ハンJいじめられっ子部
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ミサが鬱陶しそうに髪を掻き上げ、ホバーボードを飛ばしてオレのジャンボシャボン玉に近づいてくる。 「即席のウォーターボールよ。文句言わないでよ ! あたしの魔力、そんなにないんだから!」 ミサがジャンボシャボン玉の中に手を突っ込んで、オレに手を伸ばす。 「いつまで持つかわからないわよ? また落っこちたい?」と、ミサは顔をしかめて冷たく言い放つ。 自分の手を早く掴めと言わんばかりに、シャボン玉の中に突っ込んだ手の指をひらひらと動かす。 魔法が使えないオレはミサの態度に苛立ち、頭の後ろで手を組む。 オレは舌打ちしてから、一安心してため息を零し、仕方なく嫌々ミサに手を伸ばす。 オレがミサの手を掴んだ瞬間、ジャンボシャボン玉が勢いよく弾けた。 「やっと掴んだわよ。邪薩が入ったけど、まあいいわ……」 やれやれという感じで、ミサは瞼を閉じで肩を疎めて首を横に振る。 ミサは顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにオレから顔を背けた。 「べ、別にっ。ま、まあ、幼馴染だし? ネロに言われたし? それにしても、危機一髪だったわね」 ミサはオレから顔を背けたまま、額の汗を手の甲で拭う。 ミサの汗の粒が風に飛ばされて、オレの頬に張り付く。 オレは眉根を寄せてミサを睨み、俯いてため息を零す。 雲を抜け、雲の間から足元に広がる景色に息を呑んだ。 「ねえ、ネロのこと考えてるの? ネロのことなら心配ないわよ? 後で合流しようって言ってたし。それに、ネロのハイテク装備もあることだし。なにも心配することないわよ」 やっぱ、ミサはオレの幼馴染だな。オレはミサの顔を見て微笑む。 「そうか、ならいいんだ。ミサを巻き込んで悪かったな。お前、ネロと一緒に王都ガランに行くつもりだったんだろ?」 オレはミサのことはお見通しという感じで、ミサに歯を見せて笑った。 「そうよ。あんたを放って、王都ガランでネロとデートしようと思ってたのに。デート当日になって、あんたが待ち合わせ場所に来て、禁断の森に行こうとか言い出すし。ほんと信じれない。せっかくお洒落してきたのに。おかげでデートが台無しよ。まさかネロがあたしとのデートをあんたに言ったとはねぇ、迂闊だったわ」 ミサはネロが信じられないという様に、また瞼を閉じて首を横に振る。 オレは拳を握り締め、俯いて瞼を閉じて首を横に振る。 ミサはデートのこと根に持ってるのか、ミサの盛大なため息が聞こえる。 そのまま、ミサと顔を合わせるのが嫌でオレは俯いたまま。 「少しはあたしの恋に協力してくれてもいいじゃない。カイトのバカッ」 その後、気まずい空気が流れ、オレとミサは黙ったままだった。 その時、ミサのホバーボードのマフラーから空 気が抜けた様な嫌な音を立てた。 ホバーボードのファンの回転が弱くなる音が聞こえる。 「ね、燃料が切れかかってる!? こんな時に! ?」 ミサがホバーボードの上でバランスを崩すと同時に、ミサは背中のマントを開き滑空する。 ミサの足からホバーボードが離れ、オレは咄嗟 に片方の手でホバーボードを掴む。 「今度は燃料が足りねえのか。災難続きだな。にしても、このホバーボード重いぞ」 オレはホバーボードを憎たらしく見つめる。機械の塊が生意気だな。 このホバーボード、何かの役に立つかも知れないからな。 マントを広げたミサは風に任せて、オレたちはゆっくりと優雅に飛んでゆく。 ミサがため息を零すのが聞こえ、オレはミサを見上げた。 お前、ため息が多いな。そんなにネロとデートが出来なかったことが悔しいのかよ。 なんかミサに悪いことしたな。今度、ミサの恋に協力してやるか。 ミサは風で髪をなびかせて、眼下に広がる景色にうっとりして堪能していた。 「あーあ。思った以上に景色が綺麗で、この子の 燃料食っちゃったなあ。反省……ごめんね、ネロ」 おいおい。お前、ホバーボードの名前がネロとか病んでるな。聞いてて寒気がする。 オレはホバーボードでミサを殴ってやろうかと思ったがやめた。 「お前が寄り道してるせいで、オレとネロは大変だったんだからな。ちったぁ反省しやがれ」 ホバーボードを掴むオレの手が怒りと重さで震えている。 「はあ、はあ....」
みるみるミサの顔色が悪くなり、ミサの額に汗が滲む。 「ごめん、カイト。あたし、魔力を消費しちゃったみたい、 後は、お願い、ね....」 ミサは気絶して身体から力が抜け、ミサが落ちてゆく。 ホバーボードを掴んでいる手を、ホバーボードを持ち上げて脇に挟み、ミサの手を両手で掴む。 「ミサっ!?」
オレは歯を食いしばって力を入れた。 ミサのパワーグローブのおかげで、ミサの体重をそんなに感じない。 幸いにも、下に大きな川が流れているのが小さく見える。 うまくいけば助かるかもな。川に落ちたとしても、川の深さがわからねえ。 オレは脇に挟んだホバーボードに目を落とし、ミサを掴む手に力を入れる。 ウォーターボールの魔力がまだ効いているのか、オレの身体は浮いていた。 ミサのパワーグローブから、ミサの魔力が伝わってくるのかもな。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています