世界的に活躍するバイオリニストの五嶋龍氏(29)が大学の交響楽団と8〜9月に全国4カ所で、チャリティーコンサート「プロジェクトR 拉致被害者を忘れない」を開く。拉致問題への若い世代の意識を高め、風化させないことを目指した企画だが、多くの大学が「政治色が強い」として共演を見合わせたという。小泉純一郎元首相の訪朝から15年たち、世論の拉致問題への関心は残念ながら薄れつつある。(田北真樹子)

 昨年末、五嶋氏はフェイスブックで共演を呼びかけた。約40校が関心を示し、2月の打ち合わせには18校が集まった。ところが、コンサートが拉致問題の啓発目的だと伝えると、ほとんどの学校が手を引いた。

 「政治色が強いからやりたくない」「怖い」などが理由だったという。日本人の拉致は政治的立場とは無関係な問題であるにもかかわらずだ。

 最終的に関西学院大学と宮城教育大学、大阪大学の各交響楽団のほか、全国の医療系大学の学生からなる「交響楽団はやぶさ」との共演が決まった。それでも、ある大学のOBらからは「拉致問題に関わって大丈夫か」と懸念する声があるという。

大学の楽団との共演は五嶋氏の発案だ。米国生まれの五嶋氏は、拉致被害者の家族を思い、涙する母・節さんの姿を見て育った。「互いに生死さえわからぬ音信不通の地獄に置かれ続けている家族の痛みは、僕には想像の域を越える」と話す。プロジェクトの「R」は「拉致」「リメンバー」、そして自身の名前である「龍」から取った。

 共演する大学の交響楽団には、コンサートを後援する政府の拉致問題対策本部の若手職員が、被害者家族の声を収めた映画上映や拉致問題の経緯について講義している。学生らは「衝撃を受けた」と話しているという。


http://www.sankei.com/world/news/170714/wor1707140008-n1.html
2017.7.14 07:00