小説書いたりる『母と母』
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板のことをあまり理解してませんでした。
では始めます。
私は今夫と仲睦まじいとまではいかないが
不自由なく暮らしている。
喧嘩はたまにするが夫は私の手料理を食べたらそんな気持ちもなくなると言い、自然と喧嘩が解消する。
私の手料理は自他共に認めるぐらい上手いであろう。料理の本は読んだことないし習い事をやっていたわけでもない。
それにはある理由があった それは14年ぐらい前になるだろう
私が高1の時である
私は当時母と二人暮らしをしていた。
女手一つで育ててくれる母を見て感謝を忘れたことはない。
でも喧嘩はまれにする。
本当に他愛もないが、こうもしないとやっていけないだろう。
今年からバイトも始めたし少しずつ母と一緒にいる時間が減っている。
でも母は私が帰ってくるまで食事を摂らず待ってくれたり、私は2月に一度のペースで理髪店に通うが母は自分で髪を切っている。
もちろん髪を切ることに関しては完全に素人で切りすぎていつもロングヘアーの母がザビエルみたいなトンスラヘアーになったこともある。 母は家事をするときは決まって『情熱の赤いバラ♪』と歌っている。あたしンちにでも影響されたのだろうか。
そんな母だが感情的になることはあるが涙は見た覚えがない。
私がどんな罵声を母に浴びせても母の骨は折れることはない。
おそらく母に勝てる人間などこの世にいないだろう。 運動こそできなくても貧乏でも
勉強はそこそこできると思う
実際に今通っている高校も県内2番目の学力を誇っている。
勉強に関しては家にはテレビがあるがゲームは昔のニンテンドー64しかないため自然に自ずと勉強ばかりやっていたため学力が高くなったと思われる。
高校は楽しく友達も多いと思う。
こんな私だからこそ少しのことでも楽しめるのだろうか
そう思うと母には頭が上がらない。
貧乏だからっていじめられたことがない。
というのも前述の通り母は全てを私に注いでくれて、見た目は完全にふつうのJKいやもしかすると少し裕福な家庭で育ったJKと思われていたかもしれない。
そういえばもう少しで母の日だから今年こそは何かしないとな、、
今まで何かしようと思っていたがどこか気恥ずかしくて何もできずにいた。
母は母の日について異国の行事と言っていた。
この言葉から母は私から無理してまでプレゼントをもらおうとしないし逆に拒んでいるように思える。 そんなことを考えているうちに寝ていたようだ。
今日は休みだしプレゼントでも買おうと思い
衣服を見にまとい、いざイオンへ!
プレゼントは何がいいだろうか、、
母は普段から欲しいものを口に出したりはしない。
ただ行動には顕著に現れており、いつもカバン売り場の前で足を止めている。
カバンを見る時の母の顔はまるで旅の帰りの電車の中にいるようであった。
嬉しそうな顔の中にどこか寂しさもある。
きっとこれを買いたくても買えないという気持ちがあるのだろう。
そうこうしているうちに目的のカバン売り場に着いた。 一目散にそのカバンへ向かった
前に立ち目を開けると函館の夜景に負けず劣らずの程よい黒の色合い
ちょうどノートが入る絶妙な大きさ
艶加減、利便性どれをとってもこのカバンに敵うものはないだろう。
ふと値段が目を横切る
"25000"
この値段を見て安いと思ってしまった
今自分が身につけているものを合わせてもこんなにしないのに、、
でも財布には30000円入れていたので全然許容範囲内である。
こんな安いお金で母を幸せにできると思うと申し訳ない気持ちがある いつも母はそこら辺の店の紙袋やビニール袋をカバン代わりに使っている
今の私の貯金から見ればこのカバンは高いが今までの代償にしては安い
迷わずカバンを手に取りレジに持っていく
ゲーム機すら自分で買ったことのない私にとって万札を会計に使うのは初めてのことである。
カバンを受け取り店を出ていく。
自分でもわかるぐらいぎこちなく歩いていた
どのようにして渡すのかを考えながら家に帰った。
母の日は明日なので見つからないようにそっと机の引き出しに隠した
いつもどおり夕飯を食べ、風呂に入り、布団に入った。
店を出た後からずっと母の事が脳裏に浮かぶ。
横になると心臓の音がよく聞こえる。
照れ臭さからの緊張で目も潰れなかった。 ふと横になりながら体を回転させ母の方を見た。
すっかり疲れて寝ていた。
いびきもかかずに静かに寝ていてとても愛らしく感じた。
するとなぜか目が潤む、、
自分を心の中でこれはあくびだ!と騙しながら寝た。 朝起きるといつも通り母が起きていた
少し髪をくしゃっとさせながら私の朝食を作ってくれている。
とは言っても朝食は食パン一枚と牛乳
食べながらいつ渡そうかタイミングを考えていた。
テレビを見て過ごし昼飯も食べて、1時になった ごめんなさい見てくれている人がいるとは、これから寝る前に報告をします。
では再開します。
昼飯はあまり喉を通らなかった
自分でもよく分かる、私は今とてつもない何かに怯えているのだと。
音楽を聴いて心を落ち着かせようと思った。
ラジカセにCDをセットして曲をかけた。
曲はMr.ChildrenのHERO。
私は昔からMr.Childrenが好きだ
特にHEROという曲の『でもヒーローになりたいただ一人君にとっての』という歌詞が好きだ
ただ今日聞いたHEROは何かが違う、、
この曲に少なからず親しみを感じた。
曲が終わった時に流れる曲。そして涙。
心の隙間が埋まった感覚がした、、
勇気が湧いてきた気がした、、
今すぐにこの感情が落ち着く前に感謝をしたい。
プレゼントのバッグを手に取り部屋を出る 階段を一段一段ゆっくりと降りる。
降り終わった時にもっと階段が長ければと思った。
すぐさまドアノブに手をやり開けた。
母はテレビを見ていてこちらに振り向かない。
臆病者の私は母からこちらを見てくれるように足音をわざと大きく立てた。
少し不満げな顔をしてこちらを振り向いた母。
母の口が開きそうになった途端、私の口から声が漏れた。 私『あ…あの』
母が珍物を見るまでこちらを見ている
私『あの、、これ』
そっとバッグを差し出す
母は戸惑いながらバッグを受け取り私に抱きついて母の部屋に向かっていった。
結局感謝の言葉は言えなかったという後悔がこみ上げてきた。もう16年も一緒にいるんだから私には分かる。母は本当に喜んでいると。
母は人前では絶対に泣かない。
やはり母としての威厳があるだろう。
でもハグをした時のあの暖かみからして分かる。
少しして母が戻ってきた。
目が赤らめていた。
バッグは部屋に置いてきたのだろう。
母はそのままソファに座りテレビを見たため
気まずくなり私は自分の部屋に戻った。 私は何も考えず横になった。
窓をふと見るともう夕方だった。
どうやら寝ていたようだ。
いつの間にやら体に布団がかかっていた。
やはり、母には敵わないなと改めて思った。
一階に降りると料理を作っている母がいた。
背中がとてもたくましく見えた。
母が振り返り私に『もうすぐご飯だよ』と言った。
まさか第一声が母からだとは思ってもいなかった私は頷いてソファに座りテレビを見た。
しばらくしてご飯ができたので椅子に座り箸を取り食事をする。
食事中母と目を合わせる事ができずにずっとテレビを見ていた。
食べ終わり去り際にそっと『ご馳走さま』と言い部屋に戻った 明日は学校だから宿題をやり準備をして早く寝た。
目覚まし時計の音が部屋中に鳴り響く。
目覚ましを手で止め体を起こした。
自分一人で起きるのは何年振りだろうか、
思いつきで母に朝食を作ってあげようと思い
一階に降りドアノブに手を当てた。
微かに『ジ〜〜』という音が聞こえる。
見なくても分かるトースターの音だ。
また母には一本取られた。
なんかこのままだと情けないので二階に戻って
布団に入り横になる。
気づいたら母に揺さぶられていた
時計を見ると家を出る20分前。
慌ててご飯を食べて、着替えて家を出た。 学校にはギリギリ間に合った。
学校内では真面目な私がこんなにギリギリに来るのは珍しいと少しばかり先生にいじられたりもした。
そんな事を交えつつ授業を終え、帰りのSTも終わり家に直行で帰った。
母は遅くまで働いているため帰っても誰もいない。
今は4時だ。母は遅くても6時ぐらいには帰る。
なぜか少しだけ待ち望んでいる自分がいる。
なぜだろう。
なんとなく勉強をして時間を潰した。
時計を見ると5時半だった。
ごめんなさい少しばかり休憩させていただきます。11時ぐらいに戻ってきます。 やることは特にないのでお菓子を片手にテレビを見た。
夕方のためニュースしかやっておらずあまり面白くはなかった。
そうこうしているうちに早くも6時
母は一向に帰ってこない。
何故だか少し不安になり背筋を伸ばす。
呼吸を意識的にやり心を落ち着かせる。
なんてことをして15分が経過
見た目は落ち着いてるようだが心の中では動揺している。
なんてしていたら外に車が止まる音が
やっぱり思い込みだったかと思いテレビをつけてさっきからずっと見てた風にする。
っとピンポンとチャイムがなる
ドアを開けると『宅配便です』
落ち着かなかったがとりあえず荷物を受け取り玄関に置いた。
この出来事によってさらに心に負担がかかる。
時計を見ると6時25分だ。
すると外に車が止まる音が
間違いないと思いテレビを凝視しておく
ドアの鍵がガチャっと開いた 母の声がする。
その声を聞いた途端テレビを見ている私の目に異物でも入ったのか少し潤んでいた。
目はテレビの方をずっと見ているが
頭の中には嬉しさ以外の感情は何もなかった。
なんて事もありつつ1ヶ月が経過した、、 この頃帰りが遅いがこんなにも遅いことはない
お菓子はもうないし
飯も今あるものではロクなものも作れない
今はただテレビの音と雨の音を聞く以外にする事がない。
7時半だが母は帰ってくる気配すらない
電話は何回かかけたが一回も出なかった。
もしかすると、もしかすると、もしかすると…
すると突然電話が部屋中に鳴り響く
すっと受話器に手を置き呼吸を整え手に取る。
すみません今日はもう寝ます 私『もしもし』
?『はい、もしもし。少々お時間よろしいでしょうか』
そこには聞き覚えのない声がした
背筋がピンとした
小刻みに震えながら
私『はい、、』と言った
?『落ち着いて聞いてください。私、愛知県警のものですが。あなたのお母様のことでお電話させていただきました。』
ここで全てを悟ったが何も考えられなかった。
寧ろ考えたくなかった。
警察『非常に申し上げ辛いのですが、今日の夕方6時ごろお母様は…』
警察の声がつっかえる
警察『…お母様は、交通事故にあってしまいました。』
私は言葉を失ってしまった
口の中には唾が溜まるだけ
警察『ただ、お母様は大事には至らず意識はあります。』
ホッとした、ただただ。。 警察『詳しい話は直接あってしたいので愛知病院まで来てください。』
私は落ち着きを取り戻したが、まだ声が出てこない。
警察『では、あと先ずはこれで…』
ツーツーツーツー
そっと受話器を置いた。 この長い会話の中で私が覚えていることは
母が無事だということ、そして愛知病院にいるということだけだ。
とりあえず愛知病院に向かおう。
愛知病院はここから自転車で行ける。
すぐさま自転車の鍵を取り
家を出た。
家の鍵も閉めずに何も考えずほとんど無意識のまま病院へと向かった。
自転車を止め受付の人に母の名前を伝える。
受付の人が誘導をしてくれた。
ただ今は手術中ということで椅子に座って待っていてと言われた。
何も考えずただただ無事を祈る。
よくテレビで10時間にも及ぶ手術と言ってるけどよくあれだけ家族は待てるな、と思っていたら手術室のランプが消灯した。
ふと時計を見るともう4時間も待っていたそうだ。
ドアが一気に開き担架が運ばれるのが見える。
横たわっている母の姿だ。
とても愛らしい。
私は自然に泣いていた、気付かないうちに。
母は目を閉じたまま一寸も動かない。
医者が私にこう言った。
医者『手術は一応成功して一命は取り留めました。ただ、今まで通り生活できるかはわかりません。寝たきりの生活になる可能性も十分にあります。』 多分私は医者の話など聞いていなかったのかもしれない、というより聞きたくなかったのだろう。
担架のまま入院室に運ばれた。
医者『とりあえず、学校に連絡を入れて一週間ほど休みをもらってください。そして一週間ほど母の横に寄り添ってあげてください。』
私は久しぶり声を出した
私『はい…』
医者が部屋を出て二人きりになる。
時計を見るともう夜中の3時を回っていた。
一先ず今日はもう寝よう。
行儀悪くソファに横になって寝転がりそのまま眠りについた。 勉強で忙しいのでだいぶペースがゆっくりになるのでお願いします。
あと今日はもう寝ます 朝起きるとそこには隆文さんがいた
隆文さんとは会うのは4年ぶりだ
どうやって母のことを知ったかはわからないが
とても心配をしている。
すると起きた私に気づいて
隆文『おはよう』と言ってきたので私も同じく返した。
少し隆文さんとは距離があるように感じる。
どんなに遠くにいても近くにいても
その距離感のままであるように感じる ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています