加えて、世界的に賃金は増えづらくなっている。そのため、物価の上昇圧力も高くない。それが金利の上昇を抑えている。この結果、よりリスクの高い資産に投資資金を振り向け、リターンを高めようとする投資家が増え、株価が上昇した。
 現在、成長への期待は米国のハイテク企業の業績に支えられている。特に、買収などを通して自社の経営プラットフォームに他企業のビジネスを取り込むアマゾンの成長期待が高まってきた。
加えて、ビッグデータやネットワーク技術に関する期待も高まっている。
 この結果、2009年3月にリーマンショック後の最安値を付けた米国の株式市場は7月末まで3倍以上も上昇した。経験則では、数年間で株価が数倍になるとバブルは絶頂期を迎えた可能性がある。
米国株式市場はバブルの絶頂期にあると考えるべきかもしれない。
バブルの崩壊プロセス

 
 バブルはいつまでも続かない。買うから上がる、上がるから買うという強気な相場は、どこかでピークをつける。そのあとは、急落が待ち受けている。
相場の格言には“天井三日、底百日”というものがある。これは、バブルの絶頂期に買いが買いを呼んで短期間で相場の天井=最高値が形成された後、堰を切るように相場が急落し、停滞に陥った歴史に基づいている。
 バブルの崩壊には、それを象徴するような出来事やイベントが発生していたことが多い。難しいのは、バブルの渦中にいると相場の調整を示唆する動きよりも、価格の上昇に気がとられてしまいがちであることだ。
そのため、バブルがはじける前に人よりも先に株を売ると豪語していた投資家の多くがバブル崩壊にのまれ、莫大な損失を被ってきた。
 バブル崩壊のサインとなったイベントとして、2000年9月のインテルショック(インテルが売り上げ見通しを下方修正し、世界的にハイテク銘柄が急落したこと)がある。これは、ITバブル崩壊の一因といわれている。
07年8月には、米国のサブプライム層の消費者の信用力低下を受けて、住宅ローンを裏付けとする証券化商品の価値が下落し、それに投資していたヘッジファンドの資金繰りが悪化した。
これはITバブル後の米国経済を支えた住宅バブルの崩壊を象徴する動きのひとつといわれている。