国際社会の圧力を歯牙にもかけず、核・ミサイル開発を強行する北朝鮮に対し、国連安保理が新たな制裁決議を全会一致で採択した。北朝鮮の主な外貨獲得手段である石炭、鉄・鉄鉱石、鉛、海産物の輸出を全面禁止。追加制裁に消極的だったロシアと中国も折れ、対北包囲網はさらに狭まった。

 流れを主導した米国のトランプ大統領はツイッターで、〈北朝鮮に対する過去最大の経済制裁だ。10億ドル(約1100億円)以上の代償を払うことになる〉と大ハシャギ。年間30億ドル(約3300億円)とされる輸出総額を3分の1に減らす効果があると見積もっているようだが、その効果は限定的だという見方もある。

 亡命先の韓国で暮らす平壌出身の元エリート官僚が言う。

 「西側の計算式は北朝鮮には当てはまらない。北朝鮮は事実上、人件費がかからないため、核・ミサイル技術の開発コストは西側の100分の1以下です。核開発部門に勤務する友人の説明では、核実験1回の費用は200万ドル(約2億円)、ミサイル発射は30発で1億ドル(約110億円)程度だといいます。

 40億ドル(約4400億円)の“革命資金”はまだ底を突きそうにはないですし、表ルートでの輸出が遮断されても、ソマリアなどの紛争地域やイスラム国を相手に武器を売却し、定期的な外貨を得ています」

 米国は自国の核武装近代化費用を3500億〜4500億ドル(38兆〜49兆円)と試算。それと比較すれば、相当なケタ違いだ。

 一方、米国から貿易制裁で揺さぶられ、安保理決議に渋々賛成した格好の中国も独自の動きを見せている。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の議長を交代。外務省の武大偉朝鮮半島問題特別代表を引退させ、孔鉉佑外務次官補に兼務させた。

 朝鮮半島事情に詳しいジャーナリストの太刀川正樹氏は言う。

 「北朝鮮と国境を接する東北3省の黒竜江省出身の孔鉉佑次官補は、中国外務省幹部クラスで唯一の朝鮮族。武大偉議長とともに核問題を扱ってきた経緯もありますし、流暢な朝鮮語を操り、北朝鮮との商取引が盛んな東北3省の事情にも通じている。

 北朝鮮を締め上げるための人事とされる一方、行動を見せることで米国に対する時間稼ぎともいわれています」

 金正恩朝鮮労働党委員長の高笑いが聞こえてきそうだ。

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211002
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211002/2

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