「旅人よ我に帰れ」

「約束したよね。ずっと一緒だって」 私は微笑む。全く同じタイミングで、
ミカも微笑んだ。まるで鏡に映したように・・・・・・・・・。

瓜二つな私たちは時折両親でさえ見分けがつかないくらいよく似ている。
昔は入れ替わってよくいたずらをした。今でも時折することがある。
「生まれてくる前から、ずっと一緒にいたの。だから、これからもずっと一緒よ。
そうでしょ」「そうよ、だって約束したじゃない」

お互いが同じタイミングで頷く。そう約束した。世界でたった一人きりになるような
悪夢の果て、私たちはたった二人、寄り添い合った。どんなに怖くても、ミカと一緒
なら怖くなかった。ミカに向けて手を伸ばし、ミカもまた私に向けて手を伸ばす。

触れ合った指先。冷たくて硬い。「−−−リカ」突然聞こえた声に振り返る。
視線の先にお母さんが悲痛な面持ちで立ち尽くしていた。
その目は間違いなく私を見ていた。どうして?何も悪いことしていない。

どうして?お母さん。私はただミカとずっと一緒にいたいだけ。ただそれだけなのに、どうして?
「いい加減にしなさい−−−ミカはもう、いないのよ。生まれてくる前に亡くなったの」

足元で、何かが割れるような音がした。

−−− ここで目が覚めた ―――――――――

また不思議な夢を見た。

私には、私じゃない誰かがいる。でも、私は私一人しかいない。でも、私を守る何かがいた。
私は生まれてくる前、一卵性双生児だったのだ。姉のミカはへその緒が首に三重に巻き付いて
絡まったのが原因で死産。私だけが生きて生まれて来たのだった。

あなたのぬくもりをどこかに感じながら、探し求めながら・・・
          ――――――今日も生きている

「帰ってきたら結婚しよう」そう言って彼は搭乗ゲートへ歩いて行った。
あれから3か月何の音沙汰もない.........

いつものようにマンションのエレベーターに乗る。6階に着く。ドアが開く。
エレベーターを降りると信じられない光景が目に飛び込んで来た。

「良、良介?」と私。「鍵をなくしたんだ」と彼がそう言った。
私は彼めがけて駆け出した。
「帰って来たよ。結婚しょう!」「......うん!」