「彼のありとあらゆる非道徳的な醜聞を覆い隠し、韓国文学界の代表として、韓国文学の象徴として擁立・偶像化してきた人々は今、何をしているのか。その目で見て、その耳で聞きながら知らないふりをする人々は皆、共犯であり、主犯でもある」

 韓国文壇の「巨匠」をはばかることなく叱りつけた若い詩人は正しかった。その恐ろしい「沈黙のカルテル」は文化・芸術界だけでなく民主と正義、人権を叫ぶ複数の市民団体にも及んでいた。同じ性犯罪であるのにもかかわらず、彼らは右派か左派かなどのイデオロギー論理を徹底的に当てはめている。

著名な詩人の高銀(コ・ウン)氏(84)、舞台演出家の呉泰錫(オ・テソク)氏(77)、同・李潤沢(イ・ユンテク)氏(65)、俳優チョ・ミンギ氏(52)など、文化・芸術界の性暴力に対する「Me Too運動」が広がっているのにもかかわらず、沈黙を守ったり、しぶしぶその場しのぎのコメントを出したりしている。

高銀氏は左派系文学団体「韓国作家会議」の常任顧問であり、李潤沢氏はいわゆる「文化界ブラックリスト第1号」として保守政権から弾圧を受けたとされる代表的な芸術家だ。チョ・ミンギ氏は「ろうそくデモ参加芸能人」のリストに名を連ね、同デモ支持者の歓声を浴びた俳優だ。

 韓国作家会議は、高銀氏の強制わいせつ・性的暴行問題が発覚してから2週間以上たった22日にようやく「3月10日に懲戒委員会を開く予定だ」とコメントを発表した。「懲戒」という言葉を使っているものの、当事者が同会議を脱退すればそれで終わりという有名無実の対策だ。同会議は非難の声が寄せられているのにもかかわらず、高銀氏を擁護してきたとされる。

文芸界の一部の人々はソーシャル・メディアなどを通じて、高銀氏に対する疑惑を詩で告発した女性詩人チェ・ヨンミ氏を個人攻撃し、「逆風」を巻き起こそうという動きも見られた。だが、「高銀氏自身が謝罪せよ」という世論が強まると、苦肉の策をひねり出したというわけだ。高銀氏と同年代の男性文芸関係者は「もし右派側の文芸関係者が強制わいせつなどをしていたら、とっくに消えていただろう」と苦言を呈した。

 右派系の人物の強制わいせつ問題が発覚すると、すぐさま糾弾声明を発表してきた左派系女性団体も俎上(そじょう)に載せられた。「韓国女性団体連合」は21日夜に遅ればせながら李潤沢氏の性的暴行を糾弾する声明を発表した。先月29日に女性検事であるソ・ジヒョン検事の告白で検察内部のセクハラ(性的嫌がらせ)問題が明らかになった時は、翌30日に声明を発表しており、対照的な対応と言える。同連合は高銀氏、呉泰錫氏、チョ・ミンギ氏については言及していない。

 同連合のこうした動きに、「女性団体は女性のための団体なのか、それとも(政治的)イデオロギーのための団体なのか」「(保守系野党・自由韓国党の)洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表の妄言や『豚の発情剤事件』が取りざたされた時は『即刻辞任しろ』と一斉攻撃したのに、高銀氏や李潤沢氏についてはなぜ沈黙しているのか」などの書き込みがインターネット上に相次いで寄せられている。

梨花女子大学名誉教授のある女性学者は「韓国の女性運動の慢性的な問題点は、女性という党派性よりもイデオロギーによる党派性の方が強いことだ。自分たちが支持する現政権が『Me Too運動』で脅かされることを望んでいないからだ」と指摘した。
(後略)

文化1部=金潤徳(キム・ユンドク)部長

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版<Me Too:正義・人権を振りかざす韓国左派系団体の二重規範>
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/02/23/2018022301236.html