北朝鮮が具体的ミサイル名を挙げ、検討段階の発射計画を公表するのは極めて異例だ。トランプ米政権との軍事的緊張を一気に高める米グアム周辺への発射に本当に踏み切るのか。

 北朝鮮戦略軍が言及した「火星12」は、5月に北朝鮮北西部から試射され、高度2000キロ超に達し、787キロ飛行して日本海に落下した。通常角度で発射すれば、射程は4500〜5000キロに及ぶと分析され、約3500キロのグアムには十分到達する。

 グアムに向け発射すれば、日本上空を通過する可能性が高く、誤って落下する危険も生じる。

 金正恩朝鮮労働党委員長は1月、「試射準備の最終段階」だと宣言した大陸間弾道ミサイル(ICBM)を実際に発射するなど、“有言実行”の姿勢を示してきた。日本海側への試射では、飛距離に限界があり、太平洋側に飛ばして現実の性能をテストしたいのが本音だ。

 一方で、「慎重に検討している」と実施を断言しておらず、トランプ政権の出方を試す思惑もにじむ。

 米韓両軍は21日から合同軍事演習に入る予定。その前後に北朝鮮が発射に踏み切る可能性があるとみて、警戒している。

 沖縄本島の約45%ほどのグアム(面積549平方キロ)には、B1爆撃機などが配備されているアンダーセン空軍基地と原子力潜水艦の基地アプラ港があり、米軍の重要戦略拠点になっている。

 人口は約16万人(2010年国勢調査)で在留邦人数は4422人(16年現在)。経済は観光業と米軍関係に依存し、16年には過去最高の154万人の訪問客があった。このうち半数の約74.5万人が日本人で占められている。(ソウル 桜井紀雄、住井亨介)

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北朝鮮の核問題を報じる街頭テレビを撮影する男性=9日、東京(AP)