中国は多額の負債を抱える複合企業の海航集団(HNAグループ)を政府の管理下に置き、グループの中核を成す航空会社や関連事業を売却する。新型コロナウイルス流行による経済的影響を食い止めるための政府介入では、過去最大規模となる。これを機に、新型ウイルスをめぐる中国政府の取り組みは新たな段階に入る。

債務返済が不可能

 関係者によると、HNAが本社を置く海南省政府は、ウイルス流行の影響で同社が債務を返済できなくなったことを受け、政府管理下に置く。グループ傘下の中国航空4位海南航空は、ライバル企業に買収される可能性があるという。

 関係者によると、政府が多額の資金を注入し航空業界を救済する選択肢も検討されている。厳しい状況に陥った同業界に対し、直接的な資金注入や合併などの措置を検討している。規模の小さめの同業他社を大手国有航空会社の一部が吸収する案が有力という。

 新しく浮上した計画の下、政府はHNAの航空資産の大部分を国内の3大航空会社の中国国際航空、中国南方航空、中国東方航空に売却する意向だ。また、HNA傘下の上海の貨物航空会社、金鵬航空も江蘇省政府に売却される公算が大きいという。航空各社との協議は続いているという。

 HNAは2016〜17年に借金を元手に買収を繰り返した。400億ドル(約4兆4508億円)に上る海外資産の「爆買い」でヒルトン・ワールドワイド・ホールディングスやドイツ銀行など象徴的な企業の主要株主になり、大枚をはたいてマンハッタンや香港などの不動産を取得。その結果、債務は一時、約6000億元(約9兆5280億円)に上り、数年来、多額の債務や借り入れコストの上昇に苦しめられてきた。

 19年6月末時点で、総債務は5256億元に減ったものの、急ピッチで現金が減少。15年以降の半期ベースの数字としては最も少ない504億元に落ち込んだ。このため資産圧縮を進め、この1年で本業の航空事業への回帰を進めていた。

 HNAの陳峰会長は19年末に新年に向けたメッセージとして「20年は長年当社が戦ってきた流動性問題との闘いに勝利する決定的な年になる」と予想していた。

 関係者によれば、HNAは財務状況を安定させようと、傘下の航空機リース会社アボロン・ホールディングスやスイスの航空機整備会社SRテクニクス、コンテナ船リース会社シーコなどの資産売却を目指してきた。

 だが新型ウイルスの感染拡大は中国発着線の予想外の減便をもたらし、航空事業と観光業に力を入れる取り組みが裏目に出た。

ブルームバーグ
https://www.sankeibiz.jp/smp/macro/news/200221/mcb2002211308019-s1.htm

2020/2/21 13:08

https://i.imgur.com/xFvWJE6.jpg
海南省にある海南航空の本社。親会社、海航集団の経営破綻により他の航空会社に売却される見通しだ