憂鬱な話だ。私たちは粒子状物質地獄から簡単に抜け出すことはできない。図体が大きな開発途上国である中国は空を覆った汚い空気を短期間で浄化する状態にはない。1級発がん性物質のPM2.5(微小粒子状物質)とも長く共存していかなくてはならない局面だ。隣人を間違って選んだ罪も大きいが、無能な政府がもっと問題だ。

文在寅(ムン・ジェイン)政府は難題を解決するには無能だったと告白しなければならない。そうしてこそこれから強力な解決策が功を奏すまで苦痛を甘受してほしいと国民に訴えることができる。いい加減に対応し続ければ「健康で快適な環境で生活する国民の憲法的権利」を否定する違憲的政府になるだろう。
(中略:中国の発展と汚染)

この政府が最悪の粒子状物質災難に対処する姿勢は落第点だ。大統領が趙明来(チョ・ミョンレ)環境部長官の「緊急報告」を受けたのは、非常低減措置を伝えるSMSメッセージが5日連続で続いた3月5日午後6時だった。天にも届くような怨念の声が青瓦台(チョンワデ、大統領府)の塀を越えてようやく大統領が「非常な時期に非常な措置を取るのが政府の責務」と話した。長官たちは小学校へ、建設現場へいっせいに走って行って民心をなだめるふりをした。

文大統領は2年前、大統領候補時代に粒子状物質を30%低減し、大統領直属の特別機構を新設すると公約した。「子どもの代わりに粒子状物質をすべて吸い込みたい心情」とも言った。大統領になるや粒子状物質30%低減の約束はきれいさっぱり忘れ、粒子状物質特別対策委員会はこっそりと総理室に押し付けた。「国民は不安を越えて政府の無能と安逸に怒っている」という発言は今は大統領になった自分自身に向かうべきだ。

粒子状物質特別法が昨年8月14日に公布されて今年2月15日に施行されたが、ソウル市を除く残りの市・道はまだ条例を作っていない。排出車両運行の制限、操業短縮基準を定めた条例がなければ特別法は無用の長物だ。コントロールタワーである李洛淵(イ・ナギョン)首相は市道知事を呼んで督励したことがない。力のない環境部長官が市道の局長らとテレビ会議を行っただけだ。それでも首相は「政府や地方自治体がまともに対処しているのか、痛烈な反省が必要だ」と一喝した。幽体離脱話法の真髄だ。特別法に設置根拠がある粒子状物質情報センターはまだ発足すらしていない。

集団うつ病にかかっている状況の国民は息ができないと言って外出も控えている。消費が萎縮しながら自営業者が悲鳴をあげている。このため中国外交部報道官が韓国政府の粒子状物質中国責任論を「科学的な証拠はあるのか」と言って反論したことが「私たちのほうはかなり改善した。お前こそちゃんとしろ」という詰問に聞こえる。

韓国が単独で巨大中国を相手にするのは不可能だ。英国・西ドイツ・米国も最初は被害国のスウェーデン・ノルウェー・カナダの改善要求を無視した。それなら私たちも欧州国家のように自発的多者協議体を作って相互監視と協力の中で解決しなければならない。中国・モンゴル・北朝鮮・日本・ロシアとの国際協力が必須だ。

国際社会を動かして中国を説得するにはまず国内で強力な措置を取らなければならない。老朽石炭発電所を閉鎖して粒子状物質ゼロ(zero)の原発発電所稼働を増やすべきだ。政府は世論が背を向けた脱原発政策を全面再検討するべきだ。1000万台に迫る「走る排出源」軽油車を減らすべきだ。果敢に油類税を上げて老朽車両の運行を制限するべきだ。2002年ワールドカップ時に確実な効果をあげた民間車両2部制も実施するべきだ。

中国は扱い易い相手ではない。私たちがまず国内排出源を減らしてこそ言うべきことを言うことができる。最悪の生態環境危機が迫った今が政治的負担が最も少ない良い機会だ。アジア人の生存のための呼吸共同体はタダで得られるものではない。

李夏慶(イ・ハギョン)/主筆

ソース:中央日報/中央日報日本語版<【コラム】粒子状物質地獄、無能な韓国政府のほうが問題だ>
https://japanese.joins.com/article/155/251155.html