8日に創設50周年を迎えた東南アジア諸国連合(ASEAN)は、節目の年に日本や中国などを加えた16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)交渉の大筋合意を目指す。

 ただ、貿易ルールを含む高いレベルの貿易協定を望む日本などと、物品の関税などを中心に早期妥結を優先する中国との間で意見の隔たりは大きく、年内の決着は難しくなってきた。

 「50周年の節目に大筋合意したいASEANの思いは十分理解するが、内容が21世紀型のレベルの高いものでなければならない」

 世耕弘成経済産業相は8日の記者会見でこう述べ、内容が煮詰まらない段階で拙速に合意を打ち出すことに慎重な姿勢を示した。

 中国はRCEP交渉で、自国産業を保護するため、国有企業の改革など透明な貿易ルールの導入に後ろ向きだ。中国がASEANを取り込めば中身の薄い形だけの合意が打ち出される可能性がある。

 だが、アジア各地にサプライチェーン(供給網)を広げる日系企業の活動を支えるには、透明性が高い貿易ルールの普及が不可欠だ。経済官庁幹部は「(ルール分野を軽視した)低いレベルでまとまるなら合意しない方がいい」と指摘する。

 日本政府は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に盛り込んだ「21世紀型」の合意内容を土台にRCEPの水準を引き上げる構え。経済協力を通じてASEAN各国との関係深化を図りつつ、拙速な合意よりも内容の充実を優先するよう説得したい考えだ。

 7月28日までインドで開かれた交渉会合では、貿易ルールを含む各項目で優先交渉する要素を定めたが、「(大半の内容を固めた)大筋合意を打ち出せるような状況ではない」(交渉筋)。

 年内の交渉成果を打ち出す11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に向け、ASEANを間に挟んだ日本と中国との“綱引き”が続きそうだ。(田辺裕晶)

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交渉をめぐる綱引き