冬季五輪の人気種目で“五輪の華”と称されるフィギュアスケート。世界トップに立ったロシア選手が来年2月に迫った平昌五輪を欠場することが明らかになり、もう1人は19歳で現役引退を発表した。世界最強のロシア勢の中で激しい生存競争をうかがわせる。

 欠場が明らかになったのは、アデリナ・ソトニコワ(21)。今年4月からコーチを務めるエフゲニー・プルシェンコ氏がロシア・メディアに対し、ソトニコワがトレーニングをこなせていない状態であり「けがのために今シーズンの試合には出場しない」と明かしたことをAP通信が8月28日に報じた。最近は右足首のけがに苦しんでいるようで、2つの金メダルを含め4大会の五輪でメダルを獲得したプルシェンコ氏のおメガネにかなう状態ではないようだ。ただ、同コーチは引退を意味するものではないとした。

 この報道に過敏に反応したのが、韓国だった。聯合ニュースは「ソトニコワはソチ五輪で釈然としない判定でキム・ヨナを抑えて金メダルを獲得した」と報じた。ネットユーザーはもっと過激で「けがは言い訳だろう」「実力がばれそうだから逃げたな」などと書き込んだ。2014年ソチ五輪で五輪連覇を狙ったキム・ヨナ(2位)を抑えて金メダルを獲得したのが、ソトニコワだったからだ。

 愛国心を託しやすいスポーツ・ナショナリズムは韓国人がことのほか強いといわれる。「国民の妹」と称され、韓国で絶大な人気を誇るキム・ヨナを負かしたことで韓国内は騒然とした。判定をめぐって韓国スケート連盟は国際スケート連盟などに不服を申し立てた。さらに、キム・ヨナ・ファンや韓国のネットユーザーらはソトニコワのSNSに抗議や非難のコメントを次々に書き込み、SNSを閉鎖に追い込んだ。

一方、ソチ五輪でキム・ヨナのライバルの1人に挙げられたユリア・リプニツカヤが拒食症に苦しみ、最終的に19歳の若さで現役引退を選択した。ロシア・スケート連盟は9月9日、リプニツカヤが正式に引退を報告し、代表メンバーから退く文書に署名したと発表した。

 母が8月28日、ロシアのタス通信とのインタビューで「ユリヤが欧州で3カ月間、拒食症の治療を終えて帰ってきた、4月、ロシアスケート連盟に引退決定を発表した」と答えたと伝えていた。

 15歳の時、ソチ五輪の団体戦で金メダルを獲得し、その可憐な容姿から「ロシアの妖精」と称されて将来を嘱望されたが、ソチの翌シーズンから不調が伝えられていた。成長期による体格の変化などでジャンプが不調だったという。インターネットサイトには今年6月、やや体重が増えた写真が公開され、妊娠説が流れたりした。リプニツカヤはSNSに「私は生涯37キロで生きなければならないの」などと書いていた。

 世界のトップを走るロシアの女子フィギュア陣には昨季の世界女王、エフゲニア・メドベジェワ(17)やアンナ・ポゴリラヤ(19)ら若手の実力派が台頭し、いったん第一線から後退すると、間隙を突いて再びトップに加わるのが困難な状況にある。リプニツカヤは今後、大学に進学する予定という。

2017.9.24 01:00
http://www.sankei.com/premium/news/170924/prm1709240008-n1.html