中国の英字紙グローバル・タイムズは7日、「中国は終末高高度防衛ミサイル(THAAD)という苦い薬を飲み込まない」「THAADというドラマはまだ終わっておらず、韓中関係に引き続きついて回る」と指摘した。

 中国人民大の成暁河教授の寄稿だ。環球時報も同日の社説で、「THAAD配備は愚かで軽率な行動だ。米国を助けようとする余り、北朝鮮の関心事を全く考慮していない」と評した。同日の中国メディアの報道には、北朝鮮の核・ミサイルによる暴走を非難する内容は見られなかった。

 先月の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の試験発射以降、中国は北朝鮮の挑発よりもTHAAD配備を問題視する姿勢を取っている。

 中国の王毅外相は6日、フィリピンで韓国外交部(省に相当)の康京和(カン・ギョンファ)長官と会談した席上、北朝鮮のICBMには言及せず、韓国政府のTHAAD発射台追加配備のみを非難した。「(THAADで)両国関係に冷や水を浴びせた」「過去の(韓国政権による)誤った行動だ」などという外交儀礼に反するかのような発言を次々と繰り出した。

 会談中には儀礼的な笑みも浮かべなかった。一方、王外相は同日、北朝鮮のリ・ヨンホ外相と会った際には満面の笑みで対話と交渉を強調した。

 新華社電は7月31日の社説で、米国が対北朝鮮制裁に慎重な中国に圧力を加えようとしていることについて、「怒りをぶつける対象を間違えた」と批判した。核・ミサイル挑発は北朝鮮が行っているものなのに、なぜ中国を制裁しようとするのかという不満だ。

 しかし、THAAD問題こそ中国が怒りをぶつける対象を間違えたとの指摘を受けている。韓米両国がTHAADを配備し、中国に圧力をかけているのは全て金正恩(キム・ジョンウン)政権の核・ミサイルによる挑発が原因であって、中国が報復し腹を立てるべき対象は韓国ではなく北朝鮮だからだ。

 中国のこうした動きは今に始まったことではない。2010年3月に北朝鮮が韓国軍の艦船「天安」を爆沈し、同年11月に韓国・延坪島に爆撃を加えた際にも「緊張を誘発しているのは(軍事演習をしている)韓国と米国だ」と批判した。

 このように決定的な節目ごとに中国が北朝鮮をかばうのは、韓半島(朝鮮半島)の地政学的な利益に対する中国なりの計算があるからとされる。

 外交筋は「中国の外交実務担当者に会えば、『THAADが実質的に中国の脅威とはならない』点を理解している雰囲気」だという。その上で、この問題が解決しないのは、「THAADを韓米同盟の象徴と考える中国指導部がTHAADを通じ、韓半島で米中間の力のバランスを試しているためだ」と指摘した。

 米国が韓国に支援する兵器システムを中国が拒否できることをアピールし、韓半島で中国の立場と影響力を高めようとしているとみられている。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・グリーン上級副所長は「中国が韓国に圧力を加え、THAADを撤収させられれば、(アジア)大陸で(韓米同盟の)核心軸を骨抜きにすることにつながる。そうなれば米国は日本、オーストラリアとともに海上でのパワーを掌握し、中国は大陸の主導権を握ることになり、(アジアの)秩序が再編される可能性がある」と述べた。

 北朝鮮の核・ミサイルによる挑発に対する中国の計算も韓米とは異なるとみられる。中国は基本的に韓米同盟、米日同盟を弱体化させ、北東アジアで米国の戦略的リーダーシップを揺るがすという計算をしている。

 北朝鮮が核搭載ミサイルで米本土を攻撃する能力を持てば、米軍は有事に際し、韓国と日本に増援部隊を派遣することをためらわざるを得ない。これは北東アジアでの米国の影響力低下につながる。「ゼロサムゲーム」という観点から見ると、中国の影響力はそれだけ高まることになる。

 中国は6・25(朝鮮戦争)当時から米軍の韓半島からの撤収を望んでいた。北朝鮮の核ミサイルによる脅威で米国が北朝鮮と平和協定を結び、在韓米軍を撤収すれば、中国としては長年の念願がかなうことになる。

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/08/08/2017080800752.html
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>>2以降に続く)