コラム:エクソンCEOが米国務長官にふさわしい理由
Amir Handjani
2016年12月17日 14日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏は自政権の国務長官として、米石油大手エクソン・モービル(XOM.N)の会長兼最高経営責任者、レックス・ティラーソン氏を指名した。
国家安全保障に関わるポストは退役将軍たちでほぼ固めたトランプ氏だが、外交のトップには過去に政治経験のない人物を選んだ。
だが、外交政策の専門家や政界通が、そのことを理由にこの人事を批判するのは間違いだろう。
ビジネスの世界から国務長官の座に就くのは、ティラーソン氏が最初ではない。ジョージ・シュルツ氏は、建設・エンジニアリング最大手のベクテルの社長を辞して、レーガン政権の国務長官に就任した
(ただしシュルツ氏の場合は、ニクソン政権に参加していた)。
ティラーソン氏は10年以上にわたり、世界最大かつ最も収益性の高い上場石油企業のトップを務めてきた。
エクソンは50カ国以上で事業を展開しており、米国の経済力と商業的繁栄の象徴となっている。その歴史的ルーツは古く、1870年にジョン・D・ロックフェラーが設立したコングロマリットのスタンダード・オイルにさかのぼる。
世界各国の元首といえども、このエクソン・モービルのCEOであるティラーソン氏以上に各方面に顔が利き、影響力のある人物はそう多くないと言っても間違いではなかろう。
筆者は、ティラーソン氏が周囲から敬意を払われる様子を直接目撃したことがある。10年ほど前、エネルギー企業の若手幹部としてマドリードで開催された業界のカンファレンスに出席した私は、
スペインのフアン・カルロス国王によるスピーチのあいだ、列席者の大半は各々勝手なことをやっていた。
注意を向ける者もいたが、ほとんどは聴いていなかった。だが、ティラーソン氏が演壇に立つと場内は静まり、列席者は彼の一言一句に耳を傾けていたのである。
ティラーソン氏は経営者として実に豊富な経験を携えて国務省入りする。彼は、石油・ガスの採掘からロジスティクス、建設、人事、リスク管理、政府対応、
代替エネルギー開発に至るまで、あらゆる事業に関与する年商3850億ドル(約45兆5000億円)のコングロマリットを経営してきた。
企業社会とは違って成果主義ではない、往々にして非効率的で肥大した政府の官僚機構のかじ取りをしていくうえで、
結果を求める(さもなければ経営者をクビにする)株主と投資家に対応してきた経験は貴重なものになるかもしれない。
「便利な場所に石油は見つからない」という言葉があるように、ティラーソン氏がこれまで相手にすることになったのは、
世界で最も問題の多い一部国家の首脳たちだった。ロシアのプーチン大統領、ベネズエラのチャベス前大統領といった人々だ。
ティラーソン氏が彼らを相手に交渉を成功させてきたことは、プラスにこそなれ、マイナスにはならない。
プーチン氏との関係は徹底的に吟味すべきだが、ティラーソン氏の会社がロシアに巨額の投資をしているからといって、彼が米国の国益を追求する際に何かしら妥協してしまうのではないかと考えるのは短見である。