>>790
代執行の戒告、通知ともに抗告訴訟の対象たり得る。
しかし、代執行の完了後は訴えの利益を欠く。
代執行の終了後、代執行費用の徴収がまだ済んでいないため、
それをまぬかれるために戒告や代執行令書による通知を争う
についても、訴えの利益を認め得ない。

代執行の納付命令に対しては、その納付命令それ自体の瑕疵を
理由として、争訟を提起しうる。
代執行の終了後において、代執行費用の納付をまぬかれるために、
戒告や代執行令書による通知の取消しを求めることは許されない
とすると、違法な手続による代執行を受けた者に対して、その費用の
納付命令をまぬかれるための救済を与えるために,費用の納付命令
に対する争訟で、代執行の事前手続の違法をも主張することを認め
なければならない。
しかし、戒告や代執行令書による通知と、代執行費用の納付命令
とは一応別個の行為であるから、前者において違法性が存在すれば、
後者も当然に違法となるという関係にあるのではなく、納付命令が違法
となるか否かは、代執行の事前手続において存する違法性の程度に
応じて判断せられるべき。

というわけで、代執行終了後における救済の主たるものは代執行によって
蒙った損害についての賠償請求(国賠法1条)となる。

以上、広岡隆『行政代執行法』(有斐閣)