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 戦争の危機が間近に迫ってきたような緊迫感に包まれました。日本の上空をミサイルが通過し、太平洋に落下したからです。

 このような危機を高めたのは北朝鮮の金正恩政権であり、国連決議違反のミサイル発射は許されるものではありません。同時に、北朝鮮をここまで追い込んだのはトランプ米大統領の恫喝であり、安倍首相による圧力一辺倒の瀬戸際政策であったということも、同時に指摘しておかなければなりません。

 本日午前5時58分ごろ、北朝鮮は北東方向に向けて飛翔体を発射し、北海道の襟裳岬の東方約1180キロの太平洋上に落下しました。発射されたのは中距離弾道ミサイルとみられ、発射7分後に北海道に達し、9分後に襟裳岬上空を通過したと発表されています。

中略

 とうとう、事態はここまで悪化してしまいました。対話を拒否して圧力一本やりで北朝鮮を屈服させようとしてきた安倍首相の方針が、ミサイル発射の抑止にとって全く無力だったからです。

 このような形で国民の不安を高める結果になったのは、歴代自民党政権の北朝鮮政策が失敗したからであり、安倍首相の対応が間違っていたからです。日朝関係の改善を最優先にして取り組んできていれば、事態は異なった形になり、ここまで危機が高まることはなかったかもしれません。

 かつて、小泉首相の訪朝と日朝平壌宣言、その後の拉致被害者5人の帰国、日朝国交正常化交渉という流れがありました。しかし、拉致問題最優先ということでこの流れをストップさせたために、結局は日朝間の国交正常化に向けての動きも拉致問題解決の可能性も閉ざしてしまことになりました。

 今また、対話を求める国際世論に背を向け、安倍首相は軍事力に頼る選択肢を排除せず、さらに圧力を強化すると言い続けています。しかし、このようなやり方ではミサイル発射を防げないことは、この間の経過がはっきりと示しています。

 今回の発射について、安倍首相は「レベルの異なる深刻な脅威だ」と発言しました。それなら、このような「脅威」を防ぐことができず、エスカレートさせてしまったことについての責任をどう考えているのでしょうか。

 そもそも、安保法制が審議されていた時、安倍首相はそれが必要な理由として日本周辺の安全保障環境の悪化を挙げ、安保法が成立して日米同盟の絆が強まれば抑止力が増大し、このような環境は改善されると請合っていたではありませんか。実際には、日米同盟の強化によって北朝鮮による敵視と警戒感が強まり、軍拡競争が激化して緊張感が高まり続けています。

 今回の例で明らかなように、北朝鮮のミサイルは7〜8分で日本に到達します。これをミサイル防衛によって防ぐことは極めて困難です。

 アメリカとはちがって日本にとっての脅威は大陸間弾道弾(ICBM)ではなく、ノドンやスカッドなどの短距離・中距離のミサイルであり、それはすでに早くから配備されていました。このような脅威を防ぐための軍事的な手段は役に立たず、有効な防止策は政治的な手段だけです。

 軍事的抑止と経済制裁の強化には限界があり、そのような対抗措置以上に外交交渉を行う可能性を模索しなければなりません。米朝間の直接対話、南北間の交渉、日本を含む周辺諸国による6カ国協議の再開など、公式・非公式を問わず、戦争の危険性を低減させる可能性を追求するべきです。

 ところが、安倍首相は「対話のための対話は無意味だ」として交渉に反対してきました。相手側が軍事的な挑発だと受け取る可能性のある対応を自制し、交渉のテーブルに付きやすい環境を整備することこそ、何よりも今、求められていることではありませんか。

 一方が牽制し他方が反発するという形での軍事力による応酬が続く限り、このような対話は実現できません。前提条件を付けず、無条件での対話を実現するために、日本政府としても努力するべきです。

 これが憲法9条の求める道でもありますが、安倍首相にそのような意思はうかがえません。北朝鮮危機を解消し、日本周辺の安全保障環境を改善して戦争を防ぐためにも、安倍首相を退陣に追い込むことは急務となっています。