改造内閣で外相に抜てきされた河野太郎氏に対し、政府内で不安と期待が交錯している。歯に衣(きぬ)着せぬ発言が持ち味の河野氏は、外務省の対外援助の管理がずさんだとして「害務省」と厳しく批判してきた経緯がある。

 一方、父の河野洋平元衆院議長がハト派の代表格だったことから中国、韓国は新外相に好意的。政府内では対日姿勢の軟化を引き出せるとの見方も出ている。

 河野氏はブログなどで、時の政治課題について積極的に発信してきた。外務省にもたびたび矛先を向け「ODA(政府開発援助)は国民から預かったお金だという認識がまるでない」と非難。

 無駄遣いがあるとして日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)がつくる「日本アセアンセンター」の廃止も主張しており、外務省関係者は「かき回される」と懸念する。

 河野氏が「脱原発」を持論にしていることも、政府には不安材料だ。政府は来年夏に満期を迎える日米原子力協定を延長する方針。

 河野氏は3日の就任会見で「協定のあり方を含め考えていく」と述べるにとどめたが、外務省幹部は「協定の行方は予断できない」と話す。

 河野氏は就任会見で、閣僚としての政治スタイルについて「議論は遠慮なくやるが、政府方針が決まったらその遂行に全力で当たる」と説明。

 翌4日は同省職員を前に「やっていることがおかしいと思ったら遠慮なく言ってほしい」と柔軟な姿勢も示した。自らの見解は示しつつ、無用の混乱は避けたい考えとみられる。

 対日関係改善へ動きだした中韓からは、前向きな受け止めが出ている。洋平氏は官房長官時代、慰安婦問題をめぐりおわびと反省を示した談話を発表した。中国要人とのパイプもある。

 両国のメディアは「洋平氏の長男」と好意的に伝えており、外務省幹部は「人間関係を大事にする中韓にはいいメッセージになった」と指摘した。

 河野氏はASEAN関連外相会議に出席するため6日からマニラを訪問。現地で中韓との個別会談を調整している。

 外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の8月中旬開催も模索。核・ミサイル開発を加速する北朝鮮対応を中心に早速手腕を試されることになる。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017080401153&;g=pol