1. 2017年11月14日、国連人権理事会において日本政府に対する 第3回UPR審査(Universal Periodic Review /普遍的定期的審査)が実施された。

UPRは、国連における人権理事会の創設(2006年)に伴い,国連加盟国(193ヶ国)全ての国の人権状況を普遍的に審査する枠組みとして盛り込まれた制度であり、国連憲章、世界人権宣言、当該国が締結している人権条約、自発的誓約、適用されうる人権法を基準に審査されるものである。

UPR審査は、(i)被審査国が国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に宛てて提出する報告書、(ii)OHCHR が被審査国に関する国際条約機関及び特別手続による報告並びに関連する国連公用文書を編集した文書、及び、(iii) OHCHRがNGO等UPR関係者により提出された信憑性と信頼性のある情報を要約した文書、の3つの文書を基礎として行われる 。

今回の審査では、日本国政府は2017年8月に報告書を国連に提出しており(ただし、報告書公開は10月)、各NGOもそれぞれの問題意識を記した文書をOHCHRに提出していた。

民団人権擁護委員会は、UPR審査の事前準備のための情報提供として、民族的マイノリティの権利の否定、人種差別禁止法の不在、ヘイトスピーチ・ヘイトクライム、永住外国人の地方参政権の欠如、公務就任権の制限などの在日コリアンが直面する問題に関する報告書を2017年3月にOHCHRに提出したほか 、 民団人権擁護委員会委員をジュネーヴ現地に派遣する等して、今回のUPR審査に関心を寄せてきた。

2.2017年11月14日の日本政府に対する審査においては、人種差別を含む包括的な差別禁止法の制定(オランダ、ノルウェー、ドイツ等)や、ヘイトスピーチに対するさらなる対策の実施(オーストラリア、メキシコ、韓国等)について多くの勧告が出された 。

この点、日本政府は、第3回報告書において、人種差別に関しては、「全ての形態の直接的・間接的差別の禁止(勧告 35、64)に関し、我か゛国て゛は公共性の高い分野等て゛は関係法令により広く差別の禁止か゛規定されている。

憲法第 14 条第 1 項において、不合理な差別を禁止している」とし(パラグラフ51)、ヘイトスピーチに関しては、2016 年 6 月に施行された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下、ヘイトスピーチ解消法) により対策が取られているとする(パラグラフ55)。

しかしながら、今年3月に発表された法務省の「外国人住民調査報告書」に見られるように、日本における外国人住民は、今なお入居差別・就職差別などに苦しんでいる。また、ヘイトスピーチ解消法施行後、ヘイトデモの回数、参加者数は減少する等一定の効果は出ているものの、インターネット上のヘイトスピーチは依然として猖獗を極めている。

このように、ヘイトスピーチ解消法の成立は見たものの、依然としてヘイトスピーチ(特にオンライン上のもの)への実効的な対処は図られていないこと、ヘイトスピーチに留まらない構造的な人種差別の問題に対する法的対処が図られていないことが、今般の人種差別・ヘイトスピーチに関する勧告につながったといえる。

3.今回のUPR審査を経て出された勧告は、国連加盟国が、国際人権規約等に照らした厳正な検討を行った上で表明されたものであり、民団人権擁護委員会はこれに歓迎の意を表する。

東京オリンピックを控えて、法務省は「人権大国・日本の構築」を謳っているが、人種差別に対処するための法的枠組みを欠いたままで、「人権大国」の実現は不可能である。

日本政府は、UPRにおいて各国から出された勧告、とりわけ、人種差別に関する勧告を受け入れ、速やかに多文化共生社会の実現に向けた具体的施策に反映させるべきである。

以上

民団人権擁護委員


(17.11.20)
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