ー君は現代のカルチャー間の論争による対立によって生まれたアメリカやイギリス、欧州の分断を癒す方法があると思う?

「何が起こったかっていうと、世界的に個人主義化が進んだからなんだよ」と、彼は精神分析医モードに切り替わったように話し始めた。
「そう例えば、かつては家族がリビング・ルームで一緒に座ってテレビを見ることで、
一方的に同じ情報を得ていた。そして、テレビを見ながら、もしくは見た後に、その番組の内容について話したりしてさ。
そこでは、メディアを消費することによってコミュニティが形成されていたんだ。

でも、今はメディアの消費の仕方が変わって同じ一本道的な構造がなくなり、かつて生まれていたコミュニティもなくなった。
より個人主義的な構造になっただけでなく、有害な影響を与えるものになり、ピンポイントで個人だけに向けられるものになったんだ。
なぜなら、情報はアルゴリズムによって管理されているからね。
かつてはテレビを見たからといって、見ている人が広告にどう反応したかをテレビが監視しているなんてことはなかった。


人々はより誰かと繋がっているような見せかけだけの感覚を与えられてきた。
で、実際に何が起こったかというと、みんながより孤立してしまったのさ。そういう繋がりは巧みに仕掛けられたトリックなんだ。
イギリスに関して言うと、俺は右翼の出鱈目にも左翼の無気力さにも、両方にうんざりしてる。
この国の労働党は、鉄道労働者や港湾労働者のストライキを支持することすらできやしない連中だしさ。
だから今の俺は、政治的な意味でどこにも居場所がないホームレスって感じだ」