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▲金辰明(キム・ジンミョン)の長編小説『直指』

「直指を通じて韓国の文化的アイデンティティを探したかった」。

最近新しい長編小説『直指』(全2巻)を出した作家の金辰明(キム・ジンミョン)氏は執筆の意図をこのように明らかにした。23日、ソウル西小門(ソソムン)の中央日報で会った金辰明氏は「直指心体要節(以下、直指)をはじめ、ハングル、八万大蔵経、半導体のようなものは知識と情報を記録して伝播する装置だが、我々が世界的に先を進んでいる」とし「こうした韓国の文化的アイデンティティを探すために小説を書いた」と説明した。

小説は、世界で最も古い金属活字本として公認された「直指」とグーテンベルクの金属活字をめぐる中世のミステリーを追跡する内容だ。1377年に印刷された「直指」は高麗末の僧侶・白雲が禅仏教で伝えられるいくつかの話を集めて制作した書籍で、1455年に印刷された西洋最初の金属活字印刷本であるグーテンベルクの四十二行聖書より78年も早い。小説はグーテンベルクの金属活字が欧州の発明品でなく直指の影響を受けて作られたという事実を明らかにする過程を興味深く扱っている。

主人公は中央日報社会部記者のキム・ギヨンだ。彼はベテラン刑事にも衝撃に与えた奇怪な殺人現場を取材する。殺害されたのは高麗大でラテン語を教え、直指を研究していたチョン・ヒョンウ教授。容疑者を追跡する過程でキム・ギヨンは直指の真実に近づき、事件を解明するのに最も重要な役割をする。

金氏は過去に『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』などの作品でも記者を重要人物として登場させた。その理由について金氏は「私は主に政治、経済、外交、安保など社会全般にわたる作品を書くが、そのような領域に自然に介入して問題を探ることができる人は記者や教授しかいないため」と説明した。続いて「私が初めて『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』を書いた時はみんな私を記者だと思っていた。ところが実際に元記者の金薫(キム・フン)氏のような作家は(記者が登場する作品でない)正統文学を書いた」と言って笑った。

小説には別の女主人公も登場する。15世紀の直指が欧州に伝播する過程で核心的な役割をする「ウンス」という人物だ。この女性は金属活字という文化伝播の媒介体であり伝達者。ウンスが欧州に渡ってグーテンベルクの金属活字に影響を及ぼすことになった過程を描写する部分で作家の想像力が発揮される。

2人の女性を主要人物に設定した理由について、金氏は「意識的な設定だった」と明らかにした。金氏は「その間、男性中心の小説ばかり書いてきたが、今回は意識的に女主人公を出した」とし「最近は女性の社会的活動が増大し、男性に劣らず社会・歴史的な役割を遂行する現象を小説に入れたかった」と説明した。

インタビュー中、金氏は今回の小説について「可能性がある『合理的虚構』を土台にした」と語った。完全に根拠がない想像の話ではなく、科学的分析や歴史的記録に基づいて知られていなかった部分を想像力で満たしたという説明だ。金氏は「実際に過去にタイムズなどでグーテンベルクの金属活字と直指の製造法が似ているという科学的な分析に関する記事が発表されたことがある。しかし欧州では背を向けている現実」とし「本を書きながら直指の偉大さについて驚くことが非常に多かったし、直指があまりにも世の中に埋もれていたと感じた」と伝えた。
(後略)

ソース:中央日報/中央日報日本語版<小説『直指』の金辰明氏「韓国の文化的アイデンティティを探したかった」>
https://japanese.joins.com/article/973/255973.html