◇在日オモニ1000人の「母校」

◇ボランティア 日本人ら先生

在日コリアンの女性たちが日本語を学ぶ大阪市生野区の民間夜間学校「生野オモニハッキョ」が、設立40周年を迎えた。

これまでに学んだ1000人以上の生徒の中には、戦争や貧困など厳しい時代をたくましく生き抜いた女性も多く、互いに励まし合い、親交を深める場になっている。(磯野大悟)

「九州の『州』は、済州の『州』ですよ」

7月24日夜、同区桃谷の会館であった1学期最後の授業。日本人の女性スタッフが生徒4人に漢字を説明すると、生徒らは「すぐ忘れちゃう」と言いながらも、真剣な表情でノートに書き込んでいた。

同学校は、家計を支えるために幼い頃から働いたり、いじめを受けたりして学校に通えなかった在日コリアン女性の日本語学習を支援しようと、1977年7月に日本人や在日コリアンの有志によって設立された。

韓国・朝鮮語で「オモニ」は「お母さん」、「ハッキョ」は「学校」を表す。コリアタウンのある同区を中心に50〜80歳代の約30人が通い、毎週月、木曜の午後7時半から1時間半、習熟度に応じた六つのクラスで授業を行っている。通学期間は自由で、ボランティアの日本人ら約20人が日本語を教える。

約20年前から通う李京姫さん(68)は韓国生まれ。1950年に始まった朝鮮戦争で父が行方不明になった。母は仕事のため日本へ渡り、李さんも成人後、母を追って大阪へ。サンダル工場で一日中働いた。

漢字をうまく書くことができず、役所で住所を記入する時は緊張で手が震えたという。同学校では一緒にカラオケを楽しめるような友達もでき、「無我夢中で生きてきたけど、ようやく心のゆとりができた」と話す。

洪貞子さん(68)は、12歳からガラスや靴の加工工場で働いた。日本語は自分の子どもたちに教えてもらうなどしたが、10年前から同学校で学び、文章がスムーズに読めるようになったという。「生徒同士で仕事のストレスや悩みも打ち明ける。ここが一番楽しい」と笑顔を見せる。

7月16日には40周年を祝う会があり、生徒や卒業生、スタッフら約150人が旧交を温めた。10月13〜15日には、授業の風景などの写真を集めた展示会も同区で開かれる。

スタッフとして30年余り関わってきた木下明彦さん(68)は「これからもオモニたちが気軽に立ち寄り、笑顔で語り合える場にしていきたい」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/local/osaka/news/20170808-OYTNT50354.html