韓国・ソウル市議会に提出され審議中の「日本製品不買」条例案が、波紋を広げている。条例案は韓国市民の反日感情をさらに煽り、日本製品不買運動へと広がりを見せているというのだ。韓国在住ジャーナリストの藤原修平氏がリポートする。

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 かつて在韓の日本企業で勤務したことのある50代半ばの会社役員男性Aさんは、全国各地に広がった「日本製品不買運動」についてこう不安の声を漏らした。

「韓国人の日本に対するネガティブなイメージが強い理由として、植民地支配の歴史があるのはわかる。それでも、最近の日本製品不買運動は異常だ。日本企業に賠償を命じた徴用工判決に便乗した反日行為とも言え、この有様では日本企業が韓国からどんどん離れていってしまうのではないか」

 不買運動の直接の契機は、今年1月24日にソウル市議の洪聖龍(ホン・ソンリョン)氏が市議会に発議した「日本製品不買条例」である。洪議員は2016年12月から、ソウル市の公共機関で日本製品がどれくらい使われているかの調査を促してきた。

 洪議員の提起を受けたソウル市が3年近くにわたり市内の関連施設での日本製品の購買状況を調査した結果、庁舎などでは6000件、小中学校では4000件の日本製品が購入されていたことが明らかになった。これを受け洪議員は、「慰安婦のハルモニ(お婆さん)のことや、徴用で命を落とした私たちの先祖のことを思うと、国民の税金で購入するものについては、最小限度の制限を定めてしかるべきだ」と述べた。

 だが、洪議員の思いとは裏腹に、「日本製品不買条例」はソウル市民に不評のようだ。

 ソウル市に住む30代半ばの女性会社員Bさんは、「日本に対する感情は複雑」と前置きをしつつも、洪議員の条例案を「一言で言って恥ずかしい政策」と切って捨てる。Bさん自身、1年に2回以上は日本を訪れてショッピングを満喫するほどの「日本製品好き」で、「特に日本製の服は長持ちするし、デザインもかわいい」ので好んで購入するという。

 Bさんの日本製品好きはファッションに留まらない。旅行で訪れる各地方の土産品についても、「クオリティーが高いだけでなく、パッケージもハイセンス」で、「韓国のものは比較にならない」と評価している。

「より高品質のものを選ぶのは、消費者として当然の心理です。ソウル市もそうした視線を持っていれば、今さら日本製品を排除しようなど思いもつかないはず。今回議論されている条例案は、時計の針を日本文化を禁止していた20年以上前に戻すようなもの」(Bさん)

「日本製品不買運動」の背景に、与党「共に民主党」の親北的な政策があるとする声もある。日本が大好きだと公言してはばからない40代前半の韓国人女性Cさんは、日本製品不買運動の発端となった洪議員が、文在寅大統領や朴元淳ソウル市長と同じ与党に所属していることに注目し、こう語った。

「彼の政策の狙いは、単に自治体や教育現場から日本製品を排除することにあるのではなく、それにより子どもたちや一般市民に日本排除の思想を植え付け、日韓関係を破錠させることによって、韓国社会をさらに北朝鮮の体制に引き寄せることにあります。その大枠を『共に民主党』は進めているんですよ。マスコミもそれに同調して、ニュースでは視聴者が日本に悪いイメージを持つように報道し、平日の夜には北朝鮮を礼賛するレギュラー番組を放送しています」

 政権与党の「反日・親北政策」は他にもあるという。Cさんが真っ先に挙げたのは、最近韓国で大きな議論になった「インターネットの遮断」だ。

「建前は有害なポルノサイトの遮断と言っていますけど、これは国家による情報統制・情報検閲の始まりで、まさに韓国のネット情報網を北朝鮮化するものだと感じます」(Cさん)

 政権与党が「韓国社会の北朝鮮化」を目論むとすれば、日韓の友好関係は目の上のたんこぶのようなものだ。洪議員が提起した「日本製品不買条例」もその流れの上にあると見ることができる。

 ソウル市議会が日本製品不買条例案の具体的な審議に入るのはこれからだが、注意すべきは審議の結果ではなく、韓国社会全体が日本製品排除へと傾く可能性をはらんでいるということだ。

 韓国紙「中央日報」(2月26日付)によると、韓国人の69.9%が日本に対する印象が“良くない”という。文在寅政権の親北政策と、それに追随する韓国メディアの反日報道が変わらなければ、韓国社会の日本嫌いは、若い世代を中心に今後ますます蔓延していくことだろう。韓国の日本製品不買運動は、今後さらに勢いづくと覚悟したほうがよさそうだ。

2019.03.03 16:00
https://www.news-postseven.com/archives/20190303_878689.html
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