K-POPのトップアーティストBIGBANG(ビッグバン)が所属する大手事務所がYG ENTERTAINMENT(以下、YG)だ。BIGBANGの弟分である男性グループのWINNER(ウィナー)、iKON(アイコン)が成長する一方、この夏には新人女性グループのBLACKPINK(ブラックピンク)が日本デビュー。日本市場での勢力拡大をめざしている。

YGが強化を図る方向は3つ。「ライフスタイル」「大人世代」「息の長い活動」だ。YG ENTERTAINMENT JAPANの代表、渡邉喜美氏に、今後の戦略について聞いた。

2016年以降、日本国内でコンサートを開いた韓国グループの公演動員数を合算してみると(17年4月末現在)、1位のBIGBANGをはじめ、3位のiKON、9位のWINNERと、YG所属のアーティストがトップ10に3組ランクイン。同社の勢いが見てとれる。

さらに17年の夏には、4人組の新人女性グループ、BLACKPINKが日本にお目見え。7月20日に初披露となるショーケースライブを日本武道館で開催する。約1万席のチケットには申し込みが殺到。武道館で公演を1週間続けられるほどの応募数だったようだ。

BLACKPINKは韓国で16年8月にデビューした。

YGが得意とするヒップホップやEDM系の音楽が特徴で、韓国でのデビューデジタルシングル『SQUARE ONE』の収録曲は、韓国の各テレビ局の音楽番組で1位を獲得しただけでなく、14カ国のiTunesで1位、中国の音楽配信サービス『QQミュージック』で週間チャート1位と、海外でも話題。

近い将来に、公演動員数トップ10にYGアーティストの4番目として加わるかもしれない。

■アパレルやコスメのブランドを展開

YGは、16年に3200億ウォン超(300億円以上)を世界で売り上げたという。その人気筆頭株のBIGBANGは、15〜16年の日本ドームツアーで累計91万1000人を動員、海外アーティストとして史上最大級の来日ツアーとなった。しかし、メンバーの兵役により、現在は4人で活動を行っている。

一方、16年の日本初ツアー(全国5都市14公演)に14万6000人を動員し、17年5月から初のドームツアー(京セラドーム大阪、メットライフドーム)を実施したiKONや、16年に4都市9公演で3万6000人を動員したWINNERと、「BIGBANGの弟」も成長している。

こう見ると、順調そのもののYGだが、渡邉氏は満足していない。「ライブ以外にもYGブランドを通して、皆さんの人生に彩りを与えたい」と考えているからだ。それを実現するため、YGブランドが強化していきたいキーワードは3つある。「ライフスタイル」「大人世代」「息の長い活動」だ。順に見ていこう。

まず、「ライフスタイル」を訴求することで、YGブランドはK‐POPファン以外の層を取り込んでいる。音楽関係者のみならず、ファッション業界やクリエイター、文化人など、流行を発信するトレンドセッターにYGのファンは多い。

「アーティストに会いたい、というだけでなく、彼らと同じライフスタイルを共感したいという動きは、他社にないYGならではの現象です。そこでYGのアパレルブランド『NONAGON』や、コスメブランド『moonshot』が生まれました。これからも新たな事業を展開していくつもりです」

次に、「大人世代」に向けては、年齢を問わずYGの音楽を楽しめるように、幅広いアーティスト展開を考えている。「BIGBANGの遺伝子を受け継ぐ」のが7人組の後輩iKON。やんちゃでヒップホップマインドを前面に打ち出し、YGの王道を歩んでいる。一方、「私のえこひいきとファンにやゆされるほど日本展開にこだわっている」と語るのがWINNERだ。

それぞれのグループの成り立ちを見ると、ポストBIGBANGを発掘するためにYGが自社の練習生向けに企画したサバイバルプロジェクトを勝ち抜いてデビューしたのがWINNER。それに負けたメンバーから派生して、後にデビューしたのがiKONだ。ところが現在は、観客動員でiKONがWINNERを上回る逆転現象が起こっている。

しかし「その現状は織り込み済みで、あえてそうしている」と意に介さない。

渡邉氏によると、その理由はこうだ。グルーブ感を大切にした、みんなで盛り上がれるYGサウンドが本流としてあり、iKONはそれができるグループ。そして大きな人気を得ている。

https://style.nikkei.com/article/DGXMZO19053090Q7A720C1000000?channel=DF280120166614

>>2以降に続く)