“ダービージョッキー”福永祐一誕生のほんの少し前のことだ。
競馬場にヤジはつきものとはいえ、いまだに…と思わずにはいられない痛烈なヤジを浴びたという。

「パドックで“親の七光!”って言われてね。一応、ボクは2000勝してるのに…。
そもそも“七光って何十年、効果あんねん!”って…。自分でも笑けてきましたよ」

 これが「2世」のつらさ。父親の名が偉大過ぎると、単に数字で追い抜くだけでは世間は「父を超えた」と見なさないのか、それとも絶頂期にターフを去った喪失感がそうさせるのか…。

 天才ジョッキーと呼ばれた父・福永洋一はJRA通算983勝を挙げ、GI級9勝、重賞49勝。
1970〜78年に9年連続で全国リーディングに輝いたが、79年3月の落馬事故で重度の脳挫傷を負い、引退を余儀なくされた。

 一方、「2世」福永祐一はGI・21勝、重賞128勝、武豊に次ぐ史上2番目のスピードで通算2000勝達成という「父超え」の実績を挙げながらも、
口さがないファンから“コネナガ”呼ばわりされる現実がある。それは福永家の悲願だったダービーを制した後でも、一変することはないのかも…。

「ナメるなって思いますけどね。ボクを、ではなく、この世界を。
コネだけで勝てる甘い世界じゃないのに…。
ホント、ボクのことを認めたくない人がいると思うしかないのかな」

とかく叩かれやすい男だが、心ない暴言に時にやるせない表情を見せつつも、流せる懐の深さもまた一流である。

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