トランプ米大統領は30日に韓国の文(ムン)在寅(ジェイン)大統領と初の首脳会談を開き、北朝鮮の核・ミサイル問題や最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備などを協議する。

 アジアでは、中国が軍事力を急拡大させており、不安定化する同地域の安全保障環境について中谷元(げん)前防衛相に聞いた。(坂本一之)

 −−北の弾道ミサイル開発は今後も続くのか

 「北は、数多くの種類のミサイルを飛ばし、羽を付けて制御するなどさまざまな試みをしている。目標は大陸間弾道ミサイル(ICBM)で、米国に届くまで技術向上を図っている」

 「すでに日本は弾道ミサイルの射程内に入っている。いつ、どこで打つか。どこに落ちるのかも予測ができないような状況で、脅威の度合いは深刻になってきた」

 −−必要な対応は

 「経済制裁を含めてあらゆる可能性を通じて核・ミサイル開発をさせないようにしていくことだ。(打たせない)抑止力が大事だ。万が一、飛来した場合は、迎撃や阻止も含めて日米で最大の対処を行う」

 −−防衛装備の拡充は

 「イージス艦の迎撃システムの地上配備型である『イージス・アショア』やTHAADの導入が考えられる。米軍がTHAADを持ってきてもいい」

 −−中国の軍備増強による地域への影響は

 「中国の軍事費は驚異的に増えている。今や年20兆円近い資金を使って新型駆逐艦や潜水艦、ステルス機、ミサイルなどを増強し能力を上げている。アジアの安全保障バランスは相当崩れている。早ければ10年後ぐらいには中国が世界一の軍事強国になる」

 −−中国は南シナ海で造成した人工島に滑走路など軍施設を整備している

 「(同海周辺の)フィリピンやマレーシアはレーダーや戦闘機などしっかりした防空能力がなく、中国は次々と岩礁を埋め立てて軍事要塞化している。南シナ海は制空権も含めて中国の支配下になりつつある」

 −−中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクロード経済圏構想「一帯一路」を進めている

 「一帯一路は壮大な経済権益を作ろうとしている。陸上と海上の交通路を押さえ、ネットワーク化する。AIIBでは支援を通じ影響力を強める。バランス・オブ・パワー(勢力均衡)が変化し、各国との摩擦が増えるのではないか。国際秩序が中国の拡大によって安定性を欠くことを心配している」

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インタビューに答える中谷元(げん)前防衛相=6月21日午後、議員会館