金を海外から密輸しようとして摘発される事件が相次いでいる。6月15日には、韓国から成田空港に金塊約33キロ(約1億5千万円相当)を密輸しようとしたとして、消費税法違反の疑いで男女10人が逮捕された。同月には佐賀県でも小型船に載せて金塊約200キロを密輸しようとした中国人が逮捕された。愛知では「運び役」の主婦らが逮捕されている。消費税が掛らない国で購入した金を密輸して日本で売り抜け、消費税分の“利ざや”を稼ごうとする手口だ。成田空港を舞台にした事件を追った。

 6月15日に千葉県警などが逮捕した男女10人の容疑者らは、主犯格とみられている早川和男容疑者(40)=別の詐欺罪で服役中=を頂点に、各自が役割分担をしていた。

 早川容疑者は、テレビにも数多く出演し、ホストクラブで計1千万円以上を散在していたというタレント女医による美容クリニックを舞台とした診療報酬不正請求事件にも関与していた。この事件で早川容疑者は、不正請求の名義人集めを取り仕切るなど、犯行の指南役だったとされた。今回の金塊密輸事件で早川容疑者は、犯行グループ全体を指揮していたとみられている。

《金の密輸事件は、平成26年4月の消費税増税をきっかけに急速に増えている。財務省の統計によると、27年7月〜28年6月の間、税関による罰金の通告や捜査機関への刑事告発といった処分件数は、前年比117件増の294件で、脱税額は同約3億7千万円増の約6億700万円。

 国内で金を輸入する場合、税関に申告した上で消費税を納める義務がある。これに対し、消費税のかからない香港などで金を購入し、密輸して消費税込みで国内で売り渡せば、消費税の8%分の利ざやを稼ぐことができる。消費税増税前までは処分件数も年数件から十数件、脱税額も数千万円でほぼ推移していたものが、近年は類似した事件が急増。背景にはこうした事情がある》

 早川容疑者を中心に、金塊を安く購入できる香港まで買い付けに行き韓国まで運ぶ役、韓国・仁川空港で金塊を運び役に渡す役、成田空港に到着した運び役から金を回収する役、回収した金を国内の買い取り業者に売却する役−。犯行グループは見事な分業体制を敷いていた。

 運び役は金を持ち逃げしないように、運び役の写真をとり、通信アプリのLINEを使用して、受け取り役に画像を送信。持ち逃げの防止や無関係の旅行客に誤って接触しないように細心の注意も払っていた。

 運び役もメンバーの1人が知人経由でLINEを使ったり、口コミで旅行参加者の形で募集。「無料で2泊3日の韓国旅行をしませんか」などの誘い文句で、ホテル代や往復航空券の代金に加え、5万円の報酬を支払うと約束していた。


続きます。
http://www.sankei.com/premium/news/170630/prm1706300001-n1.html
2017.6.30 08:00