一人はすらりとした長身の、凄みのある美女。もう一人はその女性に
よく似た顔のまだ幼い女の子。その二人は共に透き通るように肌が白く、髪の毛は
輝くような銀髪で、目が血のように赤かった。
次回「後日談その2」 意を決した彼女は、あの・・突然申し訳ありません。私は山田領の錬金術師で
ございますが・・と思い切って話しかけてみた。すると意外なことに、その男は
ああ、山田殿の・・彼の事はよく存じております、と答えた。
いえ、面識があるわけではないのですがね・・この子の・・
男のローブの裾を握っている女の子の頭を撫でて、男は続けた。
この子の乳母が、私がこの世界を留守にしている間に、姿の見えない神様に命を
救ってもらったというのでね。何があったのか「過去視の水晶玉」で調べたのです。
それで山田殿が何をしておられたのかを知りました。実に面白い方だ。
・・あの、こちらのご婦人は?・・まさか、そんな事が・・
ああ、保存されていた身体を盗み出してくれば、蘇生自体は簡単ですよ。
大変だったのは復活時に生命力を分けてくれる茸人達を、培養して殖やすことでした。
そ、それはどのような・・
そう問う錬金術師に男は言った。
次回「後日談その3」 「三者間共生培養」その一言だけで山田殿ならばご理解なさると思います。
が・・もし判らなかったとしても、意味を調べる必要はありません。
ヒトの身で、神木と茸人の秘密に関われば命を削られます。
「頑張れば育てられる」それは裏を返せば「少しでもつまずいた時は、すべて枯れる」
という意味でもあるのです。
永遠に頑張れるヒトなどおりません。血を吐きながら走り続けても、最後には自分の
身を滅ぼして背負う者と共倒れになるか、休むために背負っていたものを投げ捨てざるを
えなくなるか、どちらにしても最後に待っているのは絶望でしかありません。
栽培というものはね、頑張ろうと思った時点ですでに負けなのです。
そして挫折した自分を責めて自らの身を焼き尽くしても、心のどこかで諦めきれて
いなかった業の深い者は・・どれほど血を吐き続けても死ぬことのかなわぬ身に転生し、
魔の者とヒトが同じ場所で、共に幸せに暮らせる術(すべ)を見つけ出すことを夢見て、
終わりの見えない道を走り続けねばならぬ呪いをうけるのです・・
錬金術師が男の言葉を手帳に書き写している間に、男とその連れ達は雑踏の中に姿を消し、
あわてて探したが、それきり見つからなかった。
次回「後日談その4」 「頑張れば育てられる」それは裏を返せば「少しでもつまずいた時は、すべて枯れる」(至言 山田領に戻った錬金術師がその話を山田に伝えると、山田はしばらくポカンと口をあけていたが
やがて大笑いしはじめた。
「いやぁ参った。人間にはおこがましい事だとは思っていたが、この世界には人間でない
連中がいる事を忘れていた、こいつは本間先生もびっくりだ」
え?何?意味がわからない。ホンマって誰なの?と錬金術師が尋ねたが、山田は聞いては
いなかった。「よし、その男に弟子入りだ!」と叫んでそのまま外に飛び出していった。
そして数日後に「見つからなかった・・」と言ってシオシオと戻ってきた。
その男が何者で、どこから来て、どこに行ったのかはその後もとうとう判らなかった。
そして錬金術師は山田が何を理解し、何を言っていたのか最後まで全然わからなかった。
この章終了。ちょっと長くなりすぎたようです。
次回「樹木人(トレント)の悩み」
お題:イチジクコバチ。 魔道士のローブを着た男ってまさか「その19」で話題に出てきた…
真相不明のままでいいけど読んでてわくわくする 樹人族トレント。樹木系のモンスターで、なおかつ自力で歩き回れる種族の総称。
その形態は生息している異世界ごとに異なっている。切り株に目鼻がついたような種族、
樹木が根をうごめかせながら這いずり回る種族、人間型で肌が樹皮に覆われたような
種族など、きわめて多様性に富んでおり、エルフのように定型的なイメージでは語れない。
そしてこの世界のトレント種族群は(種族によってかなりの違いはあったが)多くの種族
では美しい女性の姿をしていた。なお、この物語に登場する植物系の魔物がどれも
美女の姿をしているのは執筆者の趣味ではなく、収斂進化の奇跡と呼ばれる現象に
よるものである。
そして今回は、王都から山田を尋ねてトレントの夫婦が訪れてきていた。
濃緑色の肌に白い髪の毛の美形で、胸のニ個の貯水球はそれほど大きくはないが、
たいへん整った形状で素晴らしい弾力性を有している。
ちなみに彼らは雌雄異株であるが、カタセタム族のような性的ニ型ではない。
外見的には雌雄ともに人間の美女にしか見えない。そのためこの夫婦は、見た目には
樹木ではなく百合である。
次回「トレントその2」 この夫婦は結婚してだいぶ年月が経っているのだが、いまだに子供ができずに悩んでいた。
二人とも、王都ドームでおこなわれた園芸展で、王立園芸協会のメダル審査のオリハルコンメダルを
受賞した優良個体であり、周囲からは優秀な実生苗を生産することを期待されていた。
そのため特に妻の精神的プレッシャーが高く、最近では心を病みはじめてる兆候すらあった。
子供ができない原因を、植物の繁殖に詳しい山田に調べてほしいというのが夫妻の希望だった。
山田には療術師の資格は無いが、数々の難病・奇病を治した実績は王都ではよく知られていた。
「辺鄙(へんぴ)な土地に住み、女の子の助手を使って、誰にも治せない病気を次々と
治療している無免許の天才療術師」というのが山田の人物像として定着していたのである。
そして山田が夫妻の話を聞いてみたところ、夫妻は「子供の作り方」をまったく知らない、
ということが判明した。
次回「トレントその3」
「あの・・子供って、どうやって作るのですか?」
「えーとですね、オシベとメシベが・・」
「うあ?・・あ、あの、ご領主様、ストレートにそういう単語を口に出されると、
聞いているほうが恥ずかしくなってしまうのですけれど・・
(ピー)とか(ピーピー)とか、そういう言葉を使って説明できませんか」 ここで一般的なトレントの受粉過程について解説しておく。あたかも二人の美女が身体的な
接触を試みているかのような描写となるが、あくまでヒトに酷似した外見の植物が樹体を
接しているにすぎない。そこに扇情的な要素は微塵も無いことをあらかじめ申し上げておく。
受粉を試みるニ株は、樹体を覆う衣服、あるいはそれに類する被覆物をあらかじめ除去
しておく。次に受粉パートナー相互の樹体を、接触面積が最大になるような体勢で密着
させる。しかるのちに相互にパートナーの樹体に、さまざまな方法で刺激を加えていく。
積算刺激量が一定の閾値に達すると開花が開始される。膨張した花弁は大きく開かれ、
柱頭からは粘液が分泌、葯からは花粉が放出される。花蜜が生産され、あえぎ声と共に
花器から花粉媒介者を誘引するための揮発性物質が外部へと流出しはじめる。
この時点で周辺から花粉媒介者である、トレントコバチ(以下コバチ)と呼ばれる
小魔虫が集まってくる。ここでは詳細な解説は省略するが、トレントはコバチが
いなければ受粉できず、またコバチはトレントが存在しなければ繁殖ができない。
トレントの種族ごとに花粉を運ぶコバチの種類もほぼ決まっており、長く続いた
共進化の末に、1種対1種と言ってもさしつかえない密接な共生関係を築いている。
次回「トレントその4」 したがって受粉を希望するトレント夫婦の場合、彼らの種族に対応するコバチの生息域に
出向いて、そこで受粉パートナーと共に屋外受粉行為に励まねばならない。
そしてコバチによって雄株から雌株へと花粉を媒介してもらうのである。
問題の夫婦の場合、そのコバチがどのような種類で、どこに生息しているのかという
知識がまったく無かった。それ以前にコバチが必要であるという事実すら知らなかった。
とはいえ、人間であれば、むしろそういう特殊な知識を有する者のほうが珍しい。
通常はトレントの親から子供へと、性教育として伝えられるはずの知識であった。
だがこの夫婦の場合は、その知識を伝えられる前に親がいなくなっていた。
彼らは暗黒大陸から移民してきたシングルマザーの母親から生まれた双子の姉弟であるが、
母親は二人がまだ小さいうちに魔ナメクジに舐められ、この世を去っていたのである。
ちなみに姉と弟で子作りをするというのは、人間であれば非常にいけない行為である。
しかし、植物には自家受粉で子孫を作ってもまったく近交弱勢をおこさないような種類
も多いので、近親交配という行為が(実際には問題になる種類もかなり多いのだが)
ほとんど問題視されていない。判りやすく言えば、シブリングクロスごときで騒ぐ
園芸家はいないのである。
次回「トレントその5」 花粉媒介者がわからないのであれば、人工授粉するしかない。山田はちょうど開花中
だったトレントの花を詳細に観察し、構造をよく調べた。
ちなみにトレントの花は臍(へそ。トレントは地球のマングローブのように胎生種子で、
体内で実生を育てるため人間と同じように臍がある)の下方、右足の親指と左足の親指の
間に咲く。色は薄いピンク(個体差あり)で、地球のクリトリアの花に似ている。
すると、花の構造が他種族のトレントと大きく異なっていることが判った。
雄蘂(ゆうずい=おしべ)がすべて融合し、花粉は大きな集合塊となっている。
柱頭(ちゅうとう=めしべ先端)もそれに応じて巨大化している。この特徴から考えると
コバチが花粉媒介者だとは考えられない。
次回「トレントその6」
「話は変わりますが、メダル審査とはどういうものなのですか?」
「私達が足を広げて、審査員達が花を観察します。そして花の大きさや形、色艶などに対して
点数をつけていきます。その合計点に対応した各賞のメダルが取得できるという審査会です。
フラグランス審査というのもあって、私はそちらでも高得点でした」 さらに、蜜腺が体内の奥深くに位置しており、花粉塊のある場所から蜜腺までの距離が
人間の前腕の長さほどもある。
山田は首をかしげつつ人工授粉を進めた。そして作業中に考えた仮説はこうである。
彼らの生まれ故郷である暗黒大陸では、コバチではないまったく別の花粉媒介者が
トレントの受粉に関与していて、その何者かは体内深くの蜜腺まで届くような長い
採蜜器官を持っている、と。
のちに暗黒大陸で山田の予言したとおりの特徴を持つ魔物が発見され、
その魔物には「予言された」という意味をもつ学術名がつけられることになった。
次回「トレントその7」 その魔物は寝ているトレントの美女へと忍び寄る。そしてぬめぬめとした赤く長い舌を
トレントの花へと差し込み、その蜜壺に(以下描写自粛)
山田の人工授粉によってトレントの妻は無事に結実し、珠のような雄株の実生苗を
授かった。その後も次々と実生繁殖を続け、アングレカム族のセスキとペダレの夫婦は
幸せに暮らしたという。
よく考えてみたらラン科は樹木ではなかったことに気がついたが、たぶんこの世界では
ランは樹木なのだ。うん、そういうことにしておこう。
そして次の事件がおこる。山田領の北部に巨大な火球が落下した。
次回「宇宙から落ちてきたもの」
マクロな空を貫き、山田領を雷(いかづち)が撃つ。 まさかオーバーテクノロジーでデカルチャーなものが…… 山田領の北部平原、火球落下跡の巨大クレーターの底から、馬車ほどもある巨大な
焼け焦げた塊が発見された。
当初は隕石だと思われていたが、左右対称の形状は自然の隕石だとは考えにくかった。
魔力探査による調査の結果、強靭な外殻と比較的柔らかい内部構造に分かれており、
内部からは生命反応が探知されることが判明した。
「この中には、宇宙から飛来した生命体が存在している」
その結論に山田領は震撼した。もしや飛翔魔法を遥かに超える、星間飛行魔法で飛ぶ宇宙船
だったのだろうか?
だが、識別魔法による鑑定は驚くべき結果を示した。
「宇宙巨大植物 レギオソプラントの種子」
それが謎の物体の正体だったのである。
山田は宇宙植物に造詣が深いといわれる、精霊島に住む精霊王を尋ねて対応策を乞う事にした。
次回「その名は精霊王」
そして山田が精霊島へと向かったその日の夜、クレーター内で雨にうたれた巨大種子には
びしり、とひびが入り、吸水を開始していた。 「はい、そういうわけでわしが精霊王です。セイちゃんと呼んでください」
「精霊王様、軽いです」
「あーいいのよヤマちゃん。趣味家ってのは趣味の分野ではみんな対等だからね。
立場とか肩書なんて無視していいの。あたしらの間では竜王はリュウちゃんだし、
海神王はカイちゃんだし。あー・・マーちゃん?あの人は当分封印されててほしいのう。
敬遠される人って、どうして『あの人』って呼ばれるんかね?」
「他人のふりをしたいからでは?そんな事より宇宙植物の件ですが」
「ああ、外宇宙の深淵から飛来した巨大植物じゃね。たぶん文明が滅ぼされたり
共生している巨大怪獣の群れが人間を襲ったり、街がふっとんだりはしないと思う。
しないんじゃないかな。まあ多少は覚悟しておけと」
「んな適当な。滅ぼされると滅ぼされないでは大違いなんですが」
「いやいや専門家って、断定はしないもんなのよ?いろいろ可能性を考えるからね。
それにねー、植物には個体差ってものがあってね。
あー、もうちょっと納得できるように説明したほうがいいかの?」
「年寄りの長い話は嫌われるんですけど・・ぜひお願いします」
「本音出とるよヤマちゃん。もう少し社交辞令というものをじゃね」
次回「個体差がうんたらかんたら」
その頃、宇宙植物は発芽を開始していた。 「たとえばじゃね、ヤマちゃんの寝室にサキュバスが現れたとするわな」
「サキュバスって・・女の淫魔ですよね?男性とエロい事して精力を吸い取る魔物」
「そうそう、男性の理想の女性に化けて、あんな事やこんな事をしてくれる女魔物。
自分の理想っちゅー部分が重要じゃね。ヤマちゃんは巨乳と貧乳とどっちが好きかの?」
「どちらかというと・・いや、私の性癖はこっちに置いといてですね、
それと植物とどういう関係が」
「まあそのうち判るから。で、ヤマちゃんのストライクゾーンど真ん中の女の子が
フェロモン全開で、すっげーエロい服装して現れて、頬を染めながら上目使いで
『山田さま・・』とか言ってくるわけね。んで、そこは寝室で、密室で、人目も無いと。」
「・・・すいません領館に戻って対魔結界消してサキュバス呼んでいいですか」
「悪霊も入ってくるから現実には駄目じゃけどね。で、ヤマちゃんは思わず彼女に
抱きついてキスしてしまう」
「そして高まるムードと共に彼女をベッドに押し倒して」
「んにゃ、真っ赤になって泣き出した彼女にひっぱたかれる」
「ええええええ何その展開。サキュバスですよ?淫魔ですよエロですよR18ですよ?」
次回「宇宙植物の話はどうなったんだよヲイ」
その頃、宇宙植物は種子の殻がうまく脱げなくて困っていた。 「何故かと言うと、その子は男性経験の無い純朴でオボコいサッちゃんだったのじゃね」
「純朴な淫魔って何ですかそれ。そんなものいるわけ・・いるんですか?」
「わしが知ってるキャラだけで数人おるね。エロい種族なのにウブい小娘、という設定が
たまらん、という客層は意外と多いらしくての」
「私の故郷で言うところの『ギャップ萌え』というやつですか」
「で、ちょっと聞いておきたいのじゃけど、ヤマちゃんは『抱きついてキスする』
って場面で、その先の展開に何も疑問を持たなかったじゃろ?」
「え、だってサキュバスですし」
「問題はそこなんじゃよね」
「え?」
「『サキュバスはエロい事を受け入れてくれる』それはまあ、一般論としては正しい。
しかしの、生物集団というのは例外の集合体みたいなもんじゃからね。
『エロい事をすると嫌われるサキュバス』というイレギュラーな個体もおる。
これが『個体差』というものじゃね」
次回「ようやく植物の話に戻るぞ」
その頃、宇宙植物はどうしても殻が脱げずに小休止していた。 「そうは言ってもそういうのは例外でしょう」
「では聞くが、ヤマちゃんは人間の女の子にいきなりキスするかの?」
「いや、さすがに人間相手なら、相手の反応を見ながら」
「『サキュバスにも純朴な個体がいる』と思っていれば、人間相手と同じ用心をしてるじゃろ?
サキュバスだから楽勝だー!という先入観で行動して、個体差なんて頭に無かったじゃろ?」
「それはまあ」
「植物栽培でもな、そういう御仁が多い。量産園芸種や野菜の固定種ならば
性質が一定じゃからマニュアル栽培でええんじゃけど、野生植物の場合にはそれでは
駄目なんじゃよね。個体差というものを考えて手を出さないと、突然ひっぱたかれる」
次回「宇宙植物の出番はまだですか」
その頃、宇宙植物は殻脱ぎを再開していた。 「つまり種名で判断することなく、個体特性を見て栽培を変えなければ駄目だと」
「まあそういう事じゃね。とはいえ宇宙植物なんぞという栽培情報が皆無のものじゃと
特性を把握するまでに長い時間がかかって大変じゃったが」
「おお、宇宙植物を育てるとかマッド錬金術師のような。てか育てたんスか!」
「宇宙植物は漢(おとこ)のロマン」
「まあそこは否定しませんけどもね。生長して暴れだしたりしませんでしたか?」
「わしが育てた株はどれも大人しかったのう。とはいえ凶暴な個体がいてもおかしくない、
というのが個体差というものでの」
「いやちょっとその、いきなり人類SOSになったら困るんですが」
「まあそういう時はリュウちゃんに煉獄滅神ブレスを2,3発たたきこんでもらって
宇宙植物に教育的指導を」
「何ですかその怪獣大戦争」
次回「宇宙植物はこう育てる」
その頃、ガタガタ動く巨大種子の周りに領民が集まりはじめていた。 「というか、今『育てた株はどれも』って言いませんでした?複数株を育てたんですか?」
「おお、3株ほどだがの」
「うわ・・宇宙植物3株って何それ凄い」
「いや、別に凄くないじゃろ。『女性3人と付き合ったから俺は女性について語るぞ!』
っていう男がいたらただの痛い人じゃろ。威張れるのは女を知らない連中を相手に
している場合だけじゃよね。まあ栽培自慢ってそういう痛い人が多いんじゃけど」
「辛辣ですね精霊王様。それはともかく、宇宙植物ってどういう花が咲くんですか?」
「それがよく判らんのよ。うちで一番古い株は種子から育てて150年ぐらいになるん
じゃけども、一度も咲いたことがない。種子の大きさから考えて10階建ての建物ぐらいに
生長してもおかしくないと思うんじゃけど、一定の大きさから全然大きくならんからのう。
この星の気候に合わんのかもしれんの」
「150年とかあっさり言ってくれますね。えーと、大きくならないんですか?」
「そうじゃね、2階建ての建物の屋根を越えるぐらいで止まるかの。背丈は半年ぐらいで
急速にそこまで育つんじゃけど、そこで止まってあとは外見的にほとんど変化せんね」
「まあそれでも十分に大きい気がしますが。室内栽培は無理ですねそれ」
「いや巨人族のご家庭ならば何とか」
「その発想は無かった」
次回「宇宙植物の特徴」
その頃、巨大種子の周りに近寄らないように警戒線が張られていた。 「いずれにしても、宇宙植物の栽培に興味が出てきました。育ててみましょうかね」
「ヤマちゃんならそう言うとは思ったがの。ま、ヒトの身で育てられるものには限界が
あるからの。自信が無い時はやめておくのも選択肢じゃからの」
「あー・・園芸を極めようとすると、栽培やめますか、人間やめますか、と問われる領域に
なってくるんですね・・まあ芸事ってのは本来そういうものですけど、この世界の場合は
『人間やめる』が比喩じゃないからなあ・・」
「ヒトの身を捨てる決心がついた時には相談にのるからの」
「まあ死ぬまでには考えておきます。あ、聞き忘れてましたけど、宇宙植物の樹形と
いうのはどんな感じなのですか?」
「まあ普通の植物じゃね。この星の植物と外見的に大きな違いはないわの」
「・・この星の植物の普通って、怪獣ですよねそれ」
次回「宇宙植物目覚める」
その頃、山田領防衛隊が宇宙植物の周囲に布陣を完了していた。 「怪獣という感じではないがの。一番近い姿なのはドライアドかの」
「ああなるほど、ドライ・・え?」
「ドライアド」
「えーと・・植物系の魔物で、緑色の髪の女の子」
「そう、それ」
「背丈が2階建ての建物の屋根を越えるぐらいの」
「うん、正しく理解しとるね」
「・・宇宙巨大植物がどうして女の子の姿をしているんですか!」
「それは収斂進化の」
「うわあああ、こういう展開だとは思わなかったあああ」
次回「そういうわけで」
そのころ、おおきなたね は ぱかん、とわれて、なかから げんきな おんなのこが
うまれました。 その後しばらくして、山田のことを「お父様」と呼ぶ巨大美少女の肩に乗って、
領内を視察する山田の姿を山田領で見かけるようになった。
彼女は、のちに山田領に開業した巨人族用の喫茶店「お帰りなさいませご主人様」で
バイトをするようになり、異世界の装束を参考にした、個性的なデザインの店員制服が
よく似合う巨大看板娘となったという。
ヤック・デカルチャー(ドワーフ語で「めでたしめでたし」の意)
次回「新しい産業」
お題>>102 聖ヨウミツバチ。妖蜜蜂族の中で最も貯蜜の風味が良い魔蟲である。
山田領ではこの蟲を使役して妖蜜を生産することに成功し、領主の名を冠した妖蜂場の
経営を開始していた。
しかし最近になって急激に妖蜜の生産量が低下していた。妖蜂の女王の話を召喚士に通訳
してもらったところ、黒い妖蜂の集団が出没して盗蜜しているという。
山田と召喚士は苦労して黒い妖蜂の女王を見つけ、話を聞いてみた。すると彼女達は
精妖王魔ルハナ蜂と呼ばれる魔界の蟲であった。農場で花粉媒介のブラック労働を
させるために魔界から強制召喚された、人間の被害者とも言うべき蟲達だった。
そして自由を求めて脱走し、今日に至ったということが判明した。
次回「侵略的外来種」
黒幕にいるのは、いつも人間。 山田は黒い妖蜂達を魔界に送り返す方法を探し出した。
そして領民達を集め、樹木医の一族に伝わる集団舞踏魔術「蟲送り踊り」によって
魔界へとつながる転移門を呼び出した。
黒い妖蜂達は夜空に飛び上がり、感謝の意を伝える集団発光飛翔を舞いながら
大きく、そして高く燃え上がる篝火の上を超え、転移門の向こうへと還っていった。
そしてまたもや起きた事件。
アサシンギルドに資金提供をうけた一人の男が試みた、暗殺者を人工的に作り出す技。
次回「禁断の錬金術」
その姿、愛らしく可憐なることが優れた暗殺者の資質なり。 ・・おや、お嬢さん、目が覚めてしまったかな?施術が終わるまで眠っていてもらう
予定だったのだけれど・・
あ、動いてはいけない。手足が寝台に固定してあるから、無理に動いたら痛いよ。
もう一度寝ようね。今お薬を体に入れるから。
あー騒がないで。お嬢ちゃんは病気になっていたから、今治療をしているんだ。
心配しないで早く元気になろう。体が良くなればお父さんやお母さんの
ところに戻れるから。
ん?おじさんの赤い服が気になるのかい?ん〜ふふふ、素敵な服だろう?
これはねぇ、劇辛愛好会の限定商品なんだ。辛い食べ物って素晴らしいよねぇ。
熱さとも痛みともつかない刺激が脳をゆさぶるあの恍惚感・・うふうふうふうふふふ。
毒を持つ動物は多いけれど、あんな麻薬的な刺激成分を持つ動物なんて存在しない。
あれこそ植物の神秘・・溶血毒や心臓毒も凄いけれど、辛さこそが至高の植物成分だ。
お嬢ちゃんも・・そう思うよね?うふうふふふふ。
おじさんは思ったんだ。人間の姿と、激辛植物の辛さが一つになった時、素晴らしい
暗殺生物が生まれるって。あの人達は猛毒植物のほうがいい、って言ってたけど、何も
わかってないよね。激辛が一番なんだ。そうあの赤い赤い辛さが熱さがうふうふふ。
ああ、よけいな事を話しすぎたようだ・・そろそろお薬が効いてきたかな?
安心して眠りなさい。次にお嬢ちゃんが目が覚めた時には、素敵な体になっていて
みんなが褒めてくれるからね。
どうして泣くんだい?これが済んだらお父さんやお母さんのところに戻れるからね。
嘘だ?これからお化けにされるんだ、もう二度と家に帰してもらえない、って?
どうしてそんな事を考えたのかなあ?・・さあ眠りなさい。おじさんはねぇ・・
・・君のような勘のいいガキは嫌いだよ。
次回「許されざる命」
山田領防衛隊が現場に踏み込んだのは、少女の生体錬成が終了した後だった。 暗殺用の合成生物、毒娘。体に流れる血潮はカプサイシン、その存在は歩くデス・ソース。
触れた者には辛さが染み渡り、皮膚が爛れて気道が腫れ塞がる呪われた少女。
生物錬成施設から助け出された彼女はただ一言だけつぶやいた。「・・死にたい」と。
山田は彼女の姿を見た時に驚いた。とても良く似ている・・前世の初恋の少女の面影に。
その絶望の涙を見た時に山田は思った。
自分が知っている、あの話と同じ結末にしてはならぬと。
たとえそれが、不可能と言われている事であったとしても。
次回「鋼の心の錬金術師」
「お前が死ぬ必要はない!なぜならば、俺が元の体に戻してやるからだっ!!!」 >>152
少女はその後、食事を摂ろうとはせず、しだいに衰弱していった。
だが、山田は結局、その苦しみの日々に終わりが来るまで何もできなかった。
生体錬成の術式は複雑きわまり、天才錬金術師でもなければ内容すら理解できない
ものだった。専門知識の無い山田がいかに意気込んだところで、どうにかなるもの
ではなかったのだ。それを悟った時、山田はーー
隣にいた天才錬金術師の肩をたたいて「頼むわー。費用は俺に回してくれ」
かくて錬金術師は無茶を言う山田に呪いの言葉を吐きつつも、不可能と言われている
生体再錬成に挑戦した。少女の両親の遺伝子構成と魔力属性を調べ、合成錬成体の
構成と比較。少女の体のオリジナル要素ではないと思われる構成因子を特定した。
次に外部由来の要素を排除するための膨大な術式を、並列式液浸型ゴーレム演算脳に
よる高速情報処理によって作成。これらの一連の処理をおこなわせる演算指示術式の
構築のため、錬金術師は徹夜の術式記述が続いた。しかし鋼の精神力によって
それを成し遂げた。
そしてついに、少女を元の体に戻すための並列三次元錬成魔法陣が完成したのである。
次回「そして」
山田は体力を使い果たした錬金術師におかゆ的な療養食を作った。 こうして少女は、生体錬成前の体に戻ることができた。
「元の・・あたしの体・・ご領主様・・あ、あああ・・」
泣き崩れる少女の背中を山田が優しく叩くと、少女の顔は少し赤くなった。
その後、彼女は無事に両親の元へと送りとどけられた。
「ご領主様、本当にありがとうございます。あ、あの・・ご領主様にまた会いに
行ってもよろしいですか?」山田は笑って、いつでも遊びにおいでと答えた。
「私・・ご領主様のことを・・す・・ええと、素晴らしい方だと思います」
そう言って真っ赤になった彼女は両親のところへ走っていった。
そして人間の姿から、激辛唐辛子キャロライナ・リーパーに似た肉塊のような姿に戻った
植物魔物の少女は、赤くて辛い汁を分泌しながら、帰っていく山田に向かっていつまでも
真っ赤な触手を振りつづけるのだった。
その後、錬金術師からの請求書を見た山田は泡を吹いて卒倒したという。
そして次の事件。山田領のはずれの廃屋に、猫獣人の浮浪者が住み着いた。
次回「野良猫が来た」
猫、それは害獣にして園芸家の天敵。 ある日、どこから来たのか、山田領に一人の猫獣人が現れた。
地球人であれば15歳か16歳ぐらいに見える若い娘でありながら、衣服を着たと言うよりも、
ボロ布を体に巻いたと言ったほうが適切な、すさまじい恰好をしていた。
その娘が一人で領境の廃屋に寝起きするようになった時、その噂はすぐに領内へと
広まった。彼女が人目を引いたのは、本来なら都市にしか生活していないはずの浮浪者が
辺境の地に現れるという異常な状況だったからでもある。だがそれ以上に
彼女の容貌が領民の興味を引き付けた。彼女は異様に可愛かったのである。
純白のつややかな髪に、オレンジと黒のメッシュという毛色も珍しかったが
黒目がちの大きな瞳に、整った小さな口の横から見える真っ白い小さい牙、
すらりと伸びた猫耳のバランスもまことに申し分なかった。人間の美少女の可憐さと
子猫の愛らしさに、さらに野獣の美しさを加えて3で割らずにそのまま、と
いった外見は、普通ですら可愛い猫獣人の標準をさらに上回っていた。
彼女ほどのお猫様ならば、下僕になりたがる人間はいくらでもいるはずである。
常識的に考えて、浮浪者になって廃屋で寝起きする必要はない。
何か特別な事情があって辺境まで逃げてきたのか、あるいは極度の人間嫌いか。
次回「野良猫その2」 どうやって生活していくつもりだろう? 領民の疑問はすぐに解消した。
専門知識も資格もない彼女が、生きるために選んだのは、体だけで始められる仕事。
人類最古の職業と言われる仕事の一つであり、普通の若い乙女ならば、考えただけで
躊躇するであろう汚れた生き方。
すなわち盗賊である。
最初に狙われたのは、なんと山田が暮らしている領館であった。
いかなる方法で忍び込んだのか、白昼堂々と数々の防犯結界をかいくぐり、
さらに警備の目も盗んで、領主室で仕事をしている山田ですら気づかぬうちに
ひそかに領主室に侵入していた。そして部屋に運ばれてきた昼食を食べようとして、
山田が手を洗いに行った隙に、彼女は領主机にそっと忍び寄った。
山田が領主室に戻ってきた時、美しき女盗賊は山田の昼食の焼き魚を口にくわえ、
二階の窓から風のように逃げ去っていった。
次に狙われたのは温泉旅館山田屋である。真夜中に金庫室前の警備当直室に
忍び込み、警備員の隙を見て鍵束を盗み取った。そして調理室の鍵を開け、収納庫内に
保管してあった、翌日の宿泊客の朝食に使われるはずだった魔獣サケハラスの切り身を
食い荒らした。
次回「野良猫その3」 その後、主婦の買い物かごから生魚が強奪される、愛玩獣の餌が横取りされるなど、
領民にも被害が広がった。そこで防衛隊が出動し、猫獣人の捕獲を試みた。
しかし姿を見つけて追跡してもすぐに見失い、また遠隔魔法の狙撃圏内までは
けっして近づいてこなかった。住居となっている廃屋を見張っていても、
敏感に気配を感じ取るのか、監視員がいる時には姿を見せなかった。
そこで山田は、餌付けを試みることにした。
食事を与えて満腹にしておけば、食糧が盗まれることはなくなると予想したのだ。
領館の家臣用食堂に定食が用意され、監視魔法で観察が行われた。しかし監視している
間は手つかずのまま放置されていた。そこで試しに監視を切ってみたところ、短時間の
うちに完食されていた。その後も猫獣人はほとんど姿を見せなかったが、
人がいなくなった時に食堂に来て定食を食べているようだった。この餌やりによって
領内での食料品の盗難はおさまった。
次回「野良猫その4」 しかし盗難に代わって、領館敷地内での猫獣人による乱暴狼藉が新たな問題となった。
雨の日に泥足で入り込んで廊下中に足跡をつけていったり、家具で爪を研いだり、
室内に抜け毛を撒き散らしたりした。
さらに植物栽培場に入り込んで鉢植えを棚から落として割り、猫草に似た細長い葉の
植物は手当たり次第に葉先をかじられた。かじった時に力加減を間違えて鉢から草を
引き抜いてしまい、裸苗になった植物がころがっていたりもする。
とどめに、食べた草と一緒に毛玉を吐いて周辺を汚している。
ぐぬぬ、このような悪行でも可愛いから許されるというのだろうか>>157
苗を植えたばかりの花壇はほじくられて用を足され、庭園に来た妖精が追いかけ回されて
領館に寄り付かなくなった。裏庭で平飼いされている庭竜は、猫獣人が出入りをする
ストレスで卵を産まなくなった。
山田も頭をかかえたが、飼い獣人にして躾をしようと思っても、人慣れしていない
のではどうにもならない。家臣からは、あくまで冗談ではあったが、食事に魔動車用の
不凍液を混ぜてはどうか、などという不穏な発言まで出るようになっていた。
次回「野良猫その5」 そんなある日のこと、メイドのミヤゲが困惑した顔で山田を呼びに来た。
聞けば、猫娘が領館の屋根の上で、避雷針にしがみついてガタガタと震えながら、
変な声でうなっているという。
山田が屋根に昇ってみるとミヤゲの言葉通りに猫獣人がそこにおり、見るからに
様子がおかしい。近づいても逃げようとはせず、虚ろな目で避雷針を握ったまま
時々ピクピクと変な痙攣をしている。
ひとまず鎮静魔法で眠らせて、療術室で診察してみることにした。
彼女の体を調べてみると、背中が妙に白く、その部分が弾力を失って硬くなっている。
山田はこの症状を見て、昔読んだ学術書の記述を思いだした。
「病状が進行すると精神錯乱をおこして高い所に登りはじめ、やがて何かにしがみついた
状態で体が固まってきて、まもなく命を落とす」
まさに今回の症状と一致している。
それは猫獣人の間で最も恐れられている、凶悪きわまりない伝染病だったのだ。
次回「冬猫夏草」
彼女は明日になれば全身から子実体が伸びてきて、周囲に胞子を撒き散らす。 異世界もののなろう小説のセリフに鹿沼土とか出てきて爆笑した。 そして山田の抗真菌呪術により、彼女の治療はあっさり終了した。
魔法世界なので、有効な術式がある場合にはその場で治るのである。
だが彼女は、正気に戻ったとたん周囲の人間をシャー、フーと威嚇しはじめ、
隙を見て病衣のまま外へと逃げだしてしまった。
しかし自分が病気を治してもらった恩義はしっかりと理解していた。
その夜、猫美少女は山田の寝室にそっと忍び込んできた。そして、自分には
これぐらいしかできるお礼が無いの・・と恥ずかしそうに言うと、寝ている山田の
枕元に、ネズミに似た小動物の死骸をたくさん並べて帰っていった。
それ以降、徐々に気を許した彼女は山田達の姿を見ても逃げなくなった。そして
食事の時間になると家臣食堂に来て、ニャーニャーと鳴いて食事を要求するように
なった。食後に食堂で丸くなって昼寝をしたり、山田が近づいて頭をなでても
指に噛み付くだけで逃げないぐらいまで馴れたので、隷属証明の首輪(枝に引っかかった
時には強く引っ張ると分解するタイプ。鈴付き)を与えられ、領館の一員となった。
その後、「働かざるもの食うべからず」の方針により彼女はメイド服を与えられ、
新しくできたカフェで働くことになった。職場ではほぼ終日寝ていて、起きた時に
毛づくろいをしたり、たまにお客さんからオヤツを貰ったりして接客に努めたという。
次回「猫の日常」
今はまだ、平和な日々が続いていた。 そして本日はたいへん良い天気である。
猫娘は勤務先のカフェを抜け出して、領館の裏庭を散歩していた。
猫なので勤労に関しては特に意識していない。
花壇の土がやわらかくて具合が良かったので、掘って用を足していると
庭園の隅にキラリと光るものが見えた。花壇を埋め戻してから近寄ってみると、
それは金色の指輪だった。
彼女は、誰が落としたのか、などと深く考えることもなく指輪を拾って
ポケットにしまった。拾得物として報告しようとは思っていない。
猫にそのような行為を期待してはいけない。
なんと、その指輪は古代森エルフの王が所有していた伝説の魔道具だった。
それを手にした者はあらゆる植物の生育と死を支配し、王の中の王となって
この世のすべてを我が物となすこともできる恐るべき指輪。
神にも悪魔にもなれる力を、今、彼女は手にしたのだ。
次回「緑指王の指輪」
その大それた力のことを彼女はまだ知らない。 緑指王の指輪。それは森エルフの(中略)深い地中に埋もれ(中略)
長い時を経て(中略)領館の庭に現れた。
その新たな所有者となった猫娘は、家臣食堂の調理のおばちゃんに指輪を見せた。
おばちゃんが興味を持ったので、猫娘はシシャモ的な魚の干物3本と指輪を交換した。
猫は指輪になど興味は無いのである。
かくて究極の魔道具の所有権はおばちゃんへと移った。
おばちゃんの指は太くて指輪が入らなかったので、指輪に革紐を通して、ペンダント
として使う事にした。この使い方だと指輪の魔力は発動しない。
おばちゃんにとって、それはただの綺麗なペンダントであった。
そして誰も気づかず、誰も知らず、事件は何もおこらなかった。
空は青く澄み、世界は今日も平和であった。
明日もまた、平和な日が来ることだろう。
誰もがそう思っていた。その日までは。
明日も今日と変わりない日がやってくる、そんな保証はどこにも無いというのに。
最終章「終わりの始まり」
その日の夜、北の島のほこらにあった魔王の封印が何者かに破られた。
雷鳴が鳴り響いて大地震がおこり、島は砕けて住民と共に海中に飲み込まれた。 ついに園芸界最凶と恐れられた存在、魔王ガーデナーが復活した。
配下の邪培十傑衆が再集結し、全世界への侵攻が始まった。
魔王は入手した植物をすべて自己流の栽培法で育て、それに適応できぬ植物は枯れた。
適応できた植物は飽きて放置され枯らされた。
園芸初心者には上から目線で半可通な栽培法を押し付け、納得せぬ者は発酵堆肥の山に
生きたまま埋められた。園芸歴の長い者を老害と呼んで新しい植物の栽培を強要し、
逆らえば肉骨粉にして有機ボカシに加工した。
園芸オークションでは相場を無視した高額で入札し、落札してから出品者への
無償提供を強要した。それを拒否した者は一族もろとも野菜屑と混ぜられ、発酵槽へと
送られた。畑の土はみるみるうちに肥えていったが、肥料の原料を知っている人々は
そこで作物を育てようとはしなかった。
園芸界にもはや希望の太陽は無く、園芸関連株の取引きは魔王への恐怖でたちまち
凍りついた。世話する者を失った花は枯れ、飛龍は空を捨て、人は微笑みを無くして
いった。
次回「魔王その2」 それでもなお逆らおうとする人間達を、魔王は許さなかった。
魔王の極大魔法によって地軸はねじまがり、大陸は引き裂かれて海に沈み、
地上は核の炎につつまれて総人口の半分を死に至らしめた。
精霊王達の力をもってしてもこの惨劇を防ぐことはかなわず、
その後の修復と蘇生には3日を要した。
この事態に対し、世界人族王会議は緊急動議によって魔王への対抗策を
協議した。そして国家の枠組みを越え、異なる種族同士が手を取り合った。
勇者を中核として各国からヒトと亜人の精鋭を集結させることが決定し、
史上最強のアベンジャーズ・パーティーが結成されたのである。
次回「無敵の勇者、ここに見参!」
その頃、山田は赤黒く染まった空を見上げながら、世界の終わる時、自分に何が
できるのか考えていた。そして今は、ただ一人で畑で水を撒いていた。 優秀な植物系戦士を挿し木したり組織培養で増やすべきだ 勇者一行は魔王に敗北した。
園芸に関する知識が皆無であったため、邪培十傑衆の植物攻撃に、見当違いの対応を
して自滅したのだ。
魔王は山田領から「緑指王の指輪」を奪い去って生態系を改変し、すべての植物は
魔王のしもべとなった。
ついに世界を統べた魔王は言う。栽培とは、飢えた心を満たすための捕食だと。
園芸家は、植物の命を食い殺さねば心が保てない生き物なのだと。
それに応えて一人の男が言う。
ならば花を育て、殖やし、守りながら我々の飢えも満たしていこう。
食い殺す相手が滅びてしまえば、我々も飢えて死ぬのだからと。
凡人はたとえ未来を信じても、一人でそこにたどり着く力はない。
だが男は、彼を信じる仲間達の助けを得て、まだ見ぬ光景を目指して進んでいく。
昨日の妄想は今日の希望となる。そして明日は。
彼の想いは、いがみあう国々の間に絆を結び、人々の心に種を播く。
最終回「あの丘の向こうに」
山田の最後の戦いが始まる。その結末は、生か、死か。 <翻訳者あとがき>
邦題「転生者山田の、剣と魔法の怪しい園芸」を公開する機会を得たことを嬉しく
思う。発表の機会を提供してくださったスレ主と、読む事が苦痛でしかないクソのような
駄文の連投を、生暖かく放置してくださった寛大なスレ住人に御礼を申し上げる。
本書は原題「qあwせdrftgyふじこlp」、通称「ルルイエの薄い本」と呼ばれる奇書で
ある。太平洋グアム島沖の深海に発生した異世界転移ゲートの、破壊後サルベージ調査
において、解析不能の箱に納められた状態で、日本語の手書き辞書と共に発見された
ものである。そこには山田と呼ばれる人物が無職のニートから、錬金術師の家の居候を
経て、自らの園芸知識によって貴族にまで成りあがっていく過程が記録されている。
その内容には意味不明の単語、理解不能な表現が頻出し、翻訳に苦労させられたが、
できるかぎり意味が通じるよう訳出に努めた。
(続く) (続き)
しかし文体の統一感の無さ、誤字脱字、あーしまった変な文章を投稿した等々の欠陥と、
全体に漂う中二病臭&頭の悪そうな内容がものひどい。
これらは即興で書き進めたことにもよるが、主たる原因は翻訳者の文才の無さに起因
する。もし真面目にお読みくださった方がいらしたならば、深くお詫びを申し上げて
おく。馬鹿が書く文章には第三者の視点による査読と校正、ストーリー修正が不可欠
であることを改めて痛感した。
なお、本書で最終回と呼ばれる部分に関しては発見時にすでに失われており、
この物語がどのような結末を迎えたかについては想像するしかない。
新たな資料が発見された時には、改めてご報告したいと思う。
2018年8月3日 翻訳者 花咲 那奈志
―完― 最後世界がどうなったかより、こういう終わりの方がらしいというか
自分はすごく楽しませてもらったよ ありがとう 少し膨らませて、なろうとかで連載したら、デイリーランクインは硬いクオリティだったと思う 流石になろうのランキングには無理だろう
そもそも普通の人には園芸で使う用語がわからない
かといって解説つけたら無駄に文字数使って余計読まれない >>186
そだねー
専門的な用語や概念が多すぎて一般には無理っぽいね
園芸家には面白かったけど ご感想ありがとうございます>皆様
下書き段階で誰かに読んでもらって反応を見ないと、どこがウケてどこがキモがられるのか
全然わからないので書き進めにくいんですよねー。
ご指摘通り「なろう」で書ける内容ではないです。仮に書くとしたら専門家の爺さん博士と
素人青年のコンビが異世界転移して話が始まる。
「むう、これはモザイク病」「し、知っているのですか雷電博士」
「人間で言えばエイズに相当する不治の病。しかも治療薬が見つかっていない」
(民明堂新光社からの引用解説文が入る)
みたいな流れで進める事になるでしょうか。
まあ、一般向けであれば植物は判りにくいので動物ネタで進めます。
昆虫美少女しかいない異世界「むしフレンズ」でハーレムを目指す主人公とか。
トゲオオハリアリのお姫様に言い寄られる。「私のはじめての人になって・・
あなたとの子供で王国を作っていきたい・・」
「博士、やります!」「早まるな。トゲオオハリアリでググれ」
みたいな。いやまて、需要あるのかその話。
ご意見、ご感想は今後の参考にさせていただきます。でも罵倒は凹むので勘弁してね。
痛い話を書いてる自覚はあるんで。 カマキリ美女やクモ美少女とお付き合いするのも命がけだね うーん、持ちネタはだいたい使い尽くしたので・・。
残ってるネタは園芸成分が足りなくて没にしたものしか残ってませんので・・。
・・まあどうせ数人しか読んでないだろうし、
くっっだらねぇ水着回とか書いても、止めに来る人はいないかもですが。
いや冗談ですからね?今まで登場した女性キャラを総登場させて水着コンテスト話とか
書けなくはないけども、イラスト無しの駄文だけでは萌える要素がないわーw ガタッ
塩素入り水だと良くない植物少女のために浄化効果のあるスライム水(トロミ有り)で満たしたプールとかですか ムチプリで棘があるサボテン娘
普段はシワシワのババアだが風呂に入ると絶世の美女になるテマリカタヒバ(復活草)娘
樹上で生活しウブ毛が美しいチランジア娘
痩せると男に太ると女になるテンナンショウ人間 むしろ逆に、異世界から現代に転生してきた魔法使い見習いに、現代の植物のイロハや使えない雑学を教える的な小説が読みたいw
くっさいくっさい花嗅いで悶絶したり、アガベからテキーラ蒸留したり、メープルの木からシロップとったり。
ダメかな >>196
「何?モヤシ?何だそれは・・今晩はそれを炒めて、穀物の上に乗せたものが晩飯?
他には何も無い?そ、それがこの世界の常識的な食事だというのか!」 >>197
むしろ
「なんだこの真っ白な食材は!…これが植物だと?しかもなんだ、日光を当てずに水だけで育てるなんて、常識外れだ!」
みたいなところから責めないと園芸である意味ないじゃん。
で、転生してきた奴が可哀想だからと日光に当てて育てて別物になるまでが園芸w >>199
リクエストされると書きたくなるからやめてwww ――これは魔王との最終決戦に至る前、まだ平和な頃の山田の物語であるーー
ある夏の日、王国南方の海上でタイフーが発生した。
タイフーとは、南大海において大自然の魔素(マナ)が局所的に集積し、巨大なドラゴン
の姿となって、陸地に上陸してくる現象である。その姿は幻であり実体は伴っていないが、
タイフーの進路に当たった都市は、タイフー周辺の魔力のこもった暴風雨により多大な
被害をうける。近年では、チバ領にあった私立の食虫植物女子学園が壊滅した事例がある。
多数の肉食系美少女が犠牲になり、学園長が失意のうちに亡くなられた事が悼ましい。
また、かつて王国南部のウチナー領には私設のバナナ園があったが、タイフーによって温室が
半壊し、誰もが閉園を予想した。ところが園主はくじけずに資金を調達し、地球の単位で
風速70mにも耐える強化温室に改築して再開園し、人々を驚かせた。そして改築後まもなく
最大瞬間風速80mの巨大タイフーがやってきて廃園となった。
かようにタイフーの被害は甚大である。
屋外に置いてある鉢植えなどはすべて吹き飛ばされるため、屋内に移動しなければならない。
人々はタイフーを静めるという伝承のある、ゆでて潰した芋に炒めたひき肉を混ぜ、衣を
まぶして油で揚げた料理を祭壇に捧げ、忌み籠りをしながらタイフーが通り過ぎるのを
待つのが常であった。
次回「その2」 ――これは魔王との最終決戦に至る前、まだ平和な頃の山田の物語であるーー
ある夏の日、王国南方の海上でタイフーが発生した。
タイフーとは、南大海において大自然の魔素(マナ)が局所的に集積し、巨大なドラゴン
の姿となって、陸地に上陸してくる現象である。その姿は幻であり実体は伴っていないが、
タイフーの進路に当たった都市は、タイフー周辺の魔力のこもった暴風雨により多大な
被害をうける。近年では、チバ領にあった私立の食虫植物女子学園が壊滅した事例がある。
多数の肉食系美少女が犠牲になり、学園長が失意のうちに亡くなられた事が悼ましい。
また、かつて王国南部のウチナー領には私設のバナナ園があったが、タイフーによって温室が
半壊し、誰もが閉園を予想した。ところが園主はくじけずに資金を調達し、地球の単位で
風速70mにも耐える強化温室に改築して再開園し、人々を驚かせた。そして改築後まもなく
最大瞬間風速80mの巨大タイフーがやってきて廃園となった。
かようにタイフーの被害は甚大である。
屋外に置いてある鉢植えなどはすべて吹き飛ばされるため、屋内に移動しなければならない。
人々はタイフーを静めるという伝承のある、ゆでて潰した芋に炒めたひき肉を混ぜ、衣を
まぶして油で揚げた料理を祭壇に捧げ、忌み籠りをしながらタイフーが通り過ぎるのを
待つのが常であった。
次回「その2」 だが、タイフーの上陸には恩恵もあった。
海洋からの膨大な魔素が内陸にもたらされ、動植物の生育が著しく活性化するのである。
そして、今回のタイフー上陸時を狙って、一つの実験がおこなわれようとしていた。
それは、大気に満ちた魔素を利用して、古代遺跡から発掘された謎の植物の種子の
休眠を打破するという試みであった。
しばらく前、古代ジョーモン時代の遺跡の調査において二粒の種子が発見された。
当時に湿地帯だった場所において、無酸素状態の泥に埋もれていたために、当時の状態の
まま残っていたものだと推測された。識別魔法で「名称不明・生命反応あり」と解析
されたため、王立植物園で植物育成魔術によって発芽が試みられた。ところが、
きわめて強大な魔力によって休眠の封印がほどこされており、通常の育成魔術では
休眠を打破できなかった。
そこで植物園は、タイフーが運んでくる厖大な魔素を種子に集積させ、休眠術式を
強制的に解呪する複合魔法陣群を考案した。そして今回、台風が直撃する山田領での
試験実施を企画したのである。
珍しい植物好き、および新しいもの好きな領主・山田は、自分も実験に参加させてもらう
ことを条件に、この計画を了承した。ただ、ここで問題になるのは、タイフー来襲時に
屋外に出ているのは、非常に危険だという点にあった。
次回「その3」 暴風雨による物理的な危険は防御魔術で対応できる。しかし大気中の魔素の状態が
不安定で、いつ魔力落雷がおきてもおかしくない状態になっている。魔力吸収スキルの
ある高位の魔術師や、魔素を養分として吸収できる植物系の魔物の場合、風雨防御の
術式が付与された衣服を装備しておけば、タイフーの時でも野外で活動できる。
ところが山田のような一般人は、魔素を完全に防御する装備を身につけていなければ、
魔力落雷が発生した場合には急性魔素中毒で死亡する危険があった。
だが、その程度のことで諦める山田ではない。体全体を包み、魔力的に外部と絶縁する
防水着「雨中服(うちゅうふく)」を錬金術師に開発させたのである。
地球のヘルメット潜水服のような無骨な装備を着込んでまで参加しようとする山田に、
錬金術師は少々あきれ気味であったが、いつもの事なのであえて意見は言わなかった。
そしてタイフー上陸の日。灰色の空には黒い雷雲が渦巻きつつ流れ、渦の中央の
雲の無い部分にはタイフーの目が赤く光っていた。地上では風雨が強くなるに伴い、
異常集積した魔素によって皮膚がビリビリする感覚が感じられるようになってきた。
領内各所に設置された魔素集積魔法陣では、領内の山田の家臣だけでなく、王都から
集まってきた物好き・・いや熱意に満ちた山田の知人達も、実験準備を手伝っていた。
次回「その4:ではこの世界の、水に濡れても安心な防具の数々を語っていこう」 実験目的の種子が設置された中央魔法陣において、防護服を着用して記録準備をして
いるのは、王立植物園の若き学芸員達である。ちなみに園長は領館の中に退避してお茶を
飲んでいる。彼は今回の実験が失敗した場合、山田に責任が及ばぬように名目上の責任者
として連れてこられたお飾りであり、最初から何も期待されていない。
実質的な指示は錬金術師が出している。
錬金術師は水に濡れても安心なプラグ・・もとい、ウエットスーツ的な、体のラインが
明確に判別できる防護服を身につけている。防御魔術が付与されているので服の厚みは薄いが、
物理防御力は鋼の鎧に匹敵する。体の動きにともなって、若い女性の身体的要素が
強調された状態で視認できる仕様である。ある意味では硬質素材のビキニアーマーよりも
攻撃力が高い。若い男性研究員達が必死になって横目で見ている。
全身タイツフェチの一名は、どうして顔が覆われていないのかと嘆き悲しんでいる。
その横では雨中服で全身を包んだ山田が、熱心に種子のチェックをしている。
隣にいる若い女性の身体的特徴よりも、植物に目がいくのは男性としてどうなのか。
これでは植物以外に付き合う相手がいなくなってしまう。なぜか書いていて胸が痛い。
山田の近くでは植物魔物のナナ&ナナ・ツーが、色違いのワンピース的な、幼女水着風の
かわいい防護服で走りまわっている。植物魔物には魔素たっぷりの大気はご馳走である。
たくさん食べると、ちょすいきゅーが大きくなるんだよー、と言いながら空気を食べる
真似をしている。実験の役には立っていないが場の雰囲気がなごんでいる。
次回「その5」 少し離れた場所にある主力補助魔法陣では、召喚士が術式の副監督として待機している。
彼女の防護服は、かつて異世界から召喚された初代勇者が、冥王との戦いに挑む際に
愛する少女を守るために作り上げたと伝えられる伝説の防具である。異世界の言葉で
スクミズと呼ばれる紺色の防護服は、胴体のみを覆う形状であるが、魔法付与によって
全身の防御力を著しく高める効力がある。召喚士に装備可能な防具としては、「精霊の羽衣」
と並んで最強クラスの装備である。さらに、特定の属性を持つ者は、着用者の姿を見た
だけで「魅了(チャーム)」の魔法がかかるという特殊効果も付与されている。
しかも召喚士は独自に凶悪な改造を加えており、魅了された者が、装備者の名前を
聞いただけで下僕と化すような視覚的符術を防護服に施している。すなわち、自分の
名前を白くて四角い術符に書き記し、胸に張り付けてある。
これによって特定属性の者に対する魅了効果は飛躍的に高まっている。
この防護服は伸縮率に富み、膨らみかけとも言うべき身体的特徴を隠すことなく表出
させている。彼女はこの特徴を無駄の無い機能美と考えており、他者の無駄な脂肪を
憐れんですらいる。この思想が男性視点の社会において、どの程度の割合で共有されうる
かについては調査する必要がある。
次回「その6」 召喚士のアシスタントをしているのは宇宙から来た巨大植物娘である。巨大な姿だと
細かい作業ができないためマイクロー・・小人化の魔法によって一時的に人間大に
なっている。彼女は防御力が高いので、水着的な防護服は着用せずに普通の服で参加
している。
雨で濡れている彼女を見て学芸員が心配し、雨具を持ってきた。しかし彼女は、
植物魔物には雨に打たれると腐る子もいますけれど、私は雨に当たっているほうが
調子が良くなるんですよ、と言って微笑んでいた。
だが、この行動は本人には問題なくても、周囲の人間は心おだやかでない。
彼女の服装は山田が普段着として用意したものだが、デザイン的には現代日本の
女子高校生の服装を参考にしている。すなわち白い半袖のスクールブラウスで
襟元にスクールリボン、紺色のスカートである。地球人であれば十台前半に見える
美少女が、この服装でしっとりと雨に濡れている。白いスクールブラウスが
肌にはりついて服の下のあれこれが透け、風紀的にけしからんとしか表現できない。
彼女は「人前では服を着るものだ」という教育をうけてはいるが、どうして服を着る
のかという本質を理解しているわけではない。そのため学芸員に見られても気にする
様子は無い。彼女は宇宙から来た娘さんなので、常識に欠ける部分もある程度はやむを
えない。だが山田は早く気付かねば保護者として失格である。だが、困ったことにまだ
何も気付いていないので、このまま話を進めていくことにする。スカートも濡れて腰の
ラインまでもがしだいに露わになってきている。召喚士は気付いているが、学芸員の反応
が面白いので放置している。
次回「その7」 別の地点にある第二補助魔法陣は、魔法技術は高くないが魔力耐性のある者達が手伝って
いる。王都からは女騎士団長と、庭師見習いの娘、イチゴ遣いの女匠が来領した。
女騎士団長は地球人であれば20代後半に相当するが、20代前半と言っても誰も疑わぬ
引き締まった肢体である。セミロングの金髪を結い上げ、防護服はミスリル糸を編み込んだ
銀色のワンピース水着風である。胸と腰以外はレース編み的な構造で素肌が見える。
女性用のあでやかなデザインであるが、同時に騎士鎧をモチーフにした勇壮さを合わせ持つ。
禁欲的な雰囲気もありながら、着用者の隠しきれぬ大人の女性の魅力が混じり合う。
相反する属性を両立させた装備が、えもいわれぬ怪しい雰囲気を醸し出している。
庭師見習いの娘は半袖短パンのセパレート水着風である。可憐で明るい色彩の、若い
女性らしい防護服である。さらにその上から救命用具と植物採集用具の入ったベストと
無属性の園芸用具をつるしたベルトを着用している。長靴的な履物と、軍手的な手袋も
身につけているので全体的な雰囲気は農ガールである。マリンレジャーではないので
方向性としてはむしろ正しいのだが、清楚なかわいい娘さんが残念な人になっている。
山田にまた会えたと喜んでいるが、山田は植物のほうに夢中である。
「なろう」であれば女性側から積極アプローチがあってハーレム要員なのだが、園芸板
なのでこれ以上の進展はなさそうである。
次回「その8」 バカなっ、スク○までは予想していたが濡れスケ服とな イチゴ遣いの女匠は、水着ではなく防護術式をほどこした布を体にまきつけた姿である。
具体的に言うと、胸にサラシ的な白布を巻いて下半身は布の下帯、つまりフ〇ドシである。
布地で覆われている面積はわずかで、肌の大部分が露わになっている。固くひきしまった腕、
修行で鍛えぬかれた割れた腹筋。魔力焼けで全身むらなく淡い褐色に染まった肌に、白い
布の対比が映える。若き女剣士の力強い身体が、雨の中でつややかに濡れそぼりつつ
躍動する。何かあった時は私が守ってやる!という表情がまことに凛々しい。
サクラ王女も見学したがっていたが、さすがに王族の参加は問題が多すぎて見送りと
なった。そのため高貴なる姫君の初々しい水着姿が描写されることはない。
山田領からは野菜配達員の魔女っ娘三人娘が手伝いに参加している。各自のテーマカラー
である赤、青、黄の防護服を着用している。デザインが統一されていないのでユニット
構成としては問題があるが、今回は広報活動ではないのでその点は追求されない。
「赤炎の巨乳様」の赤を基調としたビキニ風防護服は、フリルとリボンを装飾に使用した
女性的で華やかなデザインである。そして地球人であれば十代後半の、まだ幼さすら
感じられる容貌とは不釣り合いな、偉大なる母性の象徴がそこにあった。されど揺れ動く
大塊に認められるつややかな張りは、まだ成熟しきらぬ少女の肌のなめらかさである。
そしてウエストも少女らしい細さであることが、これまた不釣り合いな危うさである。
次回「その9」 「青風のツインテ姫」はネービーブルーに水色ラインの、競泳水着風のハイレグ防護服で
ある。背中が広く空いてクロスバックになっており、露わになった肩甲骨が艶めかしい。
一見するとスクミズに類似したデザインにも思えるが、着用者の違いから明らかに別物と
なっている。その腰周りは少女から大人の女性に変わりゆく境界時間を象徴するかの
ように、儚さと豊かさを合わせ持っている。
そして大きくはないが立派に充実しつつある膨らみが、召喚士の思想とは異なる方向性
がこの世界に存在することを示している。
「黄光の眼鏡ちゃん」は発展途上の体型を人前に晒すことを好まず、得意の光学魔法に
よって外観を隠蔽している。彼女の防護服はチラチラ動く光のモザイク模様に覆われて
具体的な形状が視認できないが、おそらく黄色いワンピース水着的なデザインであると
推測される。ちなみに索敵魔法によって魔力感知画像を描出すれば、光学隠蔽をされて
いても、隠されている若干控えめな物件の形状を確認することが可能である。
第三補助魔法陣では一般人と一般植物魔物が手伝っている。黒髪美少女メイドのミヤゲ嬢は、
白黒でフリルとリボンを多用した、いわばメイド風水着とも言うべき個性的な防護服を
着用している。この防具の防護力はきわめて強力で、過剰魔素だけでなく風雨も完全に
防ぐ。そのため大雨でも着用者の体は髪の毛一本たりとも濡れることがない。
ただし泳ごうとして水に入った場合には、ウォーターベッドのようにふよんふよんした
状態の水上を匍匐移動することになる。
ミヤゲ嬢は着痩せするタイプで、いろいろと微妙にはみ出しそうになる防護服にとまどいを
隠せず、赤くなって服のズレを直しつつ手伝いを続けている。
次回「その10」 植物魔物のハオルシア嬢は、以前に誘拐された経歴があるため「隠れ外套」を使用して
姿を見せずに作業に参加している。時々外套を脱いで空中の魔素を吸収しているが、外套
の下から現れたのは黒いレザー調の、フロントジッパー水着的な防護服を身につけた
豊満な草体である。この防護服は襟元を締めたまま、ジッパーを開けて胸元のみ開放する
のが装備時における重要なポイントである。装着者の見本画像を、人目の無い場所で
ググって頂ければご理解いただけるであろう。普段からゆっさゆっさ、たゆんたゆんの
貯水球が吸水してぱっつんぱっつん、ばいんばいんに肥大し、ジッパー開放によって大変な
ことになっている。その中に何かをはさんだとすれば、ぷにぷにのぷるんぷるんであると予想される。
同じく植物魔物のセスキは、木の葉で要所を部分的に隠しているが実質的に全裸である。
若い学芸員がセスキの花器に興味を示したので、木の葉をはずして披露している。
フラグランス審査で優秀な成績をおさめた芳香に、学芸員はとろけるような顔になっている。
みみみ、蜜の味も知りたいです、と言って了承され、息を荒くしている。
植物の生殖器を詳細に観察している、と書くととても人前でする行為とは思えないが、
「花を見ている」を難しく言っているだけである。扇情的な要素はまったくない。
ちなみにセスキは外見は美女だが、雄株である。学芸員はそれを知らない。
なお、セスキの妻のペダレは懐妊中のため自宅で待機している。
また領民の若い娘三人が、作業を手伝っている。領主の山田に女性としての魅力をアピール
すべく、「悩殺のマイクロビキニ」、「貝殻の胸当て&貝殻の下腹当て」、「危ない水着・危険度LV76」
を着用している。それぞれオークに似た娘、ゴブリンに似た娘、ミノタウロスに似た娘の
装備である。彼女達の固有スキルによって、これらの装備には状態異常への抵抗力が低い
者に対する石化、混乱、麻痺などの付属効果が発生する。
次回「その11」 遠くの林の中では魔道士のローブを着た男が、独自に魔素収集の魔法陣を組んでいる。
傍らで銀色の髪の一糸まとわぬ美女と、同じく幼女が魔素を吸収しながら虹色の燐光を放っている。
雨が嫌いな猫娘は作業に参加せずに領館で待機している。山田の寝台に勝手に入り込んで、
高級寝台は寝心地が良いニャ、と言いながら丸くなって寝ている。
ちなみに語尾にニャをつけるのは、召喚士がそのほうがウケが良いと指導したためである。
抜け毛が敷布について掃除が大変そうである。あとでメイドのミヤゲ嬢が怒ることであろう。
猫娘の水着姿をどうして出さぬのだ!とお怒りのケモナーの方は、代わりに名作漫画
「ダ○ジョン飯」のイヅツミ嬢の画像を検索し、お着換え場面を探し出して萌えていただきたい。
こうして準備が整い、いよいよ実験が開始された。補助魔法陣が順次作動し、中央魔法陣への
魔素転送が開始された。中央魔法陣に設置された種子の容器に魔素が集積し、虹色の光芒を
放ちはじめた。時折り小さく火花が散る。
「封印呪の中和開始。進行率5割・・8割・・9割・・9割7分・・9分。術式停止!」
絶妙なタイミングで錬金術師が中和術式の停止を指示し、作業は終了した。
「魔力探知、鑑定設定にて展開・・封印消失を確認。成功しました!」
皆の歓声があがる。今夜は参加者一同で成功を祝って宴席である。
タイフーの風雨の中にもかかわらず、明るい笑い声がひびくのだった。
そして、彼らは種子が厳重に封印されていた理由を知ることになる。
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