北朝鮮は昨日、日本上空を通過する弾道ミサイルを発射した。北朝鮮が日本の上空を通過するミサイルを飛ばすのは19年ぶりだ。北朝鮮はこれまでとは異なり、今回は中長距離ミサイルを高角度ではなく通常の角度で発射し、高度550キロで2700キロ先まで飛ばした。

これら様々な状況から考えると、北朝鮮の挑発行為は今や大きな転換点に至ったと言えるだろう。韓国の情報機関である国家情報院は、北朝鮮が大気圏への再突入など大陸間弾道ミサイル(ICBM)に必要な全ての技術を獲得し、これを安定させるまで試験発射を繰り返すと予想している。

韓国の李洛淵(イ・ナクヨン)首相は今回の事態について「これまでとは次元が違う重大な挑発」と指摘した。米国のトランプ大統領は軍事的な対応に何度も言及しているが、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長はそれを「口だけ」と見透かしている。

また文在寅(ムン・ジェイン)大統領も「戦争には絶対反対」と繰り返し明言しているため、金正恩氏は北朝鮮に対して軍事行動が行われる可能性は全くないと判断し、戦略的に挑発行為を繰り返しているのだろう。中途半端な制裁では近く完成するであろう北朝鮮の核ミサイルを阻止するのはどう考えても無理だ。

金正恩氏としては誰もどうしようもない今のうちに最後の核実験とICBMの発射まで終わらせ、米国との交渉を始めたいと考えているはずだ。全ての状況から考えると、これも決してあり得ないことではないだろう。

これに対する韓国政府の対応は見ていて悲しくなるほどだ。北朝鮮は10000トンの核爆弾を保有しているが、韓国軍はその1万分の1の威力しかない1トン爆弾8発を江原道の訓練場に投下し、これを「北朝鮮に対する武力の誇示」などと言っている。

しかも北朝鮮は地対空ミサイルを保有しているため、この爆弾を投下した戦闘機は簡単には北朝鮮領空にも入れない。韓国国防部は「北朝鮮が攻撃してくれば、韓国軍単独で数週間以内に平壌を占領する新たな作戦計画をとりまとめた」と発表した。

しかし歴史上、核武装国に対して通常兵器で攻撃が行われた事例はない。どう考えても不可能だからだ。そのためもし北朝鮮との全面戦争が起こった場合、北朝鮮の核兵器は米国の核兵器でけん制しなければならない。

ところが韓国軍は米国抜きで単独で作戦行動を起こすというのだから、一体何を考えているのか到底理解できない。

韓国大統領府は北朝鮮が発射したミサイルを「放射砲」などと軽々しく過小評価したが、これもわずか1日で間違いだったことがわかった。このような状況で米朝対話が実現すれば、当然これは「コリア・パッシング(韓国排除)」となる以外になく、韓国の安全保障に致命的な結果がもたらされるのは間違いない。

ところが大統領府は今なお「対話」という空虚な言葉を繰り返すばかりだ。文大統領が米国のレッドラインに言及し、北朝鮮の核保有国化という最悪の状況が近づいているが、一方でこれに備えるための実質的な対策は何一つ行われていない。

北朝鮮が挑発を行うたびに、米国のトランプ大統領は文大統領ではなく日本の安倍首相と電話会談を行っている。これまでトランプ大統領は文大統領と2回しか電話会談をしていないが、その間に安部首相とは9回も電話会談をした。

これが正常な状態と言えるのか、あるいはなぜそうなったのか誰も説明できない。トランプ大統領と安倍首相は昨日も北朝鮮がミサイルを発射した直後、40分間にわたり緊急の電話会談を行い対策を協議した。しかし文大統領は2人のどちらとも電話会談をしなかった。

文大統領が会談を避けたのか、あるいは米日の両首脳が文大統領を避けたのかはわからないが、いずれにしても前例のない事態だ。

昨日も文大統領は「今日も北朝鮮はミサイル挑発を行ったが、そのような状況であるほど南北関係は大転換しなければならない」と述べた。北朝鮮が核武装国となり、韓国がその人質となった状態で南北関係が大転換すれば、それは何を意味するのか。いつまで現実から顔を背け、幻想を追い求め続けるのだろうか。

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