「検査をするから感染者数が増える」


日々、増える感染者の数にイタリア人のあいだでは「検査をするから感染者が増える」と批判が募っていった。日本とは正反対である。 

イタリアでは3月1日まで、わずか1週間のあいだに2万人を検査したという。しかし、陽性と出た感染者数のうち約80%が入院の必要のない軽症、
あるいは無症状の感染者であることから、検査をしても大半は自宅待機となる。であれば、症状がある人のみ検査をするべきではないか、ということだ。

このため、イタリアは感染の疑いのある場合、無症状の市民にも検査をしてきたが、
今後は症状のある人々に限り、検査を制限するというから感染者の上昇は緩やかになるかもしれない。

一方、韓国でも宗教団体の集会で集団感染が認められて以来、感染者の数は急激に増加し、3月3日の時点で4812人、28人死亡と発表されている。
韓国は、1日7500人分の検査の検査が可能というから、日本に比べると驚異的な数で検査が進めれられている結果だろう。

これまでに日本とアメリカでの検査数は人口比に対してもかなり少ないことが報道されている。
2月下旬で検査の総計が450件あまりというアメリカは、検査数があまりにも少ない。

日本では、PCR検査自体の感度を疑う意見や検査をしても正確な結果とならない可能性などについても議論が続けられている。

しかし、検査を増やさないかぎり、感染者がどこにいるかもわからない。より多くの感染者が判明すれば、
感染者が自覚なしで他者に感染させることを少しでも抑制できるのではないだろうか。

ある国は検査の数が少ないと批判され、ある国は検査をしすぎるために批判が強まる。PCRテスト数は国によってあまりにも格差が大きい。

ところで、ミラノ大学の感染学教授、マッシモ・ガリ氏がイタリア人の感染者と、感染発祥地の中国の感染者、ローマで感染した中国人、
それぞれの遺伝子を調べたかぎり、イタリアでの感染は1月半ばから始まっていたのではないかと推定している(ガーデイアン紙、電子版、2月28日付)。

新型コロナウイルスによる新型肺炎発生を中国が認めた1月末までに、発生源と想定される武漢から500万人が移動していたという。
そのうちどのくらいが感染者であったかは不明だが、自分が感染していることを知らずに感染者たちは飛行機を利用し、
普通の生活を続けることで、新型コロナウイルス感染は世界へ広がった。

感染者たちはとっくに世界各地に散らばっている。そして今、世界は感染経路を追うことが難しい2次感染、3次感染の時期、
つまり「市中感染」(コミュニティー感染)という段階に突入している。

香港大学の疫学専門家、ガブリエル・レウング医師は、医学雑誌「ランセット」(2020年1月31日付)で、
このまま感染が抑制できない場合、世界人口の60%が感染する恐れがあるとしている。

検査を行わずともウイルスはすでに各国に入り込み、確実に広がりつつあるのは明らかだろう。
今後はあちこちの都市で多数の感染者が認められるようになるとしても大都市をシャットダウンすることは、現実的ではない。

新型コロナウイルスのアタック率(感染力)は、1人あたり2.5人。感染力という点では、平均1.3人の季節性インフルエンザよりはるかに速い速度で広まっている。
現在、世界人口は77億人なのでたとえ50%の感染率、致死率2%としても、犠牲者が相当数になることは否定できない。

WHOが2月29日に発表した内容によれば、感染者の19才以下が重症化することはめったにないというが、
80才以上の感染者の致死率は21.9%と非常に高く、感染者の5人に1人が亡くなることになる。

持病持ちのリスクグループや高齢者の症状が悪化する前に感染者をみつけるためには検査を増やすしかない。
しかし、一方で医療機関としては感染者が健常者にまじって病院の待合室に大挙するということは最悪のシナリオとなるだろう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200304-00070794-gendaibiz-int&;p=2