【時代の正体取材班=石橋 学】県が朝鮮学校に通う子どもへの学費補助金支給を打ち切った問題を考える講演会が27日夜、横浜市中区の市開港記念会館で開かれた。

講師の高橋哲哉・東大大学院教授(哲学)は「憲法や国際人権法に反する差別。支給を再開するべきだ」と県の措置を批判した。

県は教科書に拉致問題の記述がないことを理由にしているが、高橋教授は神奈川朝鮮中高級学校で使われている副教材を紹介し「拉致問題が日朝の歴史を踏まえ、日本の学校以上に丁寧に教えられている。なぜ教科書に書かれていないという理由で差別的に扱えるのか、理解できない」。教育内容に介入する県の姿勢への疑問も重ねて呈した。

愛国心教育を批判する「教育と国家」などの著書がある高橋教授は、高校無償化からの除外と合わせた朝鮮学校への弾圧は「言葉や文化、歴史を奪い日本への同化を強いた植民地支配当時の反復」と指摘する。

戦前から続く政府の民族差別的価値観や安倍政権下で強まる歴史修正の動きと北朝鮮への敵視政策がヘイトスピーチまではびこる社会の背景にあると解説。

朝鮮学校に対する差別政策を止めるには「民族教育権をはじめマイノリティーの権利保障は憲法や国際人権法で確立された原則だと認識を共有する必要がある。同時に植民地支配の責任に向き合うために歴史を知らなければならない」と市民社会の側に呼び掛けた。

講演会は神奈川県弁護士会の主催。同校の生徒も登壇し「面会した県の職員から差別などしていないと言われ、疑問と憤りを覚えた」などと訴えた。

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朝鮮学校の子どもへの補助金停止を差別と断じる高橋教授=横浜市開港記念会館