【釜山・竹次稔】韓国・釜山の日本総領事として6月末に着任した道上尚史(みちがみ・ひさし)氏が西日本新聞のインタビューに応じた。

 釜山総領事館前に設置された、従軍慰安婦問題を象徴する少女像について「多くの日本人が韓国政府や釜山市の対応に失望していることを伝えていく」と述べ、引き続き関係機関に撤去を求める考えを示した。

 道上氏が韓国を含むメディアの取材に応じるのは初めて。ソウルの日本大使館の総括公使などを歴任し、韓国勤務は4度目。日韓外交に長く携わってきた。着任後は、韓国の関係者と少女像問題について意見を交わしてきたという。

 韓国側からは「知人の家の前に無礼なものを作っておきながら、気にするな、友達じゃないかというような、道理に合わない話だ」「韓国は外国と付き合う世界標準を備えていない」などの自省の言葉もあった。

 日本政府は、像が在外公館に対する侮辱行為を禁じたウィーン条約に抵触すると主張してきた。

 一方、朴槿恵(パク・クネ)前大統領を罷免に追い込んだ流れから「とにかく市民の声に逆らえない」との意識が強いという。道上氏は「韓国側には、慰安婦像設置に怒っているのは日本の政府や国会議員で、一般国民は気にしていないという誤解がある」と指摘した。

 大使館時代から、韓国の新聞への寄稿や大学での講演など対外的な発信を積極的に行ってきた。

 「日本政府が元慰安婦に重ねておわびしてきたような基本的事実を、日本を批判する記者や学生が知らないことも多い。放置するのでなく、一歩ずつでも伝える」とのスタンスを続けたいという。

 最初に赴任した約30年前と比べ、韓国では日本文化などへの抵抗が減り、訪日観光客も大幅に増えた。

 「客観的な日本観が広まった部分もうかがえるが、日本を真剣に知りたい、学びたいという姿勢は薄れた。日本が竹島の領有権を主張すれば『右傾化している』との批判が出るのは古い理解のままだ」と指摘する。

 一方で「日本も相手を感情的に否定するのでなく、この重要な隣国とどう付き合い、どういうメッセージを送るか、じっくり考えた方がいい」と述べ、日韓の意識のギャップが広がることに懸念を示した。

 釜山については「目を見張る発展を遂げた大都市で、その魅力を日本にもっと知ってほしい」と語る。懸案を抱える中で、経済や地方の交流をどう強化するのか。「難しいが、最善を尽くす」と話した。

=2017/08/06付 西日本新聞朝刊=

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/348825/

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インタビューに応じる道上尚史総領事