韓国語では、化学元素H(hydrogen)のことを「suso」という。

これは漢字で書けば、「水素」で、日本人が作った和製の漢語なのだが、
私の受けた学校教育の場では、化学用語として、とにかく「スソ」というのだと教えられただけで、
それは漢字で「水素」と書くのだとは、教えられていない。

だから、「スソ」は日常世界とは何ら関係する事のない純学術用語以外のものではなくなる。

現在の韓国のように、漢字を排除して殆どハングルだけを使っていると、
言葉に漢語や日本語のイメージは全く浮かぶ事が無く、語源の手掛かりも失うため、
全てが固有語であるかのような錯覚が生じてしまう。

だから、「スソ」は日常世界とは何ら関係する事のない純学術用語以外のものではなくなる。


しかし、日本語では「水素(スイソ)」という単語を教われば、
誰の頭にも「みずのもと・水の素」という訓が浮かんでくる。

そのように純粋な化学用語でも、日常的な和語の世界に抵抗なくはいる事が出来る。
そのため日本では、韓国やラテン語から引用する欧米のように、
学術用語が専門的な教育を受けたものにしか解らない、
日常世界から遊離した言葉になる事も、それほど多くはないのである。


日本的精神の可能性、 呉善花より