「主権は国民にあり、あらゆる権力は国民から出る」。憲法第1条第2項の条文から抜け出して生活の中に入ってきたのは映画『弁護人』の時からだろう。

映画館でだけで1100万人を超える人々が俳優ソン・ガンホ演じる弁護士、いや、そのモデルとなった青年弁護士時代の盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏(後の大統領)の絶叫する姿を見た。

文在寅(ムン・ジェイン)もこれを見てハンカチを手に涙をぬぐい、2009年の盧武鉉元大統領死去後、胸に何度も刻みつけてきたことだろう。

この「国民主権」は文在寅政権の政治戦略文書第1号とも言える国政諮問委員会の報告書「100大課題」で最初に挙げられている。報告書では「国民」を新たに定義する文言が目を引いた。

「主権者国民は『自分自身』の代表となり得なかった既存政治の限界を超え、国民一人一人が権力の生成と過程に直接関与し決定する新たな国民の出現だ」というのだ。文大統領は17日の就任100日目を記念する会見で、「真の国民主権の時代が始まったという確信を持つに至った」と述べた。

その二日前の光復節(日本による植民地支配からの解放記念日)のあいさつでも「ろうそく(デモによる)革命で国民主権の時代が開かれた」と言った。三日後の国民報告大会という行事では、ついに「直接民主主義」とまで言った。

「国民は間接民主主義では満足できない」「直接ろうそくを手に政治的意思表示をして、ネットのコメントを通じて直接提供するなどの直接民主主義を国民が求めている」と述べた。直接民主主義は根拠もなく生まれたのではない。

文大統領が言う「国民主権時代の幕開け」とは、単にある抽象的概念を明らかにする程度を超えている。文在寅政権における第1の作動原理と言える物だ。国民、正確には人民(People)の名で国家と社会が回る原理を丸ごと変えようということだ。

その真裏には派閥政治による国会や帝王のような大法院(最高裁判所)長官が支配する裁判所、陸士中心の軍、米国中心の外交ラインがある。財閥や官僚中心の経済ももちろんそうだ。これが文大統領の考え方だ。

文在寅式政治を作動させる後ろ盾はやはり支持率だ。おととい発表された世論調査機関「リアルメーター」の平日世論調査で、文大統領の支持率は前週に比べ2ポイント以上アップした。先週1週間は「殺虫剤タマゴ」問題が政権に重くのし掛かった。

「非正規職ゼロ」宣言はあちこちで副作用を生み出している。全国教職員労働組合の教師たちが韓国教員団体総連合会の教師たちと手を取り合い、臨時教師の正規採用に反対するという奇怪な事態も起こっている。

「ヘリコプター福祉(ばらまき福祉)」や脱原発については専門家の70−80%が反対だ。それでも支持率ははね上がっている。

記者は、文大統領の支持率はすぐには下がらないと考えている。周囲のいろいろな人々と会話して得た結論だ。多くの人が「問題が多いということは知っている。不安な部分もたくさんある。だが、少なくとも1−2年はこのまま行かなければ」と言っていた。

今、この国には、中産層から押し出されていると考える中産層が広く存在している。不動産や株式という資産市場競争で勝利したごく少数を除く、絶対多数の人々だ。

米国のジャーナリスト、ジョン・ジュディス氏が「全世界に衝撃をもたらしたポピュリズムの背後には『急進的中産層がいる』と言ったことを考えると、こうしたことは韓国だけではなさそうだ。

文在寅政権はこうした抵抗的・転覆的エネルギーを権力の基盤にして賢く利用している。国民はその道を進むべきだと拍手しているのだ。

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>>2以降に続く)