猛毒を持つ「ヒアリ」が、8月に入っても国内各地で相次いで発見されている。海外ではニュージーランドが駆除に成功したが、中国では拡大に歯止めがかからず、台湾も対策に躍起になっている。

専門家は「侵入の初期に徹底した対策をとるかどうかで、明暗が分かれる」と指摘する。日本は海外の国々の教訓を生かすことができるのか。

ヒアリの発見から10年以上になる台湾。生息エリアのさらなる拡大を防ごうと、取り組みが続く。

8月上旬、台湾北部の田園地帯を訪ねた。女性スタッフに連れられた犬が、地面のにおいをかぎ回っている。ヒアリの巣を見つける「ヒアリ探索犬」だ。

室内で半年、野外で1〜2カ月の訓練を重ね、巣の発見率は90〜95%。人の目をすり抜けやすい小さな巣も見逃さない。4頭を保有するモンスターズアグロテック社は、台湾の空港や建設現場で駆除をしている。

台北松山空港では、この2年半で191個の巣を駆除した。要請があれば将来、日本に探索犬を貸し出すことも可能という。

ただ、台湾の市街地や農地にはヒアリが深く浸透しており、同社の林暉閔(リンフィーミン)社長(37)は「台湾での根絶はもはや無理。生息エリアの拡大を防ぐのが精いっぱいだ」と話す。

台湾では03年10月、北部の桃園市と南部の嘉義県で相次いでヒアリの侵入が確認された。まだ数が少なかった台湾南部では駆除に成功したが、100個以上の巣ができていた北部は、今も桃園市を中心に多数のヒアリが生息している。

政府は04年に「国立ヒアリ防除センター」を設立。毒入りのエサを散布するなどの対策も進めている。

北部の桃園国際空港では05年、滑走路の照明の中にヒアリの巣が見つかった。ケーブル類をかじれば、故障や火災の危険もあった。

国立ヒアリ防除センターの幹部を務める林宗岐(リンチョンチー)・国立彰化師範大教授(49)は「ヒアリによる台湾の経済損失は年間約300億円との試算もある」と話す。

台湾のヒアリを長年調査してきた京都大の楊景程(ヤンチンチェン)講師(35)は「日本はまだ、侵入のごく初期の段階だ。しかし、いま徹底的に調査して生息エリアを把握しなければ、台湾のように多額の出費を迫られることになる」と指摘する。(台北=後藤一也)

http://www.asahi.com/articles/ASK8Q5R4TK8QPLBJ004.html

http://www.asahicom.jp/articles/images/AS20170822003528_comm.jpg
ヒアリの侵入が確認された主な国や地域