日米首脳の電話会談で、トランプ大統領は中国の対北朝鮮政策に失望感を強める中、再び安倍首相に強い信頼を寄せる姿勢を示した。米政府は北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)開発に危機感を強めており、圧力強化で足並みをそろえる日本の価値を再確認したといえる。

 「あなたが言った通りになった」。トランプ氏は首相にこう語りかけた。首相が過去に「北朝鮮の核・ミサイル開発は日本だけではなく、米国にとっても脅威となりうる」と警告したことを評価したものだ。

 首相は金正日(キム・ジョンイル)前政権と金正恩(ジョンウン)政権の違いについて「金正日総書記時代は対話を引き出そうとしていたが、今は軍事開発に進んでしまっている」との見解も示した。

 過去の経緯について意見を求めたトランプ氏に応じたもので、同席者は「いつもより突っ込んだやりとり」と受け止めた。

 両首脳は2月の初会談で蜜月ぶりを世界に示したが、トランプ氏は徐々に首相と距離を置く姿勢を取った。5月のイタリアでの会談では日本が抱える軍事上の制約にいらだちを見せ、7月に20カ国・地域(G20)首脳会議が開かれたドイツ・ハンブルクでは会談の開催すら危ぶまれた。

 だが、中国はトランプ氏が期待したほど対北朝鮮圧力を強めておらず、北朝鮮のICBM開発は進んでいる。両首脳は31日の電話会談で、国連安全保障理事会での決議に十分な効力がないとの認識でも一致するなど足並みをそろえた。

 それでも、日米に不安要素がないわけではない。両首脳は2月の会談以降、繰り返し「防衛態勢の強化」を確認している。日本が主体的な役割強化に乗り出さなければ、トランプ氏の対日観が悪化する危険性もはらんでいる。

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【北ミサイル】対北制裁、あと何ができる 対象拡大、中国政府に説明も

 安倍晋三首相とトランプ米大統領が31日の電話会談で、北朝鮮に対し「さらなる行動」としてこれまで以上に圧力を強化する方針を確認した。日本も具体的な対北圧力のあり方が問われていく。だが、日本が新たにできることとなると限定的との見方が強い。

 日本が今後取りうる制裁は、米政府と歩調を合わせた対応で、中国など第三国企業への「セカンダリー・サンクション(二次的制裁)」の対象拡大だ。政府は7月28日に米国が資産凍結した中国企業2団体を制裁対象に加え、米国と足並みをそろえたが、こうした対応は増えるとみられる。

 このほか、自民党の「北朝鮮による拉致問題対策本部」は4月、訪朝後の日本再入国を禁止する朝鮮総連幹部の対象に、中央委員会委員を追加することなどを安倍首相に提言した。北朝鮮幹部・企業などに対する資産凍結の実施なども盛り込んだ。

 米側も日本側に朝鮮総連について問題提起しているというが、日本側の対応は鈍い。

 一方、国連関係者は「中国も賛成した国連安保理決議を最大現活用すべきだ」として、日本が効果的な制裁の在り方について中国と協議する場を設けることを提案する。

 ただ、日本は国連安全保障理事会による制裁決議さえ完全に履行できていない状況だ。第三国を経由した北朝鮮関係船舶の貨物検査など対応できていないことはまだある。外交筋は「日本はまず、抜け穴の多い現行の制裁を厳格に履行することを優先すべきだ」と指摘する。

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官邸に入る安倍晋三首相=31日午前、首相官邸(宮崎瑞穂撮影)
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米トランプ大統領との日米電話首脳会議を終え、取材に応じる安倍晋三首相=31日午前、首相官邸(宮崎瑞穂撮影)