秋の味覚の王者、マツタケの人工栽培に世界で初めて成功したと、韓国紙の中央日報(電子版)が9月に伝えた。

日本国内では同月15日、高級マツタケとして名高い兵庫・丹波篠山産の初競りで、1キロ当たり100万円の値が付いた。実際には5本計70グラムが7万円で落札され、ご祝儀相場上の「キロ100万円」だが、マツタケが庶民にとって「高“値”の花」であることは間違いない。

日本でもマツタケ栽培の研究が長年に渡って進められる中、同紙は韓国が日本に先駆けて不可能を可能にしたと報じている。

マツタケ3本が

同紙によれば、韓国・山林庁国立山林科学院が9月16日、マツタケ菌を付着させたマツの苗木から人工マツタケ3本が生えたのを確認したという。この苗木は、2001〜04年に植えたもので、同じ試験場では10年にも人工マツタケ1本が生えており、今回の成功は2例目。

これらの結果から、人工栽培が可能であることを世界で初めて立証したと結論付けている。同紙は前述の10年に1本が生えた際も「人工繁殖に成功した」と伝えている。

マツタケは、「菌根」という器官を通じてアカマツの木から栄養を補給する一方、土に含まれるミネラルなどを木に与えるため、アカマツと共生関係にある。菌根から伸びた菌糸は「シロ」と呼ばれるコロニーをつくり、そこから新しいキノコが誕生する。

こうしたアカマツとの共生関係などを人工的に再現することが難しく、人工栽培の最大の障害とされてきた。

韓国が採用した栽培技術は、同紙によると、マツタケが生えた所にマツの苗木を植え、マツタケの菌糸を付着させた後に広げるもので、菌糸が付着した苗木をマツタケが生えない大きなマツがある山に再び移植するという研究だ。

韓国・国立山林科学院の研究者は同紙に対し、商業的栽培を今後可能にするため「マツタケの発生率を高める技術の開発に最善を尽くしたい」と話している。

日本はどうか

マツタケの人工栽培は、日本国内でも長年の「悲願」として各地で研究が続けられている。

マツタケの国内生産量は最盛期の昭和20年代後半ごろには年間6千トン程度あったが、林野庁によると、平成28年は約70トンに。さらに生産量は気象条件に大きく影響を受けるため、その年ごとの増減も激しい。

また、海外からの輸入は981トンにのぼり、国内消費量の9割以上を輸入品が占める格好だ。ちなみに、輸入量は最多の中国から647トン、韓国からは3トンだった。国内の主な生産地は、長野県、岩手県、和歌山県などだ。

林野庁のホームページ(HP)は、マツタケについて「現在のところ実用的な人工栽培技術がなく、自然発生したものを採取し、市場等へ出荷しています」と記載。

また、キノコ栽培の総合企業「ホクト」(長野市)のHPでも「マツタケの栽培は難しく、現在までに人工栽培の成功例はありません。各種系統の菌糸培養等、研究を進めています」と記されている。

待ち望まれる「実現」

韓国が「世界初」と謳った人工栽培の成功が日本の研究にどのような影響をもたらすのかは不明だが、実際に商業栽培につながれば、将来的には韓国産マツタケの輸入量が増大する可能性もある。

ただ、日本での人工栽培が成功しない限り、国内産の安定供給にはつながらず、国内産は相変わらず「1本=数万円」という庶民の手が届かない超高級食材であり続ける。マツタケの人工栽培は1千億円市場ともいわれ、日本にとって成功が待ち望まれる研究開発のひとつだ。

そして、アカマツとの共生関係にあるマツタケの人工栽培が実現すれば、マツタケの増産だけでなく、マツ林の再生にもつながり、里山や森林の復活にも貢献することになる。

http://www.sankei.com/west/news/171026/wst1710260001-n1.html

http://www.sankei.com/images/news/171026/wst1710260001-p1.jpg
9月19日、大阪・梅田の阪神百貨店に入荷した兵庫・丹波篠山産のマツタケ。100グラムあたり3万7800円の値が付いた。マツタケをめぐっては、韓国紙が「人工栽培に成功した」と報道した