韓国を、いや、世界を揺るがす性犯罪が露わになった。


3月21日、ネットで「博士」のアカウント名を持つ男性が検挙された。男性は会員限定のチャットグループ、
男性は会員限定のチャットグループ、通称「n番部屋」を運営し、女性のわいせつな画像をアップロードして利益を得ていた。

それだけなら日本で検挙される事例とさほど変わらないかもしれない。だが、恐ろしいのは規模と内容だった。
このチャットグループには性犯罪の動画がアップロードされていた。

また、閲覧が有料であるにもかかわらず、累計26万人の会員が閲覧していたのだ。

有料会員がすべて男性だったと仮定すれば、全韓国人男性の100人に1人が性犯罪の画像・動画にお金を払った試算になる。

「博士」を始めとするメンバーが運営するチャットルームはいくつかに分かれており、
それぞれ「1番目の部屋」「2番目の部屋」と番号がつけられていた。そのため事件名が「n番部屋」となっている。

チャットルームは部屋ごとに課金額が異なり、最大で13万円相当を課金する仕組みとなっていた。
より過激なわいせつ動画が見たければ、高額課金を支払う必要があったとされる。

被害者女性は博士に「アルバイト」として募集され、応募時点で個人情報を提供させていた。
そして応募に必要だからとセクシーな画像を渡させてから「家族に見せるぞ」と脅して、自慰行為などさらに過激な動画を撮影させていたという。

悪質なケースではレイプシーンの撮影や、「奴隷」と肌に刻む拷問も行われていた。

さらに、被害者は「もっとひどい目に遭いたくなければ他の女をつれてこい」と脅迫し、さらなる被害者を生んだ。
最終的に被害女性は74人、うち未成年14名に上る大事件となった。

この事件は、韓国で新型コロナウイルスを吹き飛ばすほどのニュースになっている。即座に起きたのが会員リストの公開を求める運動だ。
3月24日現在、韓国のニュースサイトNATEでは、記事ランキングのアクセスランキング15位までのうち、6つを「n番部屋」事件が占めている状況だ。

芸能人も次々に意見を表明。EXOのベクヒョンとチャニョル、俳優のアン・ボヒョン、
CNBLUEのチョン・ヨンファを始めとするトップ芸能人たちが「会員リスト公開」へ署名したと発表している。

なぜこのようなムーブメントにつながったのか。理由は検挙の難しさにある。

チャットルームの運営者を含めた13人が逮捕されたが、閲覧していただけの26万人全員を逮捕するのは物理的にも、法的にも難しい。
一般会員に関しては単なるアダルトサイトを閲覧していたケースとの区別が難しく、大きな波紋を呼んでいる。

なにしろ、韓国男性の100人に1人が、加害者になっているからだ。

私がヒアリングした韓国人女性も、n番部屋事件は「10年来の不満が爆発した事件だ」と語る。

「韓国ではフェミニストと名乗ることがカッコいい、女性差別をなくそう、という動きが10年以上ありました。
ですが、男性がデートではエスコートすべき、稼ぐべきという価値観は残っています。

それに、兵役は男性だけ。何らかの理由で兵役に行けない男性はボロクソに叩かれます。そして、性暴力がひどかったのは40代以上の世代。
いまの韓国人男性は男女平等を教えられています。それなのに"女ばかりが権利を得て許せない"と感じる人がいるのも理解できます」

「n番部屋事件」が単なる性欲の発露ではなく、ミソジニー(家父長制に従わない女性を嫌う立場)からの犯罪だとする見方は、韓国人の間にも多いという。
韓国人女性は年配から差別されると同時に、同世代からは優遇をねたまれるパラドックスを背負っているのだ。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71322