文在寅(ムン・ジェイン)政権の経済認識は今や「意地を張る」所まで行き着いた。経済が台無しになっているのは明らかなのに、「大成功した」「成果が明らかになった」と主張しているのだから、開いた口がふさがらない。経済危機を知らせる非常ベルの音はけたたましく鳴っている。庶民経済が破たんし、雇用は悲惨な状態で、成長動力に急ブレーキがかかっている。あらゆる指標、あらゆる現場の声が緊急事態であることを告げている。それにもかかわらず、政府だけは「違う」という。

国民の59%が日々の生活がいっそう苦しくなったと言い、経済学者の84%が「危機」だと言っているのに、政府だけが意地を張っているのだ。水で薄めたり、よく見せようと多少盛ったりする程度ではなく、全面否定だ。いくら「ネロナムブル」(自分のことならばロマンス、他人のことならば不倫=同じ失敗をしても、自分に甘く他人に厳しいという意味)政権でも、ここまでうそぶくとは思わなかった。

 なぜこれほどまでに無謀なのかは想像に難くない。それは政権が経済を経済として扱っていないからだ。経済は徹底した実用の領域だ。最も現実的で冷静になる必要があり、客観的な事実だけを追求しなければならない国政分野だ。そうした点で、文在寅(ムン・ジェイン)政権は「経済」をやっていない。経済ではなく政治を、実用追求ではなく価値闘争をしている。経済を政治と理念に仕える下位概念として見ている。政権としての目標を達成するための統治手段として扱っているのだ。

 この政権の最終目標は何か。文大統領は「主流勢力交代」だと言った。経済の主流交代のために持ち出してきたのが所得主導成長論と一連の反企業・親労働団体政策だ。左派偏向政策により全国民主労働組合総連盟(民労総)中心の労働権力、参加連帯流の左派分配論が主流の経済に変えようとしている。

 この政権にとって所得主導論は一介の政策ではない。それは政権のアイデンティティーを構成する中核的価値であり、理念である。数多くの批判が寄せられながら身じろぎ一つせずに押し通すのも、そういう理由があるからだ。政策は間違っていたら修正できる。しかし、所得主導論は理念なので修正の対象にはならない。だから、あらゆる副作用を引き起こして矛盾が生じてもミスを認めない。一種の現実否定心理と言える。

 与党は政権持続への意欲を燃やしている。「20年執権論」が取りざたされ、「左派永久執権」構想まで漏れ伝わっている。与党代表は「総選挙で260議席獲得」をうんぬんしている。これが執権勢力の本音だろう。政権の国政運営はすべて選挙日程に合わせて行われている。経済も例外ではない。選挙用の政策を打ち出し、票を得るために財布のひもを緩めている。選挙での勝利が至上命令なのだから、「経済失敗」は受け入れられない。総選挙まであと1年足らずという時に、政策の過ちを認めることはできない。何とかして左派偏向政策を固守しなければ、中核支持層を引きつけておけないと判断したのだ。最も実用的でなければならない経済でまで右派陣営か左派陣営かという理念闘争を繰り広げている。理念の塹壕(ざんごう)を掘ってその中に入り、「陣地戦」をやろうというのだ。

 政権には頼りにしている切り札がある。それは税金だ。
(中略:税金で経済の失政を覆い隠す「その場しのぎの策」がいつまでも通用するわけがない)

 国民も経済がうまく行っていないことに気づき始めた。ある世論調査でも、経済に落第点を付ける回答が半数を超えている。本紙の調査では55%が「所得主導論に反対する」と、46%が「経済失敗の責任は大統領・大統領府にある」と回答した。国民の目を一瞬ごまかすことはできても、5年間ずっと欺くことはできない。経済が駄目になっているのに選挙に勝ったという話は古今東西聞いたことがない。経済を台無しにしておきながら長期政権云々するとは、ごう慢だからなのか、それとも妄想なのか。

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▲朴正薫(パク・ジョンフン)論説委員

ソース:朝鮮日報/朝鮮日報日本語版<【コラム】経済を台無しにしておきながら長期政権を目論む人たち>
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