韓国大統領府は17日「わが国の安全保障上の利益を確実に保護した」「THAAD(米国の高高度防衛ミサイル)に伴う(韓中間の)問題は解消された」などとして文在寅(ムン・ジェイン)大統領の3泊4日の中国国賓訪問の成果を自画自賛した。大統領府はまた北朝鮮の核問題をめぐり中国との間でいわゆる「4大原則」に合意したことも成果だと主張している。

この4大原則のうち「韓半島(朝鮮半島)での戦争を容認しない」と「韓半島無核化」「対話による平和的解決」の三つは1993年から中国が24年にわたり繰り返し主張してきたことだ。今回はこれに「南北関係改善は韓半島問題の解決にプラスになる」という内容が追加されただけだ。

また「韓半島での戦争を容認しない」は一見すると当然のように見えるが、これは米国による北朝鮮への軍事オプションに対して露骨に反対するものでもある。現在、中国とロシアは北朝鮮に対する追加制裁を拒否しているが、これに加えて米国も軍事オプションをやらないとなれば、北朝鮮としては自分たちにとっての障害が全てなくなったも同然だ。

北朝鮮が核とミサイルを放棄することは考えられないが、かといってこの軍事オプションは実際の軍事攻撃ばかりを意味するのではなく、北朝鮮に圧力を加えて核開発を放棄させ、交渉のテーブルに着かせることが目的だ。外交交渉にそれなりの力を持たせるため軍事オプションも並行して準備しておくことはいわば常識だ。

また中国が主張する「韓半島無核化」とは、もし北朝鮮が核兵器を実戦配備したとしても、韓国は核兵器を持ってはならないということを意味する。文大統領が中国と何を話し合うにしても、このことだけは絶対に容認できない。

文大統領は15日に北京大学で行った講演で「中国と韓国は近代史における苦難を共に克服した同志」と述べた。しかしあの時日本による侵略に共に対抗した中国は今の中国とは違う。今の中国は6・25戦争(朝鮮戦争)で韓国軍兵士を数多く殺傷し、統一を妨害したあの中国だ。

いつまでも過去にしがみついてはいられないとなれば、確かに今の中国と共に新たな未来に向けて進んでいかねばならない。しかし人間であれ国家であれ決して忘れてはならないこともあるだろう。

また文大統領の訪中日程が南京虐殺80周年と重なったことも思慮に欠けていた。韓国が日本を敵対視しないのなら、相手を無用に刺激する必要は無い。中国の習近平・国家主席が南京で何も語らなかったのは日本との外交関係を意識していたからだ。

ところがその当事者でもない韓国の大統領がこの日に中国を訪問した。韓国にとって日本との外交は必要ないのだろうか。

大統領府は16日、中国の警備員が韓国人記者らを集団で暴行した問題について「中国側は最善を尽くしてこの問題の解決に努力することを約束した」と説明した。しかし中国共産党の宣伝機関は16日「今回の(暴行)事件は韓国人(行事を主催した側)と韓国人(暴行を受けた記者)との争いだった」とした上で「中国政府に間違いはなかったので絶対に謝罪はできない」と主張した。

中国には言論の自由はないが、それでも国賓に随行していた外国人記者がひどいリンチを受けたという事件は聞いたことがない。文大統領を国賓として丁重にもてなす姿勢が中国に本当にあれば、今回のような事件は絶対に起こるはずがなかった。

大統領府は17日「文大統領が中国でぞんざいに扱われたことなど絶対にない」という趣旨のコメントを行ったが、傷ついた国民のプライドがこの程度の言葉で癒やされることなど絶対にない。

文大統領の訪中によってTHAAD報復が撤回され、中国に進出した韓国企業への圧力が解消されたことは大きな成果だ。しかしこれらの成果を得るため失ったものはあまりにも多い。

何よりも米国と日本が「韓国は中国の側に立った」との疑念をさらに一層強くしたことだろう。かといって中国からの信頼を新たに勝ち取ったわけでもない。このままでは韓国をめぐる問題が韓国抜きで決められる惨事がまたも繰り返されるのではないか。

2017/12/18 10:50
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/12/18/2017121800935.html
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2017/12/18/2017121800935_2.html