先日の新聞各紙は、自民党の総選挙での堅調を伝えていた。その一方で、希望党は失速したという。

選挙運動をみていると、自民・公明の与党は、しきりに国難を訴えている。北朝鮮の脅威と、少子高齢化だという。この国難に立ち向かうには、いまの安保法制が必要だし、教育の無償化が必要だという。そして、この国難に対処するのは、安定した自公政権しかない、と叫んでいる。四分五裂した野党には任せられない、というわけである。

しかし、こうした事態を招いたのは自公政権である。だが、両党とも反省する気配はない。

このように、与党は国難を煽ることで政権の維持を図っている。これほど危険なことはない。そうして、いまのところ、この選挙戦術が成功しているようだ。

北朝鮮の脅威に対する政府の方針は、軍事力を含む圧力を強めることで、北朝鮮を話合いに引き出す、というものである。そういって、話合いを否定している。



この方針は、アメリカの方針に追随したものである。そして、本HPで孫崎亨氏が指摘したように、アメリカは、この方針にしたがって、軍事費を増やして軍事産業をうるおし、いまアメリカ経済は北朝鮮特需に沸いている。つまり、北朝鮮の脅威を強調することは、アメリカの経済的強者の利益に直結している。日本の強者は、そのおこぼれを期待しているようだ。

だから、強者を代弁する自公政権は、話合いという外交努力を否定するし、弱者を戦争の危険にさらして、強者の利益のために、危機感を煽っている。

戦争の犠牲になるのは、いつも99%の弱者なのである。



先日、ロシアの高官は、北朝鮮は草の根を食ってでも、圧力には屈しないだろう、といった。北朝鮮だけではない。誇りある人間なら、誰でもそうするだろう。にもかかわらず、政府は北朝鮮に圧力をかけて話合いに引き出す方針である。ここには安倍晋三首相の排外的で好戦的な人柄がにじみ出ている。

それに加えて、安倍首相の朝鮮人強制労働の否定、A級戦犯の尊崇という歴史観は、北朝鮮だけでなく南の韓国も受け入れない。だから、話合いには応じないだろう。それゆえ、北朝鮮の脅威という「国難」を取り除くには、安倍首相が反省するか、それが出来ないなら辞めてもらうしかない。

【森島 賢】

http://www.jacom.or.jp/column/2017/10/171016-33831.php


安保政策について、もう少し考えよう。

安保問題は、憲法の平和主義にかかわる重要問題である。それに加えて、今度の衆議院解散の大義は、これまでの安倍内閣の、北朝鮮にかかわる安保政策に対して、国民の審判を仰ぐものだという。

その内容は、北朝鮮との話し合いではなく、北朝鮮への圧力、である。しかも圧力は、経済的圧力だけでなく、軍事的圧力を想定している。そして、いまや安倍政権は、日米韓の尖兵になろうとしている。

しかし、韓国は同じ民族どうしの北朝鮮と軍事衝突は避けたいだろう。米国も本土から遥かに遠い極東での国民の流血の衝突は避けたいだろう。そうしたなかで、独りでいきり立っているのが日本である。

また、圧力をかけて北朝鮮を話合いの場へ引き出すというが、関東大震災のときの朝鮮人の大虐殺や、戦時中の朝鮮人に対する日本での強制労働や、南京大虐殺などの歴史的事実を認めないような、安倍首相や小池代表の圧力で、北朝鮮が話合いの場に出てくるとは、とうてい考えられない。中国が同調するとも思えない。

このような状況のもとで、安倍政権はこうした安保政策について、国民に信を問うている。そうして、希望党の小池代表は、安倍政権のこの安保政策を支持している。

それに対して、99%の弱者の側に立つ3野党は反対している。この安保問題が、格差問題と並んで、こんどの総選挙の主要な争点になっている。

これらに森友・加計問題などが加わり、安倍首相と小池代表の危険で好戦的な独裁者ぶりを際立たせて、総選挙に、どぎつい程に華やかな色を添えている。

【森島 賢】

http://www.jacom.or.jp/column/2017/10/171010-33788.php


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http://www.jacom.or.jp/column/2017/07/170724-33281.php