台湾の馬英九前総統の主な発言は以下の通り。

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 仲裁裁判所の裁定は「欠席裁判」だ。われわれは参加していない。「中華民国国際法学会」が意見書を提出し、出廷して説明しようとしたが拒否された。

 太平島は小さな島で訪問者は少なく、誤解が多い。太平島で湧く水質は非常に良く、200人近くが居住し医療施設もある。日本時代は工場もあった。

 裁定は、国連海洋法条約121条3項が定める島の定義「人間の居住」について「政府職員を含まない」としたが、これは厳格すぎ、条文の本来の意味を変えている。太平島は岩ではなく島だ。裁定の手続きは非常に不公平で、考え方も誤りだ。

 私は総統の時にフィリピンの主張に反対した。裁定が出た際の民主進歩党の総統も「受け入れない」としており、私と完全に同じだ。裁定は41カ国が支持し、58カ国が反対だ。1年たち、東南アジア諸国も重要な会議で取り上げない。

 私は2015年に「南シナ海平和イニシアチブ」を提起した。主権は分割できないが資源は分け合える。北海油田の紛争を解決した方式が参考になる。平和に敗者はなく戦争に勝者はない。米国は資源ではなく航行・飛行の自由に関心がある。公海の自由の重要な要素であり、大陸(中国)もわれわれも賛成だ。

 埋め立ては領土を生まない。国際法上、人工建造物は領海を有さず、500メートルの安全区域しか持てない。中共は7カ所を埋め立てているが、3カ所は岩礁で、4カ所は(領海を構成しない)低潮高地だ。ミスチーフ(美済)礁は2300倍にもなっており、やり過ぎだ。この行為で得られる領土は非常に限られているか、一部は全くない。中共は批准した国連海洋法条約を順守すべきだ。滑走路建設に関する国際法の規定はないが、(地域の)安全に影響を及ぼしかねず、将来の運用を注視する必要がある。

 米トランプ政権は(航行の自由に関する)従来の主張を放棄していないが、米艦艇の往来は以前ほど多くない。北朝鮮情勢が解決するまで南シナ海で大きな動きはないだろう。現在の情勢は02年に「南シナ海行動宣言」を採択したときとは違う。15年前とは中共の影響力も米国の状況も異なる。中共が東南アジア諸国連合(ASEAN)の同意を得て「南シナ海行動規範」を策定すれば、米国は支持するだろう。米国は「一帯一路」にもアジアインフラ投資銀行にも反対したが、後から賛成した。

 沖ノ鳥島を私たちは「沖ノ鳥」と呼ぶ。日本の領土であることを否定したことはない。だが9平方メートルは小さすぎ「人間の居住」は不可能。200カイリの排他的経済水域(EEZ)は日本の本土より大きく不公平だ。

 (台湾が主張する)公海で漁民が逮捕された上、服を脱がされ、台湾の民衆は激怒した。日本と戦争するつもりはなく、魚を捕りたいだけだ。私は「反日派」ではないが、日本はもう少し繊細なやり方をすべきだ。(台北 田中靖人)


http://www.sankei.com/world/news/170714/wor1707140010-n1.html
2017.7.14 07:16