大阪府警と埼玉県警、詐欺容疑などで中国籍の男女6人逮捕

 米アップル社のiPhone(アイフォーン)向けに国内で昨年10月始まった電子決済サービス「アップルペイ」で、他人名義のクレジットカード情報を使い、商品を詐取する事件が今年3月26〜27日、大阪、京都、埼玉の各府県で相次いで発生していたことが捜査関係者への取材で分かった。

 大阪府警と埼玉県警は詐欺容疑などで中国籍の男女6人を逮捕。海外の大規模な犯罪組織が背後で主導したとみて調べている。

 同サービスは決済時に指紋認証が必要など高度な安全性が評価されているが、アイフォーンにカード機能を持たせる際のカード発行会社の本人確認に抜け穴があったとみられる。警察は現物のカードを提示せずに済むスマホ決済の手軽さを隠れみのにしたカード不正使用犯罪の新たな手口とみて警戒を強めている。

 捜査関係者によると、日本人の男女10人のカード情報が不正使用され、計約2400万円分の被害があった。いずれも同じ百貨店系カードの利用者だった。この他にも明らかになっていない不正使用があるとみており、被害がさらに広がっている恐れがある。

 この発行会社は取材に「具体的な被害額は答えられない」と詳細を明かさなかった。アップルジャパンは「埼玉の事件は事実と確認している」とした。関係者によるとアップルは事件後、発行会社を集めた会合で注意喚起したという。

 逮捕されたのは、大阪市の23歳と20歳の留学生の男2人の他、住居不詳で無職の男(30)ら2グループ6人。インターネット上で知り合った人物から何らかの方法で流出したとみられるカード情報を受け取っていた。

 大阪府警に逮捕された2人は「日にちと店舗を指定され、アップルペイで決済するよう指示された」と供述したという。

 アップルペイの利用には発行会社がショートメッセージサービスやメールで発行する認証番号が必要。警察は、男らが「電話番号を変えた」などと名義人になりすまし、自分のアイフォーンの電話番号やメールアドレスを伝えて認証番号を送らせていたとみている。

 留学生2人は大阪市と京都市の家電量販店でデジタルカメラとレンズ17個(約730万円相当)、無職の男は埼玉県川口市のコンビニエンスストアでたばこ981カートン(約450万円相当)を購入したとして、詐欺罪などで起訴された。

 男らは詐取した商品価格の数%分を報酬として受け取っていた。商品は指定場所に送るよう指示され、その後中国向けに転売されたとみられる。

 府警の捜査幹部は「犯罪グループにとって偽造カードを用意する必要がなく、発覚しにくい。職務質問や水際対策の強化では対応しきれない」と警戒感を示している。【宮嶋梓帆】

アップルペイ
米アップル社の非接触型電子決済サービス。国内では昨秋発売されたスマートフォン「アイフォーン7」と腕時計型端末「アップルウオッチ」に対応。
所有するクレジットカードやJR東日本の電子マネー兼用乗車券「スイカ」を登録すれば、店舗や駅で端末にかざすだけで決済できる。米や中国など16の国・地域で導入されている。

https://mainichi.jp/articles/20170810/k00/00m/040/188000c

http://cdn.mainichi.jp/vol1/2017/08/10/20170810k0000m040189000p/9.jpg
アップルペイを使った詐欺事件の構図